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明朗な少女は何者?

レベッカ:ジェシカの家にいた少女。彼女の同級生。

 背後に現れた少女は小柄で、何かの袋を手に提げている。アニキたちを一瞥すると、先に口を開いた。


「…うちに何か用ですか? どちらさん?」


 明らかに怪しんでいる。見ず知らずの人間が三人も自宅前にいれば、そう思うのは仕方ない。


 でも、少女はうちと確かに言った。ここはジェシカの家じゃなかったのか。彼女は家族の一人ということなのだろうか?


「ああいや、悪さしようってんじゃないんだ。その、ちょっと用があってな」

「そうですそうです。ボクたち、怪しい者じゃありませんから」


 そうは言っても、二人は銃と楽器を背負っている。武器など持たない一般の住人からしたら、ものすごく危険に思われるだろう。


「…十分怪しいです。ってか、武器持ってんじゃん。ヤバっ。早く警察に連絡…」

「ま、待ってくれ。本当に怪しい者じゃな…」

「まったく落ち着きなよ二人とも。ゴメンね、アタシたちソルブ・トリガーっていうなんでも屋の者なんだ。ジェシカって娘の家に行きたいんだけど、知ってるかな?」


 バレッタが冷静に尋ねると、少女はケータイを操作する手を止めた。そして安堵の表情を浮かべ、一気に態度を軟化させた。


「なーんだ。ジェシピの知り合いの人か。早く言ってくださいよぉ。あ、もしかしてあの子のバイト先の方たち?」

「そう。で、彼女は?」

「家の中です。詳しい話は後でしますから、どうぞ入って入って」


 背中を押される形で、アニキたちは屋内へと入っていった。




「まだ何も話してなかったですね。あたし、レベッカと言います。ジェシピと、ハウちゃんも同じ学校だったね。同級生やらせてもらってます。以後お見知りおきを」


 案内されて階段を上がる最中、少女は振り返って自己紹介をした。ノリが軽く、明るい性格のようだが、きちんと敬語は使えている。


「ご丁寧にありがとう。ところで、あなたはジェシカとどういう関係なのかな? 姉妹…じゃないよね。同級生だけど双子でもないようだし」

「それは後で説明します。とりあえず、あの子に挨拶してください」


 ひとつの部屋の前に到着した。ドアのプレートには、『ジェシカの部屋』とある。本当にここで間違いないようだ。


「ジェシピ、お客さんだよ。あなたのバイト先の人たちだって」

「…いいよ。入って…」


 少女がドアの外から声をかけると、か細い声が返ってきた。ジェシカのもので間違いなさそうだが、それはいつもよりも弱々しかった。声を確認した後、少女はドアを開けた。


 部屋の中を覗くと、ベッドに横たわるジェシカがいた。顔は紅潮し、目はとろんとしている。

 普段から元気がよく活発ということではなかったが、それでも目に見えて弱っていた。


「たっだいまジェシピ。はい、頼まれてたの、買ってきたよ」


 部屋に入った少女は、持っていた袋をジェシカの側に置いた。中にはパンや飲み物が見えた。


「あんがと。迷惑かけたね」

「気にしないでよ。お互い様じゃん」

「うん。マズさんたちも、お見舞い来てくれたの」


 ジェシカはさも当たり前のようにお見舞い、と言ったが、少なくともアニキたち三人と僕は今初めてこの状況を知ったわけで、お見舞いで来たつもりがあるはずなかった。


「ああ、まぁ結果的にそういうことにはなるが…お前が風邪ひいてるなんて知らなかったぞ?」

「そうさ。何も連絡よこさないから、心配になったから来たんだよ?」

「…あー、しまった。学校にはしたけど、マズさんとこに連絡忘れてた。マジサーセン…ごほごほっ」


 ジェシカは咳き込み、背を向けた。どうやら本格的な風邪らしい。


 その時ハウは、周りを眺めていた。ジェシカの部屋の中はたくさんの人形が棚に置かれ、本が積み重なっていた。壁には、絵の描かれた紙もたくさん貼られている。


「おおー、これはなかなかの…。すごい、限定品だ…」

「…ハウりん、言いたかないけど、ここあちしの部屋なんだけどー?」

「あ、ごめんなさい。つい興味がそそられて…」


 ハウは定位置に戻り、恥ずかしそうに頭を掻いた。


「ジェシピ、寂しがってたじゃん。大目に見てやんなよ」

「それとこれとは話が別っしょ。つーか()()()、みんなの前でその呼び名止めてよ。ジェシピってほとんど本名だし…」


 きっと、僕も含めてその場の全員がそう思っただろう。


 お前が言うか、と。


「はいはい。それじゃ、皆さんに風邪移しちゃいけないし、失礼するね」

「お大事にな。無理すんなよ」

「こっちは心配いらないから、ゆっくりしなよ」

「お邪魔しました。ちゃんと身体、治してくださいね」


「はいよ。多分一日休めば大丈夫だから、心配しないで、マズさんたち………っくしゅん!!」


 ドアを閉めた直後、大きなくしゃみが聞こえてきた。




 部屋を離れ、客室へと案内されたアニキたちは、帰る前に話がしたいというレベッカにお茶を出してもらっていた。


「悪いね。もてなしてもらっちゃって」

「いいえ。今両親がいないもので、大したものは出せませんが、どうぞ遠慮なく」

「ありがとう。ところで、さっきの質問なんだけど」


 バレッタの問いに、レベッカは苦笑いを浮かべた。


「あー気になりますよね、あたしとジェシピの関係。色々と深い事情がありまして」

「いや、無理に話してくれなくてもいいよ。今思えば不躾な質問だったね」

「…いえ、あなたたちは悪い人じゃなさそうだし、話しても大丈夫だと思ってました。ちょっと待ってください」


 レベッカはドアを閉め、部屋を密室にした。そして、語り始めた。

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