観覧車とブランコ
ライオンになってからというもの、私にできることは、理論の再構築だけである。
好きな時に食べ、好きな時に寝て、そして、残りの時間を理論の再構築に当てている。もちろん、息抜きのために、遊んだりもする。
ただ、柵の中にあるのは、木で作られたブランコのみである。
これも、私の物理学者としての感性を刺激するのに、一役買っている。
水平に揺らせばブランコとして遊べ、単振り子の運動方程式を実感できる。
また、円状に回転させればタイヤノヤツとして、回転の運動方程式を実感できる。
重力加速度を実感するのも、運動エネルギー0の状態を実感するのも、私にとっては息抜きの一つである。
念のために断っておくが、全ての物理学者が、いつも振り子や回転体に惹かれるわけではない。
ブランコの上からだと、少し遠くの景色も眺めることができる。
私がこの環境を気に入っていないとしたら、そこから見える外の世界に憧れたりもするであろう。しかし、私はライオンとしての生活を気に入っている。
少し要望があるとすれば、柵のすぐ前にある観覧車に関してである。
柵の中からだと、観覧車の全貌が見えないのだ。
なんとか全体が見えるようにしてほしいものである。
なぜ私が観覧車にこだわるのか?
それは、観覧車というものは、物理学者の私にとって刺激的なものであるからだ。
回転してよし。上から物を落としてよし。回転中に物を落としてよし。回転中に初速をつけて飛び降りるのもよし。
空気抵抗の有無だとか、地球の自転の影響だとかも考え出すと、いくら計算しても飽きることはないだろう。
おっと、ここでもう一度、念のために断っておく。
全ての物理学者が、いつも観覧車をそういう対象として見ているわけではない。