影山真澄(かげやまますみ)
男の名前は影山真澄といい、喫茶ナマケモノのオーナーをしている。
といっても、仕事はもっぱら店の椅子に座って煙草をふかしながら一日が終わるのも待つだけだ。
こんな暗い路地裏の店に好んで入る物好きなどいない。
「今日もひまだな。」
影山はそう呟くと、二本目の煙草を手にとった。
彼の目は生まれつき青かったわけではない。
影山の家族は彼が10歳の時に交通事故で他界した。
影山だけが奇跡的に一命をとりとめた。
意識を取り戻した時、既に目は青くなっていた。
最初は両親を失ったショックで病院のベッドから出ることもできず、ひたすら泣く毎日だった。
看護師の献身的な看護により、ようやく歩く気分になれた影山は、洗面所の鏡にうつる自分の目の色に驚いた。
怖くなって担当医に目のことを聞いても、精神的なショックと手術による後遺症としか説明されなかった。
それからしばらくして退院したが、身寄りのいない影山は18になるまでの生活を施設で過ごした。
施設を出てからは両親や自身の目のことにも気持ちの整理がつき、自立するためにバイトをし金を貯め、喫茶店を開いた。
決して高望みなどはしておらず、質素でも生活していけるだけの収入があればそれでよいと考えていたが、現実は更に厳しかった。
さすがにそろそろまずいと考えた影山だったが、二本目の煙草を吸い終わると、頭を掻きながら店の中に戻っていった。