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討伐クエストは不安で一杯?

 突然、自分たちの世界で現れたセタを目の前にしたマジーナたちは、予想通りの反応を示した。


「ちょっ、セタさん!? なんでここに…?」

「このお城に住んでたの、セタさん?」

「そういうことじゃないと思いますけど…。だとしたら、一体どういうことですか?」

「以前から不思議な御仁だと思ってはいたが…国王陛下とはどういう関係なのだ?」


 面白いもので、俺たちの反応とほとんど一緒だ。やはり住む世界が違えど、思うところは同じということか。


「皆様の仰りたいことも存じております。説明をさせていただきたいのですが…。ツルギ様ならば、大体の見当はつきますね?」


 セタの視線がツルギに向けられ、他の四人の視線も注がれる。


「ええまぁ、向こうの世界でも同じようなことを見てきましたからね。あなたは少し前からこの城に仕えていて、それは僕らを近くで見るため。それに今回の依頼は、王様だけではなくあなたの依頼でもある。…ということですよね?」


「その通り。よく覚えておいででいらっしゃる」


 ツルギの回答に、セタは満足そうに微笑む。


「それ、本当に? てことは、セタさん、あっちの世界にもいたっていうか、行けるの?」

「はい。私の特権といえるでしょうか。特別な力を使ってのことです。つまり、どこかにあちらの世界に通ずる扉があるわけでは御座いませんので、誤解なきよう」


 それを聞いたマジーナたちはガッカリしたようにうなだれた。もしかしたらバレッタやハウ、エールたちにいつでも会えるのかも、と期待していたのだろう。


「…では陛下の依頼が貴殿の依頼というのは? 我々に何をさせようと…陛下は何をお望みなのだ?」


 カサンドラだけは冷静に、質問を投げかけた。


「それが今回の本題ですね。依頼は、この一帯を苦しめている大魔王の討伐、で御座います」


 セタはさらりと言い切った。今度はツルギも含め、驚愕する一同の前で。


「だ、大魔王の…」

「討伐ぅ!?」


 ツルギとマジーナは声を上げて驚き、クロマとワカバは顔を見合わせた。カサンドラは大きなリアクションはしなかったが、腕組みをして大きく息を吐いた。


「左様です。国王陛下も日頃の魔物たちの襲撃には手を焼き、御心を痛めていらっしゃいます。先日には、マジーナ様のすぐ近くにも潜んでいたことも発覚したでしょう?」


 マジーナは神妙な面持ちで頷いた。


「そこで、皆様にお願いすることにいたしました。人々を苦しめる悪の根源は、早々に滅する他にありません。陛下ともご相談を重ね、あなた方のパーティランクならば大魔王討伐も可能であるとの決断に至りました。ですので、何とぞクエストの受諾を…」


 ツルギたちは黙ったまま、しばらく考えた。

 やがて、その沈黙は破られる。


「わかりました。そのクエスト、引き受けましょう」


 リーダーであるツルギだった。マジーナたちは目を見開いてツルギを凝視し、カサンドラすらも驚きを隠しきれていなかった。


「感謝いたします、ツルギ様。きっと、ご快諾いただけると存じておりました。では陛下にも報告を…」


 セタは軽い足取りで国王の元へと向かう。


「ちょっとちょっと、そんなに簡単に受けちゃって大丈夫なのツルギ?」

「そ、そうです。私たち、色々と戦いを切り抜けてきましたけど、相手が大魔王だなんて…」


 案の定、非難の集中砲火を浴びるツルギ。奴の考えあってのことだろうが、正直俺も大丈夫かと思っていた。


「いつかは誰かがしなくちゃいけないことだよ。それに、国王陛下が期待してくださっているのなら、簡単に断るのもいけないし…」


 その時、国王が咳払いをしたので全員会話を止めた。


「セタから此度の依頼内容を聞いたようじゃな。あの謎多き大魔王が相手となっては、不安になるのも無理はない。しかし、そなたらの実力も考慮した上での決断じゃ。だが決して無理のないように。皆の無事を願っておるぞ」



 国王から馬車と、せめてもの力になれればという計らいで腕利きの兵士を数十人借り、ツルギたちは大魔王の城を目指していた。


「ツルギ、大丈夫? 顔色悪いよ…」


 先頭の馬車の中で、徐々に近づく魔王城を見つめるツルギは、ひと目でわかる青い顔をしていた。


「だ、大丈夫さ。これから強敵と戦うのに緊張もしてるけど、こんな大勢の人たちの前に立つのは初めてで、慣れてないだけだから…」

「全然大丈夫じゃないじゃん…。はあぁ、こっちもますます心配になってきた」


 マジーナは大きくため息をついた。


 魔王城に続く、険しい坂道に差し掛かった時、馬車は突如停止した。


「これより先は足場が不安定であり、馬車での侵入は危険と思われます。降りて行軍いたしましょう」


 手綱を握る兵士が後ろを振り返り、伝えた。全員が言われるがままに馬車を降り、先へと進む。


 城までの道中、俺はふと気になったことをツルギに尋ねてみることにした。


「ツルギ、話してもいいか?」

「…どうぞ」


 積もっていく不安が、短い言葉に凝縮されているようだった。聞いてしまった後悔は多少なりともあったが、俺は手短に質問を済ますことで許してもらおうと思った。


「こんな時にわりいな。気になってたんだ。この世界の大魔王ってのは、今まであまり人々の話に出てこなかったように思えたが、どんな奴なのかと思ってな」


 俺の問いかけに、ツルギは少し考えてから答えた。


「それが、僕たちにもわかってないんです。僕が物心ついた時にはあの城もあって、魔物もいました。でも大魔王は魔物たちの長だということ以外、名前も含めて詳細はほとんど知りません。多分、マジーナやクロマさんたちも同じですよ」


「そうなのか。…ラスボスってのは大体そんなモンだと思うが、名前や姿まで謎ってのは妙だな」


 俺は考え込み、ツルギとの会話もそこで途切れた。


 その時、何かの大群が一団の前に立ち塞がる。

 それは、こちらと同じかそれ以上はあろうかという、魔物たちだった。

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