ギルドと錬金術師。その一
三話目です。
のんびりやってます。
今日はガルムにあるギルドへと向かっていた。
「そこのフードの」
街に入るための門を通り抜けようとした際に衛兵に声を掛けられた。声を掛けた衛兵を見るとその顔には見覚えがなく、どうやら新顔のようだ。
もうそんな時期になったのかとしみじみ感じながら、
「何か用ですか?」
そう尋ねることにした。
「お前は見るからに怪しい、そんな奴を通すわけには……っ!!」
最もらしいことを言っているとばしーんと乾いた音が門の前で響きわたる。
「そいつはいいんだ。申し訳ない、ケルト殿」
「いえいえ、熱心に仕事をしているってことです。俺は見た目が怪しいですから」
そう思っているのであれば変えればいいのに、と内心ではそんなことを思いつつも若い新顔の衛兵は手続きを済ませる。
「ケルト殿、今日は何の用で?先日大量に食料やその他諸々購入されたはずですが……」
「今日はギルドに用事がありまして」
「そうですか。最近は物騒ですから気を付けてください」
分かりましたとケルトは一礼するとその足でギルドに向かった。その様子を見ながら新顔の衛兵はベテランの衛兵に尋ねた。
「王家方々と面識がある人なんだぞ。それにグレイフィア様がケルト殿に宛てる文通などもここを通ることがあるくらいなんだ」
「……そんな人があんな恰好を」
「何でも、彼には魔族の血が流れているらしい。普段彼の魔力なんて見ることもないが、3年ほど前に火竜が近くの山に住み着いたときなぞ、魔族特有の魔力を放っていたな」
「先輩、魔族は敵ですよ」
ベテランの衛兵は苦虫を潰したような顔をしながらそうだなと頷いた。
「魔族とはいえ、種族的にはダークエルフだ。ケルト殿は伝説のエルフでもあるからな」
「……何で、そんな人物が」
若い衛兵はもう何が何だから分からないと言ったような表情を見せながら、ため息を漏らした。
「辺境って異常な場所なんですね」
「そうだな、もう魔王が来ても可笑しくないな。ははは」
それは笑いごとじゃないだろと内心思いながら、若い衛兵はさらにため息をつくのだった。
☆
ギルドに到着した怪しげな男もといケルトは受付で依頼を出す。
「あら、ケルトさん。今日は依頼ですか?」
「自分で取りに行ってもいいんですが、最近新人がたくさん入ったって噂を聞いたもので、新人でも出来そうな依頼です」
「それは助かります。因みに依頼作成に別の部屋を用意しましょうか?」
「そうして頂けると有難いです。前みたいに集まられても困るので」
受付を担当している女性は初老の男性を連れてくる。
「これはこれは、ケルト殿。ではこちらへ」
そう言って、ケルトを別室へと案内する。
「ボルドさん、依頼内容なんですが以前と同じような感じで」
「以前と言われますと、新人育成のための依頼ですな。内容は……薬草採取とボア三頭の討伐に鉱石類の採取でしたな」
「はい」
「また、ボア鍋でも振るわれるのですかな?」
「そうですね、あれは中々好評でしたからまたやろうと思ってます。鉱石類も持ってきた人には武器を作ろうかなって思ってます」
ボルドと呼ばれた初老の男は楽しそうに笑った。
「彼にはかなり美味しい話でもありますな。問題はそれを見抜けるかというところ」
「それは彼らの判断力次第では、と俺は考えてます」
「それを考えると去年の新人は優秀でしたな。ほぼ全員がこの依頼に参加」
お茶をお持ちしましたと受付嬢がこの部屋に入ってくるとケルトはありがとうと言いながらお茶を受け取った。
「それよりも如何ですかな、例の話は考えてくれましたか?」
ケルトは愛想笑いを浮かべるだけでそれ以上何も言うことはなかった。
読んで下さってありがとうございます。