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ロッシュの思惑

 黒ずくめの男、ロッシュ(フリント)に案内される勇者一行は、手はず通りに周囲を警戒しながら道を進んでいた。道中、木々の生い茂る森の中に入った際にはより一層警戒を強めたが、結局のところ奇襲は一切なかった。


「さ、着いたよ。ここがダイヤのいる館さ」


 やがてたどり着いた大きな館の前で立ち止まり、ロッシュは言った。

 館は一見すると大きく、立派な造りになっていたが、なぜか塗装がされていないのかところどころが黒く、まるで急ごしらえしたかのような外観だった。


「……本当に何も起こらなかったな。まさか中に入ったら今度こそ罠があるんじゃないのか? ダイヤが本当にいるかも怪しいしな」


 ロッシュは何も答えず、笑っているのか僅かに身体を小刻みに揺らしていた。


「それはすぐにわかるよ。多分、もうじき出てくるはずだから」


 ロッシュがそう言った直後、館の扉が開いた。中からは、怪物ダストに担がれたダイヤが現れた。


「ふんふーん。さて、今日はどの街で楽しもうかしら……って、お前たち!? 何でここにいるの!?」


 自分の館の前に勇者一行が勢揃いした光景は予想外だったのか、ダイヤは即座に扉の奥へと消えた。


「ほらね。間違いないだろう?」


「確かにいましたね。やっぱりこの人、信用して良かったんでしょうか?」


 ツルギはマズルに問いかけた。マズルは答えに詰まり、ロッシュを黙って睨みつけたままだった。


「それじゃ、ボクは行くよ。またいずれ、どこかで会おう……」


 ロッシュは身を翻すと、不思議な力を使って消え去ってしまった。


「どうしました、マズル?」


「いや、なんだか説明が難しいんだが。あいつと前にどっかで会ったような気がするようなしないような」


「あちしと二人で会ったけどね。あの真っ黒さんと」


「確かにそうなんだが……。ああもうよくわかんねえ。とにかく、中行こうぜ」


 ジェシカはマズルの記憶を思い出させたが、マズルは思案を後回しにして先陣を切って扉に手をかけた。




 マズルたちが館に入った後、彼らを見送る影があった。ロッシュである。姿を消した後、さほど離れていない木陰に身を潜め、一行の様子を見ていたのだ。近くに移動したとは思わなかった一行は、ロッシュに気づくことはなかった。


「よ、目的は果たせたか?」


 気さくな声をロッシュにかけたのはライサ。どこかからかうような感情が声色から滲み出ていた。


「ライサ。見ていたのかい?」


「おうよ。最初っからな。あいつらを手引きしたってのも存じ上げてるぜ? ……何のつもりだ?」


 ライサは初めは意地悪な言い方だったが、最後の一文は脅すような言い方をした。

 しかしロッシュは怯むことなく返した。


「裏切ったとでも思ってる? 彼らがもし力不足だったら、ダイヤにやられてしまうはずだ。オレはただここに来る手助けをしたにすぎないよ」


「わざわざダイヤに倒させるためにあいつらを案内したってことか?」


「その通り」


 ロッシュとライサはフードと仮面の間から、互いをしばらく睨み合っていた。やがて、ライサはフンと鼻を鳴らして言った。


「まぁいい。エクリプスには黙っといてやる。それはそうと、あのマズルとかいうやつ、お前から何か感じてたようだが、俺の気のせいか?」


「きっとそうだよ。気にする必要はない」


「そうかい。そんじゃ帰るぞ。こんな所にいる必要はなくなったからな」


 ロッシュは今度こそ、ライサと共に何処かに消え去った。

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