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影山真澄(かげやまますみ)2

「土地が安いし少しの客が来てくれるだけでよかったからここに店を開いたんだが、まさかここまで客が来ないとはな~。」


自身の見立ての甘さに肩を落としながら影山は水道の蛇口を捻り顔を洗う。


「悩んでいても仕方ない。とりあえず飯食って開店準備しないと。」


珈琲を淹れサンドウィッチを作る。

喫茶ナマケモノのフードメニューにもなっているサンドウィッチ。

これがなかなか美味い。

美味いはずなのだが客が来ないことには美味いということを分からせることもできないのだ。




「、、、、、、ちょっとだけ宣伝するか。」


そう言ってサンドウィッチを珈琲で流し込むと、バックヤードから紙とペンを持ってきて手書きで宣伝用のフライヤーを作り始めた。

その数、堂々の10枚!

やる気が全く見えない枚数だ。


このたった10枚のフライヤーでどれ程の効果があるかは些か疑問だが、しかしそれでも何もしないよりはマシなはず。


影山はフライヤーを持って店を出た。




駅前でフライヤーを配り始めた影山に次の試練が襲いかかる。


「う、うそだろ?」


配り始めて1時間、渡せたフライヤーの数、0枚。

1時間やって1人も受け取ってもらえなかった。


「心折れそうだ、、、場所変えようかな。」


諦めて別の場所を探そうと振り返った影山の

目の前にあったのはなぜか少女の顔だった。


「え?」


「ん?、きゃっ!」


道の向こうから、長い黒髪を揺らしながら駆けてきていたセーラー服の少女と振り返った瞬間に追突事故を起こした。

10枚のフライヤーが宙を舞う。


「いててて。君、大丈夫?」


「うぅ。す、すみません!あたしがよそ見していたせいで!」


「いや、それはおれも同じだから気にしなくていいよ。それより、怪我はない?」


「あ、あたしは平気です!それよりお兄さんの方こそ、、、。」


その時、セーラー服の黒髪少女は、自分とぶつかった相手と目が合った。


「青い目。」


「あぁ、ちょっと諸事情でね。こんな目なんだ。君、立てるかい?」


影山は少女に手を差し出すと、彼女を引き起こした。



地面に舞い落ちたフライヤーは行き交う通行人になんの躊躇もなく次々と踏み潰されていた。

無事だったのは偶然少女の膝の上に舞い落ちた1枚だけだった。


「あの、ほんとにすみません。あたしのせいで、、。」


「いいっていいって。もともとそんなに配る気なかったからさ。」


「あの、これ。」


「たまたま君の上に落ちて1枚だけ無事だったってのも何かの縁さ。君にあげるよ、どうせ欲しがる人もいないしね。君もいらなかったらゴミ箱にでも捨ててくれて構わないよ。痛い思いさせて悪かったね、それじゃ。」


そう言うと影山は、その場から歩き去って行った。

少女は去って行く影山を見つめながら


「綺麗な目。」


と呟いた。

そして何気なく手元に残されたフライヤーに目を落とすと、怪訝な顔をしてこう言った。




「喫茶、ナマケモノ、、、?」









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