【小説技術】140字小説の冒頭技法② ~文体による情報圧縮~
しかし毎度毎度、140字小説の何が難しいって、「これは何に関する物語なのか」を最速で読者に把握してもらうのが難しい。
そのために、まずは簡略化。余計な情報は削いで、誤読を避ける。
だけどそれだけでは単純な物語になってしまう。だから情報の「圧縮」をどこかでしなくてはならない。
圧縮の技法はいくつかあるけど。その中でも割と特殊なのが文体模写。文体そのもので物語の状況を伝える手法だ。
例えば
《例》
■問、このような文体の場合に読者は何の文章を読んでいると感じるだろうか。答えよ。
■答、テストみたいだと感じる。
みたいなね。
他にも「昔々あるところに」で物語を始めたとしよう。
すると、そこには昔話を語るお爺さんと、その話を聞く孫が、囲炉裏を囲んでいる。みたいな物語をしている「場」まで、文体だけで伝えることができるようになる。
こうなると同じ三人称でも、単なる記録で主観の入らない「神の視点」とは違う。
語る者がいて、その語り手の主観があり、聞き手がいて、彼らのいる「場」がある。
そこまで文体だけで作ることができる。むしろ、そうした「場」まで作ってこその三人称なのだとボクは思うのだ。
まあ、そんな難しいことまで考えなくても、少し口調を変えるだけでも違ってくる。
「ご主人様、お帰りなさいませ~」ならメイドカフェになる。
ハードボイルド風にすれば探偵事務所になる。
語尾を「にゃん」にすれば、語り手は猫になる。
140字小説はともかく文字数が限られている。けど、そうした語り口調によって、文字数を割くことなく「語り手の事情説明」が暗にできる。
だからパスティーシュ、いざという時には面白い技法だよ。
もちろん普通の小説描写でも、文体に意味を持たせることで、多義性を持たせることができるだろう。
これを突き詰めると「視点とは何か」にまで到達する。単純そうで、実は高度な技法だ。
皆もいろいろ試してみよう。




