プロローグ
初めて小説を書きます。
がんばります。
電車の走行音。
自動車のクラクション。
人混みの何人もの折り重なった喋り声。
並び立つ店舗から流れる宣伝や呼び込みの放送。
都会というものは騒々しさに囲まれている。
この中で1人ぼーっと動かずに立っていると、自分以外の時間がどんどん進んていて、1人だけ時間の流れに置き去りにされたような感覚になる。
まるでそんな大都会の喧騒から逃げるかのように、ひとつの喫茶店が、表通りから離れた細い道をさらに一本入った路地裏の、一番奥の場所にあった。
こんな場所に店を構えても客などそうそう来るはずもない。
「どう見ても商売する気ないだろう」
と思わず突っ込んでしまいたくなるようなその店の入り口の横に置かれている椅子の上には、木の板が立て掛けられており、そこに店の名前が書かれていた。
【喫茶ナマケモノ】
ちゅんちゅんと小鳥が囀るのと同じくして
「カラン」
とドアが開き、店の中から男が出てきた。
この店、喫茶ナマケモノの主である彼は、よれたサロンを腰に巻き、白いワイシャツのボタンを胸元まで開き、ボサボサの頭を掻きながら、まだ眠いのか目を瞑ったまま
「くぁっ。」
と大きなあくびをした。
まさにナマケモノの名に相応しい。
二度目のあくびをしながら、おもむろに胸のポケットからハイライトを取り出す。
一本を口に咥えると、眠い目を擦りながら「キンッ」と乾いた金属音をたてたzippoで火を付けた。
煙草を一口吸い、口から吐き出された紫煙の間から覗く薄っすらと開かれた彼の瞳は、
鮮やか過ぎる程のターコイズブルーだった。