アイロニー〝地球外のファンタジー世界の物語〟
「―――、おい!見ろよクロト!! 地球があんなに遠くに見えるぜ!!」
本日は俺が通う高校の行事の中で、おそらく最大のものであろう宇宙旅行だ。
現在、俺たち二年生総勢約600人を乗せた宇宙船は大気圏を抜け飛び続け、地球から遥か離れた場所を飛んでいた。
「見てるよ、耳元で叫ぶなよ。せっかくの景観が台無しだろ?」
そういって隣にいる親友・西野浩之を小突く。浩之は不満そうな顔で「ぼーっとしてるから起こしてやろ
うとしたのに・・・」とぼやいた。
「ぼーっとしてないよ、あまりの感動で声も出なかったのさ」
と笑いながら返す。
しかし、軽い調子で言ったが、実際のところ俺の感じているこの気持ちは言葉で表せるものではなかった。
地球とはこんなに綺麗なものだったのか。
世界とはここまで広いものだったのか。
俺は自分がどれだけ小さな世界で生きてきたのか実感した。
窓の外には無数の小惑星とひたすら蒼く染まる惑星。
その表面では今頃、たくさんの人々が普段どおりの生活を営んでいるのだろう。
地上にいる彼らにとってはそこが世界の全てであろうが、外から見るとその世界はあまりにも小さいのである。
「でも世界がこれだけ広いなら、運命の相手を探すのにも時間がかかりそうだな・・・、早く恋愛したいもんだぜ」
浩之はそういってぼへーっとため息をついた。こいつは・・・。
「まあいい・・・、てかそろそろ昼飯の時間じゃないか?」
「ん、そういえばそうだな。ちょっと早いけど先に食堂行っとくか?」
そう言って歩き出そうとした瞬間、
巨大な爆発音と熱風が俺たちを襲った。
「うわっ!?」
何がおこったのか理解する暇もないうちに、急速に機体が傾いていく。
そして、ランプが赤く染まり緊急放送が流れ始める。
「―――、ああ、糞!!なんだこいつらは!? どこから進入しやがった!?!?」
運転席のほうから、艦長が乗客席にまでもれるほどの大声で叫んでいるのが聞こえる。
「どうなってんだ!? 何がおこった!?」
浩之が座席に必死にしがみつきながら叫ぶ。
俺はあまりのことで気が動転して動けずにいた。
機内は騒然としていた。泣き出すものもいれば暴れだすものもいた。
「!?おい、クロト、窓の外みろ!!」
浩之が叫んだので、俺は窓の外を見た。
「・・・!?機体が速度を上げている・・・。しかし、なんだこのスピードは・・・?」
窓の外では景色がめまぐるしく移っていく。
先ほどまでは遠くにぽつんと見えた地球ももうすでに見えなくなっている。
「この機体は観光用だからそんなにスピードはでないはずだろ!?なんだってんだよ!!」
浩之が金切り声を上げた。
その瞬間、もう一度爆発音が聞こえたかと思うと
我らを乗せた宇宙船は
一番近くにある惑星へと飛び込んでいった。
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