太一郎爺さんのダンジョン経営 〜失敗からの大逆転、コンサルタントは大事だよ〜
「私、こういう者です。」
「ダンジョン経営コンサルタント、間山雅明。それで、わしに何の用だ。」
間山の差し出した名刺に一瞥をくれると厳しい目を向けて来る。
「お孫さんより依頼を受けまして不良物件の立て直しに参りました。」
「また金を巻き上げに来たのか、今度は陽介の金に目を付けたのだな。」
間山を穴が開くのでないかという程に睨んでいる。
「いえいえ、そんな事をしたら妹に殺されますので。あれっ、陽介から聞いてませんか。」
「うむむ、そうか、陽介が近い内にこっちに来ると言っていた兄さんとは圭介でなくて貴方だったのか。」
太一郎の表情から険は無くなっていた。
「ダンジョン経営が民営化されてから5年、漸く来月に販売時の説明責任に関する法律が施行されます。今までは語呂が似ているせいかマンション経営と同じ位のイメージでいる年長者にどんどん売り付けて、結局管理しきれずに無責任に撤退してしまう中小企業が少なからずいましたのでね。」
「ああ、わしの所も紙切れ一枚送り付けて来てそれでお終いだった。」
太一郎は呆れ混じりに呟いた。
「先ず最初に太一郎さんに選んで頂きます。ダンジョン経営にはお金が割と掛かるものなのです。追加で投資していくのか、思い切ってやめるのかです。」
「ここでやめるのも癪だからな。間山さんを信じて任せてみようと思う。どの位必要なのだ。」
太一郎は真剣な眼差しで問いかける。
「現地を見てみないとはっきりとは言えませんが、少なくとも1億円は必要です。掛かったとしても3億円迄はいかないでしょう。あとは売り上げから資金に回して、ある程度の利益が出るのは恐らく1年半後位になります。」
「それで進めて構わん。」
それから半年後に雅明は太一郎を再び訪ねていた。
「漸く良い物件が見つかりました。ただ駐車場としては少々距離があるので、シャトルバスを新たに購入しなければなりませんし、運転手も雇い入れなければなりません。その分土地の所有者が町興しに繋がると格安で賃貸契約を結んでくれると仰ってます。」
「ふむ、これで良い。」
地図を眺めこの距離なら問題ないかなと素人考えでも分かった。
思った以上に盛況になり、駐車場が足りなくなったのだ。
「もし宜しければ、町興しに少し出資して、ドロップアイテム用にお店の優待券などを出して貰う事も出来ますが。」
太一郎のダンジョン経営は順調です。