表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/135

岩砕き

 ダイヤ対マジーナ・クロマによる魔法対決。その内容は大岩を魔法で砕くというものだった。

 三人の眼前にはそれぞれひとつずつの岩が置かれている。見た目も形が違う以外は大きさ、質感、色もほとんど同じに見えた。


「ちょっと、待ってもらってもいいかい?」


 いざ勝負、という時になって、一声あげたのはバレッタだった。


「なんだい、せっかくの真剣勝負って時に。無粋な女だこと」


 いかにも不快そうにバレッタを見るダイヤ。バレッタはそれを無視して続けた。


「勝負の前に、確かめさせてもらいたいんだ。その岩をね」


「……ふん、勝手にしなさいな。どうせ何もおかしな所なんて、見つかりゃしないんだから」


 バレッタは岩の前まで歩くと、手を伸ばして触れた。ゴツゴツとした外見からは特に何も違和感はなく、触ってみても同様だった。


(三つとも変な所はなしか…。あのダイヤのことだから、何か仕掛けてるはずだと思ったけど、見当違いだったかね)


 それぞれの岩を念入りに確認するバレッタに、ダイヤはしびれを切らして声をかける。


「ちょっと、いつまでそうしてるつもり? 始められないじゃない。待たせてんのわかってる!?」


「ごめんなさい。もういいから。どうぞ始めて」


「まったく、魔法も使えないのに偉そうに。まぁいいわ。どのみち、これから一生後悔させてやるんだから」


 ダイヤが何気なく漏らした言葉に、マジーナは食いついた。


「ちょっと待って。今のどういう意味?」


「この勝負に負けた方は、何でも言うこと聞くのよ。ちなみに私が勝ったら、あんたたちを一生召使いにしてあげようと思うの。光栄に思いなさい」


 ダイヤの横暴な提案に、見守るツルギやマズルたちも含めて全員が抗議した。


「そ、そんな……。勝手すぎる」


「そうだ。第一、そんな話聞いてねーぞ!?」


「それはそうよ。だって言ってないんだもん。何も知らずに負けて、絶望するあんたたちの顔が見られなくて残念だわぁ」


 ダイヤは邪悪な笑みを浮かべた。彼女の底意地の悪さに、マジーナたちは怒りと恐れを感じていた。


「絶対勝とうね。クロマさん」


「ええ。皆さんの運命は私たちにかかってるんですよね……。負けられません」


 クロマは自信のなさを振り払うように、杖を持つ手をぐっと握りしめた。


「準備はいいわね。それじゃ……勝負開始!!」


 ダイヤの掛け声で、戦いの火蓋は切って落とされた。


「"エル"!!」


「"レール"!!」


 マジーナとクロマは、即座に大岩に魔法を浴びせかけた。岩は煙をあげ、欠片を辺りに飛び散らせた。


「くっ、思ったより硬いわね……。もっと強い魔法じゃないとダメかな。だったら、"メガ・エル"!!」


「私も、"メガ・レール"!!」


 二人は一心不乱に、魔法を放つ。一方、ダイヤも大岩に向けて魔法を放っていたが、二人ほど砕くことは出来ていないように見えた。


「ダイヤの奴、あれだけ偉そうなこと言ってたのに、口ほどにもないな」


 当人に聞こえないように、ツルギの耳元でマズルは囁いた。


「本当ですね。僕から見ても、明らかにマジーナとクロマさんが優勢ですし」


 それから数刻、三人の岩砕き対決は続いた。最終的には岩は形を無くすまで砕かれたが、そこに至るまでのスピードも破壊力も、ダイヤよりもマジーナとクロマが勝っていた。


「はぁ、はぁ……。やりましたね、マジーナさん」


「ええ。でも、やっぱすごいなクロマさん。あたしよりも粉々に砕けてるんだもん」


「それほどでも。マジーナさんこそ、私よりも早く砕けていましたよ」


「本当? 嬉しいな。でも、これならあたしたちの勝利で間違いなさそうね」


 ダイヤ側の岩を見て、マジーナはホッと胸を撫で下ろして言った。

 勝負が終わると、審査を務める街の人々がマジーナとクロマ、ダイヤの間に出てきた。


「さて、それでは勝者だと思う方に分かれなさい。審査……開始!」


 ダイヤの一声で、街人たちは移動を始めた。迷っているのか、立ち止まってなかなか動かない者もいた。やがて全員が移動を終えると、予想だにしない結果が待ち受けていた。


 マジーナ・クロマ側よりも、ダイヤ側の人数が僅かに勝っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ