表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この人を見よ  作者: ふじたごうらこ
第一章 出国まで
2/116

第二話、来客

◎ 第二話


 次の日は月曜日でもちろん私たちはいつものように自転車で通学する。晴れでも雨でも私たちは一緒に自転車で通うの。大盛女学園は最寄りの駅の次の駅だけど混雑している鉄道に一駅だけ乗るよりは自転車の方が健康にもよさそうだし何よりもお父さんに言わせたら経済的! というところかな。

 理玖の家は私の家の近くだけど、友永病院の隣なのよ、そう理玖は友永病院の院長先生のご令嬢ってわけ。大盛女学園はお金持ちの女の子が通うところなんだけど、私の場合例の男の子たちと一緒になるとまたいじめられるからとお父さんががんばって大盛女学園に入れてくれているのよ。

 私のお父さんは獅子町役場の公務員で頭がはげていてあまり格好はよくないけど、やさしいのよ。私は大好き。お父さんは近所や職場からはカッパハゲとかカッパくんとか言われているらしい。娘としてももう少し身ぎれいにしてくれたらうれしいのだけど、お父さんはめぐみが一番だからめぐみがきれいにしてくれたらぼくなんかどうでもいい、ご飯が食べれて眠れたらそれでいいんだ。めぐみが幸せになれたらそれでいいとか……ほんと親ばかならぬ子ばか。お母さんが私をかばって死んでからお見合いの話も何度もあったのに断ってばかり。まあお母さんは写真で見てもすごい美人だからね、なんでお父さんと結婚したのか不思議だけどお父さんはお母さんに一目ぼれで何度もアタックしてやっとのことで結婚できたらしい。というわけで結婚に使うエネルギーはもう枯れて何もないから、あとは残されためぐみに使うとか言っちゃって。

 そうそう私の話ね。いじめられた時の話に戻るわ。私のひざの話は少ししたけれど、あの自動車事故の後遺症で私の左のひざは中に入らない。ちょっととびだしているように見えるの。体育の時間なんかまっすぐ気を付けの姿勢になっても膝がまっすぐにならないので、たったそれだけなのに私はいじめられたの。走るのは遅いのは仕方ないでしょ、ブスも仕方ないでしょ、私は目が奥二重であまりかわいくないとは自分でも思うけど、ほかにも一重の子もいるのに、私は大人しくて何も言い返せないから調子にのって。

 ひどいよね……着替えや教科書を隠されたりもした。極め付けが、ドッジボールで私がへまをして味方の男の子たちから体育の時間が終わった後、集中攻撃された。特訓だとボールを集中的にぶつけられたのよ。次の日から、私は小学校へ通えなくなったの。そう、五年生ぐらいかな。担任は空気同様でいじめられる子供にも責任があるといって何もしてくれなかった。お父さんは怒ってもう学校へ行かなくてもよいと言ったぐらい。一応義務教育で通わないといけなかったし、保健の先生がやさしかったので保健室登校してそこで残りの二年間をすごして卒業したの。あの時の男の子って大嫌い。私がやめてと泣いて頼んでいたのに黙って見てるだけだった女の子たちも大嫌いよ。先生も大嫌い。私はあの小学校が今でも大嫌いよ。

 それですぐ近くの公立中学校へ進学するのをやめて一駅分自転車だけど大盛学園に行くことになったわけ。理玖ちゃんは大盛学園の幼稚部から通学していたので中学校からはじめて一緒になったの。だけど私はバレエを小学校五年生つまり不登校になってからはじめたので、大盛学園に行く前から顔見知りだった。大盛学園の人たちはお金持ちが多くて私はとまどうことが多かったけど、大豆先生のバレエ教室で一緒だった人はほかにもいたし、先輩にもいたの。だからすんなり仲間に入れてもらえたほうだと思う。女子中、女子高と順調に不登校にもならずに通学で来てよかった。小学校でつまずいたけど、乱暴な男の子たちと離れられてよかったと心から思うわ。

 でも理玖がだんだん美人になっちゃって。小学校で私をいじめた子が理玖の取り巻きになろうとするけど、理玖にはわけを話して私の友達をいじめた人は論外で絶対好きになれないわとその子に直接言ってくれたりしたのよ。

 私の好きな人? ええ、まだよ。理玖も私もまだ。

 え、私の話、私に関する話ね?

 理玖じゃなくて? は、はあ。じゃあ私の話ね。

 好きな人の話がでたけど、実はね、歌手のNAITO が一番好き。歌もうまいしイケメンだし去年の大河ドラマで主役をしてからもっと好きになった。NAITO,かっこいい~。理玖も好きなんだって。海外ドラマの俳優にも好きな人がいるけど、日本人ならNAITO が一番っていう。それで私たちは気があうのよ。

 あーあ、また理玖の話になっちゃった。

 理玖は夢をかなえようとして一生懸命なのよ。バレコンで優勝してよかったわね、今年の夏休みにはサマースクールでパリかロンドンへ行くとかいうのよ、さみしくなるけど、プロのバレリーナになるなら留学をしなきゃね。応援してるわ、理玖。

 ええ、私は理玖とバレエとNAITO が好きなの。それだけね、ね、どこにでもいる普通の女の子でしょ。それとお裁縫ね、お洋服を自分でデザインして縫ったりするのも楽しいわよ。刺繍もいいわね。バレエをしないときは家でそうやっているときが多いかな。お父さんの服のボタン付けも私よ。


 バレコンの翌日の話に戻るわね。登校すると理玖のまわりにクラスメートが集まって口々におめでとうといってきた。今朝の獅子町テレビの地域ニュースできのうのバレコンで優勝したのがわかったみたい。ばっちりインタヴューもされていたしね。私にもおまけでついていってインタビューにも少しだけ出たものだから、テレビに出てよかったわね、と言われてしまったわ。そうね、私なんてそうでもなければテレビに出れないわよね。私の顔、NAITOも見てくれたかなーなんて。

 それが昼頃にはYOU TUBE に誰かがアップしたとかで昼休みにはみんなで携帯でその画面を見た。理玖の踊りはもちろんだけど、インタヴューにもはきはきと答える理玖。理玖は一体誰があんなインタヴューまでアップしたのかしら、恥ずかしいわと怒っていたけど、私たちは喜んで何度も見たのよ。

「やっぱり優勝するだけのことはあるわねー」とみんなで賛辞を送る。そうよねー、理玖。かっこいいもんね。それも性格もよいときたらね、怖いものなしよね。偉くなっても有名になってもずっと私と友達でいてね、ってこんな気分だったわ。


それから十日ぐらいたったかしら。バレコンの興奮もさめ期末テストに入った。私は英語と国語はまあまあ得意だけど、歴史が苦手。四大文明の問題が出てあせった。数学はもっとダメ。ああダメだダメ。私は勉強が苦手。そんな私って将来なんの職業につけばいいのだろ。バレリーナはこの膝だし、膝のことがなくても運動神経は悪いし、国立大学受験は多分無理。なりたい職業も今のところはバレエ衣装を作る人になれたらいいなっていうことだけ。それだけね。

 テストの結果のお粗末さが今からわかっているだけに憂鬱な気分のまま自転車をこいて帰宅する。理玖は大豆バレエに毎日通っているのでテスト期間中は帰宅せずいつもより早いクラスレッスンを受けるとかで途中で別れて帰ったのよ。

 帰宅すると家の前に黒塗りの大きな車が一台止まっていた。お父さんの車も戻っている。あれ、今日は平日なのに、お父さんが先に帰っている……どうしたのかな、お客さんかなって思ってね。自転車を止めて私はそっと自宅の玄関を開けたのよ。

 すると玄関には大きな黒い靴が二足並んでいてびっくり。我が家にお客さんが来るのはめずらしいのよ。お父さんのお友達かな、ってね。玄関で靴を脱いで二階の自分の部屋にあがろうとするとお父さんが「めぐみ、戻ってきたのか」と声をかけてきた。

「うん、」

 お父さんは私の顔をまじまじと見ていた。

「お前を見たいという人が来ている、ちょっと客間においで」

「え、わ、私? 私を見たいって?」

「うん、制服のままでいいから、ちょっとおいで」

 私は不思議な気分で居間に入る。そこにはピシッとしたスーツを着こなした二人の男性が正座していた。そして二人とも私が部屋に入ると背筋を伸ばして私をじっと見た。二人ともお父さんと年がおなじぐらい、つまりおじさんで髪型が七三分けで同じで眼鏡も同じような感じでかけていた。お父さんがこっちに座りなさいと私を手招きする。

 一体どうしたのだろうか、と私は不思議に思ったがとりあえず座布団の上にちょこんと座った。お父さんがこの人たちは東京の外務省の人だと説明したが私にはピンとこず、何のことかわからなかった。少なくとも今までに会ったことのない人だし、お父さんにとっても初対面の人なのだということはわかった。

 居間のテーブルの上に名刺が二枚置いてあった。ちらっと見ると外務省なんとか、と書いてあり田中なんとか、鈴木なんとかと書いてある。外務省って何の仕事だったっけ? よくわからないなりに、私を見たいってどういうことなんだろって不思議だった。

 向かって右側の人が声をかけた。

「私は田中と申します。いきなり訪問して失礼ですが、あなたが爆雪めぐみさんですね」

「はい、そうです」

「ご本人ですね」

「はい」

「年は十六才で間違いないでしょうか」

「はい、私は十六才ですけど」

「先日友永理玖さんのバレエコンクールの付き添いに行かれましたね」

「はい、行きましたけど」

「その時に友永さんは優勝されましたね」

「はい、その通りですけど」

「そのあと友永さんはバレエ雑誌と地元のテレビ局から取材を受けられましたね」

「はい、そうですけど」

「その時もあなたは友永さんのそばにいましたね」

「はい、あのう、私、何か悪いことをしたのでしょうか」

「いえいえ、念のための確認です。もうちょっと質問してもよろしいでしょうか」

「はあ」

 今度は向かって左側の人がアタッシュケースからノートパソコンを取り出して私にも見えるように画面を開いた。

 YOU TUBE がトップ画面に出ている。

「爆雪さん、ちょっとこの画面を見てください」

 見るなり私は、なあんだと思った。先週のバレコンで理玖が優勝してインタヴューを受けた時のシーンだ。私はもう何度も見ているので見慣れている。右下の再生数を見たら八百ほどになっていて、いいねが二十、ワルイねが五だった。最後に見た時は五十人ほどだったけど、増えている。八百もの大勢の人が再生してみてくれたのだなあって考えていた。

 二人の男性は再生が終わると私に聞いた。

「インタヴューで最後の方にうつっていた女性はあなたですね」

「はい、私です。おまけでうつっちゃいました」

 男性は黙ってうなづくと、YOU TUBE を閉じてもう一つの画像をアップした。私がインタヴューされているシーンで静止画像になっている。私の出るシーンなんか三十秒もなかったはず。なのに私の顔が大きく引き伸ばされてアップされている。私はインタヴューする人ではなく、理玖の方を向いてしゃべっている。だから横向き加減だ。いつもより耳が飛び出て見える。理玖は画面の方をまっすぐに向いて女優さんのような輝く笑顔だ。私もかろうじて笑顔ではあるものの、すぐ隣にいる理玖の引き立て役だ。私ってやっぱりブスね、とちょっと悲しい気分で画像の中の自分の顔を見ていた。でも、この人たち、どうしてわざわざこんなことをするのだろうか。新手の嫌がらせ? いじめ? なんだろうか。

 二人の男性は私がその静止画像を見ていると「爆雪めぐみさん、この画像も確かに貴女ですね」と確認してきた。さっきYOU TUBE でもそう言ったのに、どうして同じことを何度も聞くのだろうかと不思議に思った。お父さんも不思議そうにお客さんに聞いた。

「確かにこれはうちのめぐみですが、一体どうしたのですか」

 二人の男性は同時に咳払いをした。

「これは未確定ですので、あまり公言はできないことです」

「はあ」

「実はこのめぐみさんの画像を見て一目ぼれをした男性がいます」

「はあ?」

「日本と国交がない国の男性ですが外務省に直接連絡してきたのです」

「はああ?」

「その男性はその国の皇太子さんでした」

「……」

 私とお父さんは思わず顔を見合わせた。どっかの国の皇太子だって。うそでしょ、何かのドッキリカメラでしょ、理玖ならともかく私なんか。

 お父さんがいきなり笑い出した。

「ははは、外務省さんって私と同じ公務員ながらわりとヒマなんですかね、一分もない娘へのインタヴューで一目ぼれって。どこかの思い込みの激しい人からの連絡で天下の外務省が動いて……あなたたち、本物の外務省職員でしょうかね? うちの娘を探し出して私の職場に来て強引に私の家にまで押しかけてうちの娘にこれはお前かと念を押しにくる。外務省ときたら公務員のエリートさんでしょうが……こんなふうに動くものですかね」

「爆雪さん、私どもも偽物だったら動きませんよ。本物だからこそ一週間かけて身辺調査をしてこうして直接ご本人と保護者同席で確認をしにきたのです。もし結婚となったら外務大臣どころか首相がこの家まで挨拶にきますよ、多分ね」

「……、我が国と国交がない国とおっしゃいましたが、それは一体どこの国ですか」

「メイディドゥイフ王朝社会主義人民共和国です」

 お父さんは黙った。私は聞いたことがない国なのでコメントのしようがないと思った。そこの国の皇太子とやらが、私に一目ぼれしたってこんなの手のこんだいたずらとしか思えない。

 外務省の人はお父さんにこの国の名前はご存じでしょうかと聞いた。お父さんは軽く頷いた。

「名前だけはね、ヨーロッパ圏での独裁主義国家の一つでしょうが。しかも共和主義と唄ってはいても、事実は元王家一族の独裁政治で外部からは国の事情はまったく不明……王家は国民を洗脳して神と同格にあがめているように仕向けているとか。そこの皇太子とやらがうちのめぐみを、本気ですかね。来日されたこともない人でしょう、なぜ日本人の子供に一目ぼれされるのですかね。その人は一体いくつですかね……やっぱり誰かタチの悪いいたずらではないでしょうかね」

 外務省のお役人は重々しくうなづいた。

「爆雪さん、驚かれるでしょうがこれは事実なのです。いたずらでもなんでもありません。事実なのです。これは重大なことです。まずおっしゃるとおりメイディドゥイフと我が国とは国交はありません。なので在大使館も何もかもありません。隣のロシア連邦の大使館から極秘かつ非公式な外交ルートでこちらに連絡がきたのです」

 お父さんは驚きつつ嫌味を言った。

「しかしながら、私どもにとっては雲の上の人の話にしか思えません。何度でも言いますが本気ですかね? その、皇太子さんとやらは? そしてそちらの外務省も。私どもに話をこうして持ってくる前にせき止めて拒否することもできたはずですよ? 私どもに内緒でね。それを真に受けてこうしてこの家を探し当ててやってくるとは……いやはやどうなっているんですかね? 

 本当によその国の皇太子ともあろうものが、うちのめぐみと結婚を前提につきあいたいとは、信じられない。だってもし結婚したら皇太子妃でしょうが? 言葉の問題もあるでしょうし、その皇太子の名前も年もわからぬ状態で、はい、娘をどうぞどうぞと差し出す気にはなれませんよ」

 外務省のお役人はそろって咳をした。そして今度は右側の人が返事をする

「爆雪さん、ご心配はよくわかります。またどういうことであれ、結局は本人同士の問題ということなので私どもも無理は申しませんよ。一応ご参考までに……皇太子の名前は通称グレイグフ、年は四十歳だそうです」

 お父さんは目を丸くした。私もそんな年上の人とは思わない。というか事態が全く呑み込めていない。お父さんは外務省の人に言った。

「皇太子は四十歳ですか。あちゃー、ぼくと同じ年ですよ、その皇太子って独身だったんですかね。本来ならば光栄な話なのでしょうがね……何もうちのめぐみに一目ぼれしなくとも、あちらの国の皇太子ならばそれなりの高貴な血筋のお嬢さんを好きなだけ選び放題のはずですよ。私としては信じられませんな」

「爆雪さんのとまどいも理解できますよ。こちらもメイディドゥイフやグレイグフ皇太子に関しては外務省とはいえどもあまり情報がありませんのでね、あちらのいうとおりのデータを申し上げている次第です」

 お父さんは気を悪くした。

「あちらのいうとおり。そしてこちらからは何をいうのですかね? 私と私の娘の承諾なしに、こちらの個人的データを差し出したりすることはやめてくださいよ」

「そんなことはいたしません、さっき申したデータというのは、メイディドゥイフ側が爆雪さんに開示してくれと言った事柄です。また我が国に対して、YOU TUBE にあがってきた娘さんの画像は果たして日本に本当に住んでいるのか、また実在しているのかを教えてくれという要請です」

「大体そんな話以前の問題があるでしょうが。そんなことを言われても、住む世界が違いすぎませんか? その皇太子って日本に対して、また画像をちらっと見たぐらいで会いたいって常識では考えられないことですよ。外務省さんしっかりしてくださいよ。常識ってもんがあるでしょうが」

 私はお父さんとその外務省の人の会話を黙って聞いているしかなかった。お父さんは怒りながらも困っているし、私はどう考えてよいかわからない。外務省の人はお父さんに怒られながらもていねいにしゃべっていたが、心の中ではどう思っていたかはわからない。よそのあまり聞いたことのない国の皇太子に対してどう思っているかは全くわからなかった。今度は左側の人が話しかけた。

「つきましては、グレイグフ皇太子がお嬢さんに直接に会いたいからと言ってきているのです。我々外務省を通して、ということは先方は本気なのですよ。それで今後何度か打ち合わせにお伺いすると思います。外務省の折衝係が我々田中と鈴木になりますが、よろしくお願いします」

 お父さんは詐欺じゃないのかとぶつぶつ言っている。私も詐欺ではないかと思っていた。もし本当に皇太子が私に会いに来ても詐欺どころか偽物が来る可能性の方が大きい。なんといっても私は日本の国のクラスでも目立たない昔はいじめられっ子の無名の高校生にすぎないのだ。家だって普通の庶民で金持ちでもなんでもない。お父さんは重ねて言った。

「よろしくって……田中さんと鈴木さんは、それでは我が家に何度か来られるおつもりですね」

 外務省の田中さんと鈴木さんは同時に頷いた。

「今日のところはこれで失礼します。めぐみさんお体大切に、では」

 この人たちは本気の本気なのだろうか、私は自分のことなのに、どう考えてよいかわからずぼうっとしていた。二人は頭を同時に下げると帰り支度を始めた。玄関で靴をはき、ドアに手をかけて振り返る。

「あ、そうそう、爆雪さん。これはマスコミにはまだ内緒です。何分将来あるお嬢さんですし、あちらの国の内情もわからぬのに、我が国の国民である女性を差し出すわけにはいきませんからね」

「はあ」

 お父さんはひたすらびっくりしているし、私もそうだ。皇太子って聞こえはいいけど、聞いたこともない国の皇太子でしかもお父さんと同じ年だ~。NAITO のようなタレントだったらどんなにかうれしいことか、でもよその遠い国の皇太子だなんてジョークとしか思えない。やっぱりドッキリカメラではないのか、どこかで私を笑いものにしているのではないかと思う。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ