めぐりあいトラ
このサブタイトルの良さ、わかってくれる人。
大好きです。
さて、勝負の報酬だが、どうやら私は、話し相手をもらうことができそうである。
と言うのは、飼い主の妻と娘が事故に遭った時に、ライオンに命を助けられたようである。そして、動物園から処分されそうなそのライオンを引き取ろうかどうか迷っていたようだ。
なるほど、我輩は運がいい。
飼い主は、我輩の話し相手にライオンを飼ってくれるのである。
飼い主の嫁に連れられてきたライオンは、鎖にも繋がれておらず、彼女の後ろをついて歩いている。放し飼いである。
この豪邸内では、トラもライオンも、鎖につなぐこともなく家の中に放し飼いをしているのである。きっと、この家の人間の頭の中には複素平面が広がっているのであろう。
我輩は高尚な数学者であるゆえ、人を襲うことなどはしないが、トラやライオンは一般に危険だと思うのは我輩だけであろうか。
トラもライオンも、猫である。
もちろん、我輩の言葉はライオンに通じるし、我輩も、ライオンの言葉を理解できる。これは、証明なしで利用していいことにしておいてもらおう。
そのライオンの話を聞くと、どうやら物理学が趣味であるらしい。数学ができるトラも珍しいが、物理学ができるライオンも珍しい。
類は友を呼ぶとは、まさにこのことである。
我輩は、時に頭の中で数学をし、時に、横に座っているライオンと物理学の話をする。そして、時に飼い主とトランプで遊ぶ。
なるほど、これまで同様、楽しく過ごせそうである。
読んでいただきありがとうございます。
もう少しだけ続きます。
次は、タイゴン編です。




