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脱走の代償と救出の功績

 私は、自分の好きな時に食べて、寝て、理論の再構築ができる動物園の柵の中の生活を気に入っている。

 動物園を脱走したいと思ったことはない。

 ただ、人の命を助けるためとはいえ、柵から脱走したのは事実である。


 もちろん、あの母親と赤ちゃんを助けられたことは、私にとって胸を張れることである。しかし、脱走をした以上、同じ柵の中で飼われることもない。


 私は動物園を出ることになった。



 引き取り手が見つかるまでに、そう時間はかからなかった。

 次の引き取り手は、動物園ではなく、個人ブリーダーである。


 しかし、個人の家の小さな檻の中で飼われるのは、きっと窮屈であろう。

 動物園と違い、鎖に繋がれる可能性もある。


 私は、先の将来に対して不安を覚えた。

 将来が不安な研究者の世界を生き抜いて教授として生活していた私が、久しぶりに感じた、ポスドク時代のそれと同じである。


 私は飼育員に引っ張られ、新しい飼い主の元につれていかれた。

 そこで、私は大きく目を開いた。


 私の前に立っていたのは、私が助けたあの母親だった。

 彼女に抱かれた赤ちゃんは、笑顔を浮かべている。

 「この間はありがとう。私は、リュミラ。これから、よろしくね」

 母親が言った。



 私が連れて行かれたのは豪邸だった。

 輸送用のトラックの中では、檻の中に入れられていたが、豪邸の中に案内された私は鎖も無しに豪邸の中に放たれた。


 え?と不思議がる私に向けて、リュミラが言った。

 「だって、命の恩人を鎖に縛り付けておくわけにはいかないでしょ」


 私は、ライオンとしての悠々自適な生活を、まだまだ続けられそうである。

物理学者がライオンになる話は完結です。


このまま、数学者がトラになる話に続きます。

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