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「だいまおう 参 」

突如現れた少年の正体こそが、今回の黒幕だった。

「預かるって……どうしてそんなことを。」

「兎に角、神宮寺さんをここに連れていけばいいんですね、でしたら、ここで少し待っていてください。」

「いいだろう。」

どうやら、黒川さんは大天狗の話を呑むようである。一方僕はまだ混乱している。だってそりゃあ、今回のボスが探してもいないのに現れて、しかも見た目が子供で、身柄を預かるなんて言われたら、多分混乱するのが普通である。黒川さんはこういうのにはもう、とっくに慣れているのかもしれない。

数分後

「この方が……大天狗……様……」

「貴女が神宮寺か。探した。面子は揃ったようだし、行くぞ。ここで話をしてもいいが、些か人通りが多すぎる故。我が領地にて話すとしよう。」

「領地……?」

縄張り、ということだろうか。

「彼処の山だ。」

なっ!?あの山はこの辺りで一番高くて有名な山だぞ!?名前は確か、そうか、そういうことか、あの山の名前は大天狗岳。如何にもって感じだ。

「ふむ。運びやすくする。案ずるな、死にはせん。」

その瞬間、僕達三人は首を手刀でやられ、気絶した。

────────────────────────

「……どくん……み……くん……みか……くん…………みか……ど……ん」

ああ、なんだか落ち着く。甘い匂いがするし、柔らかい感触が広がっている。僕はもしかしたら、たったあの一撃で死んだのかもしれない……

「みかどくぅん!!!!」

「うおわぁびっくりしたぁ!」

なんだ、ただの女神か。……ん?これはもしや……膝枕!?

この日、全僕が完全勝利した。女神に膝枕された男として、僕の名前は後世に語り継がれていくことであろう。

「起きたのは貴方がいちばん最後よ。しっかりしてよ。男の子なんだから。」

「あ……はい……」

その台詞には、少し弱い。

目が覚めたのは神社だった。無論、山の中である。まぁとはいえ僕はこの山の中に神社があることなんて、知らなかったのだけれど。

「よし、ではそろそろ話をするとしよう。」

そういって大天狗が足を組み、腕も組んで、可愛い見た目から、辛うじて威厳が出てくる感じの姿勢をとった。(とはいえ殺気は相変わらずだが。)

「何から話せばいいか。とりあえずは、昔話でもしようか。」

なんだ、急におじいちゃんみたいなこと言い出したぞ。

「少し、長くなる。だが命に関わる。心して聞くがいい。」

命に関わる昔話?という疑問はさておき、大天狗は、語り始めた────

「今からもう随分昔の話だ。妖怪が恐らく一番力を持っていた時代だな。妖怪と人は密接な関係にあった。人を手助けする妖怪。逆に人に悪戯を施し、困らせる妖怪。それぞれ違ったが、人は誰しも妖怪の存在を信じ、恐れる者もいれば、崇める者もいた。それが結果的に、妖怪が世に姿を留められる大きな要因となっていた。

……しかし、人間と妖怪が深い関係を持つことを許さない妖怪がいた。奴は、妖怪の頂点に立つ者であった。或る日突然、奴はその強大な力を振るい、全ての妖怪を操ることに成功した。全ての妖怪を以て、人の世を終わらせ、自分達妖怪が優れた存在であるというのを人間達に証明するため、そしてこの世に妖怪が永遠に生き永らえるために、奴は洗脳した全妖怪を解き放ち、日本を地獄に変えた。」

「そんな事が……」

大天狗はため息をついて、僕の方を見て深くうなづいてから続けた。

「洗脳された妖怪達は、瞬く間に人間達を殺めていった。

人間達は何の抵抗もできず、死に絶えるしかないかに思われた。突然、地面から無数の紅い茨のようなものが生えてきた。茨は、妖怪達を次々に串刺しにしていった。そうして妖怪達は消滅し、ついに残すは“奴”のみとなった。

すると、茨は纏まり、捻れて、一本の槍となった。しかも驚くことに、その槍を手にしたのはどこからともなく現れた一人の女だった。女は、その槍を奴の心臓目掛けて放つと、槍は紅い雷を伴い、奇妙な軌道を描きながら、奴の心臓を穿いた。

すると奴はみるみるうちに身体が崩れ落ち、跡形もなくなってしまった。女は槍をもって、どこかに姿を消した……という話だ。」

長々と語っていたが、要するに、昔は妖怪がかなり力を持っていて、人間と深い関係にあったが、それが気に食わなかった妖怪のトップが妖怪を洗脳し人々を恐怖に陥れるも、謎のヒロインと、茨の槍によって妖怪達は消滅した。ということだろうか。まとめてみても長い話である。

「え……でもじゃあ、なんで妖怪達は今もまだ存在しているんですか?消滅したんじゃないんですか?」

妖怪も、妖怪のトップも消滅したのなら、何故僕は今まで妖怪と遭遇したのだろう。現に目の前には、大天狗だっているじゃあないか。

「うむ。そこが危険なのだ。……奴は、奴はまだ生きている。いや、何らかの形で復活したのだろう。」

「もしかして……それって……その妖怪って……」

黒川さんが震え声で入ってきた。怯えているのか……?

「言うな。それは最後に。まだ話さなくてはならないことがある故。」

大天狗は鋭い声で黒川さんを黙らせた。気がつけば、神宮寺さんも震えている。なるほど妖怪のトップは、そうとう有名で恐ろしいらしい。

「それで、まだ話さなきゃいけないことっていうのは?」

気を取り直して僕が問う。

「我が起こした風の件だな。あれは、要するに餌だった。我が生きていることを奴に知らしめるためのものだ。現に、妖怪による小騒動は主にこの街で起きている。魑魅魍魎が跋扈するこの街に奴が潜んでいる可能性が高い。」

なるほど、そういう事だったのか。自分が生きていることを知らせれば、黒幕が動くかもしれないという計算か。

「我は妖怪である以前に、神だからな。奴の洗脳は通用せん。故に、奴と戦えるのは我のみと思っていたが……やはり彼奴のいうことは真実だったか。」

「アイツ?」

「“天邪鬼”だ。貴公等が倒したはずだぞ。」

ああ、天邪鬼か……アイツの話がでてくるだけで、僕はどこか安心した。アイツの言葉がやはり、今も僕を強くしてくれているからだ。

「彼奴は聡い奴だった。或る日我が山中に訪ねてきては、貴公等の存在を我に伝え、『奴を倒すきっかけになるかもしれない』と言い出すものだから、我も視野に入れてはいたが、貴公等が洗脳された奴を救ったことを知って我は確信した。貴公等こそ奴を仕留める鍵になる。だからこそ思ったのだよ。それまで危険な目には合わせられないと。」

ああ……天邪鬼はやはり、操られていたのか。それでも必死で抵抗して僕達にあの言葉をくれたと考えると、涙を流さずにはいられなかった。彼は本当に素晴らしい妖怪だった。

「して、身柄を預かる。と言ったな、あれは物理的なものにあらず。この札を貴公にさずける。」

そういって大天狗は、複雑な模様が描かれた札を一枚僕に寄越した。

「これを使えば、一度だけ我を呼び寄せることが出来る。もしも貴公等の身に、抗えぬ危険が訪れた時は、呼ぶがいい。天邪鬼の遺志を継ぎ、我が全力で力になることをここに誓おう。」

大天狗の瞳に、なにやら凄まじい気を垣間見た。この視線だけで、大天狗がいかに本気か、そしてどれほど頼りになるかが一瞬で分かるほどであった。

「そして、神宮寺、黒川。本当はこの話をするのは、御門一縷のみで良かったが、貴女等にまで話したのは言うまでもなく、貴女等が妖怪を良く知るからだ。敵をよく知るほど、有利なのは言うまでもない。震えなくとも良い。貴女等の恐怖、奴ごと消し去ってやろう。」

僕に話す時とはまた違った、優しいトーンで、安心させるかのように二人に言った。僕達は、最強の協力者を得たのかもだ。

「長くなったな、では、最後だ。妖怪を操り、人の世に終焉を齎すやつの名は……」

全員が息を飲んだ。

「ぬらりひょんだ。」

その名を聞いた時、体全身が震え上がった。神宮寺さんと黒川さんは、思わず腰を抜かしてしまった……

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