憧れという名の恋
妖しく舞う白銀は、深紅を描き万物を切り裂いていく。
滑稽に踊る濃紫からは、無数の紅蓮の線が散らされる。
「綺麗…」
やっと口をついて出てきた言葉は、余りにも貧相で。
それでも、最良の言葉だった。
が、その言葉もすぐに不安と焦りに掻き消された。
彼は、何も出来ない――いや、この期に及んで自己防衛はよそう。
何もしない私を陰で見守り、時には助けてくれた。
たった一人残された私を、近付けば、自分が傷つけられると知っていても。
怖い苦しいと言うだけで、受けに甘んじているような弱い私を。
恩を仇でしか返せない様な、醜く臆病な私を。
助けてくれている彼を嫉妬が故に見下して蔑んでいた卑屈なわたしを。
その彼にさえ引き離されてしまうというのか。
また、独りになるのだろうか。
いや。私は今までずっと一人だったのだろう。
努力で才能を打ち破った彼と歩くには、怠けている暇など無いと知っていても、やはり何もしなかった。
――彼は、私と同じ、いや、もっと酷い状況でも諦めなかった。怠らなかった。
私は、彼に報わず朽ち果てるのだろうか。
私は、彼に頼るのみで終わるのだろうか。
私は、私は、私は――
彼と一緒に歩みたい。
その為に今出来る事と言えば、只只管に目の前の光景を目に焼き付けることだった。
令和一発目の零話。
\ツクテーン/から始まる新たな伝説……




