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仲間探しの方法は山登り?

 少しだけ見慣れた、木造の建物の中で、俺は目覚めた。部屋にはテレビゲームに出てくるようなタンスやテーブルがある。

 間違いなく、ツルギの世界だ。予想はしていたが、またここで追体験をする羽目になる。


「おはようです。アニキ」


 目の前にはベッドと、そこで横になるツルギ。その名で呼ばれると、どうしても身体がむず痒くなる。


「おはようさん。さて、追体験の始まりか。俺のことは気にしないで、頑張ってくれよ」

「ええ。…あ、マジーナが呼んでる。行きましょう」


 ツルギはベッドから起き上がり、ドアノブに手をかける。その背中を、俺も追った。




 マジーナは廊下の真ん中にいた。なんだかソワソワとした様子で、こちらを見ている。


「おはよう、マジーナ」

「お、おはよう。ツルギ、昨日というか、さっき? のこと、夢じゃないわよね?」


 マジーナはおずおずと、ツルギに尋ねた。ソワソワの原因はそれか。だがあの出来事が夢じゃないかと疑う気持ちは、俺にも理解できた。


「うん、僕にも記憶あるし。同じ夢見るなんて、ありえないだろう?」

「そ、そうよね。そうだよね。…ぬふふ」


 マジーナは突然、気味悪く笑みをこぼした。ツルギは少し引きつつも彼女を気遣う。


「ま、マジーナ…大丈夫?」

「ごめんごめん、大丈夫よ。でもさ、異世界に友達ができるなんて、なんだか嬉しいじゃない? また会えるのが楽しみでさ」

「確かに。僕もアニキと今しがた話したよ。なんか安心できるというか」


 お前、そんなことを恥ずかしげもなく…。

 それを聞いたマジーナはというと、ニヤついていた顔を元に戻して口を開いた。


「あの、マズルさん、今側にいるのよね?」

「いるよ。というか、いるはず。多分、後ろに…」


 そう言ってツルギとマジーナは、俺のいる方向を見た。偶然にも正確に位置を捉えていたため、俺は思わず身を翻し、目線から逃れた。


「やっぱり見えないのね。なんだか不思議な気分。見られていると思うと…」

「まぁすぐに慣れるよ。アニキも、俺のことは気にするなって言ってたし」


 そうだ。お前たちのプライベートには踏み込むつもりは毛頭ないから安心してほしい。その方がこちらにとってもやりやすいってもんだ。


「そうね…。いつも通りに頑張っていこうか。それじゃ、あのセタって人の言う通り、仲間探しに…。あ、そうそう。これ忘れてたんだけど」


 マジーナはツルギに、蒼い菱形の宝石が付いたアクセサリーを見せた。リングの太さから察するに、腕輪だと思われた。


「なにこれ? 腕輪?」

「わかんないけど、また私の部屋に置いてあったの。きっとセタさんからよ。手紙もあったわ」


 マジーナは今度は手紙を差し出した。ツルギは受け取ると、広げて読み始める。俺も横から覗き込んだ。


「なになに、『お仲間を探すための道具、名づけて"ボンズ・リング"です。皆様のお力になりますように』…絶対セタさんからの贈り物だろうね。仲間を探すためのってどういう意味なんだろう?」

「さぁ。とりあえず腕にはめてみよっか。綺麗だし、私がもらっとくね」


 マジーナは自分の腕に輪を通した。彼女の腕は細いので、サイズにはいくらか余裕があった。しかし不思議なことに輪は彼女の腕の位置で宙に留まったようになり、腕を傾けても振っても、外れることはなかった。


「すごい、私の腕にくっついて離れない。サイズはゆるゆるなのに。やっぱり魔法の品物なのかな」

「かもね。…さてと、仲間探しだけど、どうするつもり?」

「うーん、特に当てがあるわけでもないし。ツルギはないの?」

「僕も残念ながら。この町にあまり親しい人はいないからね」


 二人は考え込み、少し沈黙が流れた。俺と違って人当たりの良さそうな奴らなのに、友人は少ないのか。


「とにかく、クエストを受けてみようよ。それで何か、出会いがあるかもじゃない?」

「そうだね。ギルドに行ってみよう」


 二人はその後、支度をすると外へと出かけた。



 ギルド、というのは同業者たちの集まりだと認識していたが、ツルギたちの世界では戦士たちの憩いの場でもあるらしい。クエスト受注の他にも他の戦士たちと話をしたり会食をしたりと、出会いもここで発生することが多いようで、二人はそれを期待していた。

 だが、今回はとりあえずクエストを優先しようという話となり、二人は受付へと足を運んだ。


「こんにちは。クエストの受注?」


 受付は黒髪ロングヘアーの優しそうな雰囲気の女性で、近づいてきたツルギに向こうから話しかけてきた。

 こちらの世界の人間のはずなのに、俺はなぜか、初めて会った気がしなかった。


「こんにちはリベラさん。そうです、何かできそうなクエスト、ありますか?」


 リベラと呼ばれた受付嬢は、カードのような紙を広げ、目を通していた。そこにクエストが書かれてあるのだろうか。


「そうですね…。あなた方の今のランクだと………」


 リベラは長いこと、口を閉ざしていた。戦士のランクに応じて、受注できるクエストが決まるということなのか。

 やがて、リベラは口を開き、一枚のカードをツルギに手渡した。


「ではこちらを。探し人の捜索になります。場所は北東の『ローズマウンテン』です。くれぐれもお気をつけて」




 それから数時間後、ローズマウンテンという山のふもとまでたどり着いた二人は、山頂を見上げてその大きさを実感していた。


「わぁ、大きい山だなぁ。これでも小さい方だって聞いたことあるけど」

「そうね。だけどこの山、これから登らなきゃならないのよね…」

「クエストなんだから仕方ないさ。行こうよ」

「はーい、ときどき休憩して行こうね」


 どこか楽しそうなツルギと、登る前から嫌そうなマジーナは、山道を歩き始めた。

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