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合流編Ⅶ・中

 狭魔獣の待ち構える広間に到着した一行。そこには鋭く平たい牙を生やした巨体が唸り声を上げ、身体を起こしている。


「シックル・ブレパスという魔獣です。頑丈な皮膚と猛烈な突進力、そして切れ味鋭い牙が厄介ですのでお気をつけください。それでは、ご武運を…」


 セタはそれだけ告げ、魔獣の正面から身を引いた。あたかも戦闘は皆様にお任せします、と言うように。


「よっし、とっとと決着をつけりゃいい話だな。全力でいくぜ」


 マズルは文句もつけず、銃を構える。続けてツルギも剣を構え、各々が戦闘態勢をとった。




 魔獣は一行へ向けて突進し、間一髪全員がそれを避けた。だが、刃物のような牙が近くの石柱を掠めると、見事な断面を作って柱は切り倒された。


「ひええ、あの牙…危険すぎますよ…」


 ハウは楽器を抱き寄せ、後ずさりした。魔獣は向きを変え、標的を絞ろうとしていた。そして、今度はエール目がけて再び駆ける。


「先生危ない、"ギガ・ホール"っ!!」


 クロマはエールの前に踊り出ると、力強く詠唱した。轟音を伴うほどの大地の爆発で、魔獣は動きを止められた。


「ふう、助かったよクロマ君。ありがとう」

「こ、これくらい当然のことです。でも、この一撃で倒れもしないだなんて…。かなりの重さと頑丈さがあるようです、あの魔獣」


 その言葉通り、魔獣は態勢を立て直し、鼻息荒く地を蹴っていた。




「苦戦してるみたいね。アタシたちも加勢しよう」

「無論だ。騎士たるもの、他人に戦いを委ねる真似はしない。自らの手で、勝利を掴む気概を持つべし」

「アタシは騎士じゃないんだけどね…。でも確かに、全部人任せにするのはいい気はしない。何か役に立たなきゃね!」


 バレッタとカサンドラは戦地に赴く。

 二人が去った後に残されたのは、ジェシカとマジーナ。先の一件があっただけに、重い空気が漂う。


「い、行く…?」

「うん。行こ」


 気まずさを拭えないマジーナとは裏腹に、ジェシカはいつもの調子で答えた。




 激しさを増す魔獣との戦いは、バレッタの補助でマズルが弾丸を撃ち込み、クロマとマジーナが魔法を放つ遠距離戦に持ち込まれていた。


 しかし、魔獣は怯むことなく前進する。銃弾も魔法も、鋭い牙で容易く真っ二つにされていた。


「…! マジかよ。こんなのどうやって倒せば…」

「あの牙をどうにかしないといけないだろうね。逆にそうすれば、一気にこちらが優勢になると思う」

「簡単に言ってくれるな。それができれば…」


 突進を躱し、エールとマズルの会話は途切れた。


 その様子を眺めていたジェシカは一人呟く。


「ふーん、厄介だね。さて、あちしは何すりゃいいか…」

「冷静に状況を見ているのか? 戦いにおいては重要なことだが、即座に行動に移すことも騎士として…」


 独り言を聞いていたのか、その背後からカサンドラは声をかける。当然ジェシカはいい顔をしなかった。


「あのさ…。あちしも騎士じゃねーんスけど。バレさんにも同じこと言われてたよね?」

「すまないな。騎士として生きてきたためか、そのような言い方しかできぬのやもしれん。気に障ったのなら、謝ろう」

「…あっそ。別にいいけど。だけどさ、そっちの都合を押しつけてこないでもらいた…」


 その時、唐突にカサンドラの体当たりがジェシカの身体を吹き飛ばす。


「ちょ…何すんのいきなり…」


 ジェシカは言葉を切った。カサンドラの鎧の一部に、大きな傷がつけられていた。その後ろには、勢いよく突っ込んだと思われる魔獣が、壁から牙を抜こうともがいているのが見える。


「ちょっと、大丈夫なの…?」

「これしきの傷なら大したことはない…はずだが、私としたことが受け流しきれなかったか。これでは示しがつかんな…」


 鎧の奥から血が滴っていた。ただ避けたり受け流すだけならまだしも、他人を守ることに気が向いていたのであれば、無傷ではいられなかったのだろう。


 その時、ジェシカの様子が豹変する。髪が逆立ち始め、胸を押さえてうずくまった。


「ぐっ、なに………これは…あいつが…!?」

「ジェシカ…。もしや、あれか?」


 ジェシカの第二人格が顕現した。

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