ギルドと錬金術師。その二
本日二話目かな、二話目の投稿です。
ちょっと一話あたり短いかもしれません。
「では、俺は用事も済みましたし」
ケルトはそう言って席を立とうとすると、ボルドはまあまあと言いながらそれを止めた。
「今日はうちに泊っていただけませんかな?」
「というと?」
「娘のアリアがケルト殿に会いたいと申しておりますので」
ボルドには二人の娘と一人の息子がいる。息子さんの方は優秀で今は王宮近衛騎士という役職についていることをこの前王家の方々に会った際に聞いていた。
「息子さんにはつい先日お会いしました。ボルドさんによろしくと言ってました」
「そうですか。あれは中々帰ってこないものですから、どうしているのか心配していたのですが、そうですか」
ボルドは懐かしむような表情を浮かべながら、
「あれは剣だけが取り柄ですからな」
そう口にした。それを聞いたケルトはそんなことはないだろうと思ったのだが、ケルトは口を閉ざす。
王宮騎士団とはシェルベアでも選りすぐりの戦士たちを集め、剣術、魔法に優れた者たちだと聞く。その中でも近衛騎士団エリートの中のエリート。家柄に関係なく完全な実力派だけがその敷居を跨ぐことが出来る。
そんな連中はお世辞などなくとも当然圧巻されるほどの力を有している。
少し前にケルトは会ったばかりだったためかなり印象に残っていた。王家の者がよく辺境まで来られるのも彼らがいるからだろう。そうでなければわざわざ、王都から片道にして一月掛かるようなこの場所にくるはずものないのだから。
「如何ですかな、ケルト殿」
「俺も最近は森にいることが多かったですから、たまにはお言葉に甘えさせて頂きます。迷惑でなければですが」
「とんでもない、こちらから提案させて頂いて迷惑もなにもありませんよ。それにアリアがとても会いたがっていますので」
「一番下の子でしたね、アリア嬢は」
「今年で13になります」
この世界では15歳からは成人という扱いを受けており、貴族であれば12歳で嫁いだりするのも常識だったりする。
ケルトがアリアと初めて会ったのは今から5年ほど前のこと。ボルドに気に入られて彼の屋敷に招かれて行った時「あたしの下僕になりなさい!」と言われたのがとても印象的だ。
それから半年に一度くらいはよく勉強やら何やら面倒を見ていたことをよく覚えている。
「では、今晩にでも伺います」
「それとケルト殿、ご相談がもう一つ」
ボルドはギルド長らしい険しい顔つきでこう告げる。
「そろそろ【夜】が始まります」
読んで下さってありがとうございます。