合流編Ⅴ・前
謎空間に招集されたマズルたちとツルギたち。各々が再会を喜ぶ中、ハウだけは戸惑いを見せていた。
「ええっと…ワカバ君で、間違いないんだよね?」
「そうだけど、いきなりどうしたの、ハウさん?」
兄との邂逅を経て、精神的に急成長を遂げたワカバは、ハウにとっても驚くほどの変化ぶりだった。
「いきなりはこっちの台詞だよ。この前会ったときとは別人みたいだもん。ちょっと背も伸びたような…。
そういえばマズルさん、今度会ったときは驚くって言ってたな。そういうことだったんだ…」
「ぼく、どこか変かな?」
「そんなことないよ。ただちょっとびっくりしただけ。今の君も…」
「君も、なに?」
「な、なんでもない。さぁ、魔獣を退治しなきゃ。行こう」
ハウは皆の待つ方向へ歩き、ワカバもそれを追った。
「ワカバ君、本当に見違えたね。これも彼の一族の特徴なのかな?」
「そのようです。ドラシル族は成長がまちまちで、彼は少し奥手だったみたいで。でもお兄さんと出会ったり事件に巻き込まれたりして、あのように」
「ふむ、興味深いね。機会があれば色々と話を聞いてみたいものだ」
会話を交わしながら進むエールとクロマ。
マジーナはバレッタとの久しぶりの再会が嬉しいのか、脇目も振らず会話を重ねていた。
「でねでね、真犯人は前にやっつけた盗賊と、それに加担してた騎士たちだったの。それをあたしたちが突き止めて、事件は無事解決ってわけ。あ、マズルさんの助言のおかげもあるのよ」
「へぇー。アイツのおかげねぇ。そりゃ良かったけど、あんなのがちゃんと役に立てたのかな」
「おーい聞こえてんぞ」
「ははは」
数歩後ろを歩くマズルがツッコむ。傍らを歩くツルギは思わず笑いを漏らし、マズルはデコピンを食らわす。
「笑ってんな、お前は」
「いだっ…すみません」
「よろしいではありませんか。それぞれ協力し合いながら絆を深める。私の思い描いていたプラン通りで御座います」
セタは悪びれる様子なく言った。普段ならばマズルの怒りに触れるところだが、やはり慣れたのか嫌味を言うだけに収まった。
「やれやれ、またセタさんの思惑通りってわけか。今回も早いとこ終わらせるに限るな」
「それが良さそうですね。魔獣はまだ先ですか?」
「もうまもなくです。心と武器の準備をお願いします」
「へいへい。ジェシカ、ケータイばっか見てんなよ。そろそろ戦闘だからな」
「カサンドラさん、今回も頼りにしてますよ」
一人でケータイを見ながら歩くジェシカと、距離を保ちつつその様子を伺っていたカサンドラ。二人はマズルとツルギの声で我に返り、それぞれのリーダーの元へ駆け寄る。
「おっけマズさん。あちし、ガンバるよ」
「私も死力を尽くそう。期待していてくれ」
一行は、次なる狭魔獣へとたどり着く。
そこには、長い腕で一対の円盤を持って走り回る、猿に似た怪物がいた。
「『ツインソーサー・エイプ』という狭魔獣です。素早い動きにはくれぐれもご注意ください」




