第40話 フェリシアは甘えたい
「ウチは4日後に子供達の家に行くニャ。そこからは基本的にほぼ毎日通うことになる。ティニーさんはそれに同行してほしいんだニャ。もちろん片付けてほしい書類とか仕事があるニャから、毎日同行してほしいとはいわない。それでも、できるだけ一緒に行くんだニャ」
「わかりました。であれば私用の馬を手配しないといけませんね」
「そうニャね。それはお願いニャ。ウチは今まで書類仕事をほとんどやったことがないニャから、手配の仕方はわからないんだニャ」
「大丈夫です。私はそれをサポートするためにここにいるのですから」
「頼りにしてるニャ」
そういってリーリャは椅子から立ち上がると、同じく立ち上がったティニーと固く握手をした。今からこの2人は子供達を育てる仲間だ。共通の目標に向かって切磋琢磨するパートナーだ。
リーリャとフィリーの関係とは違う。そういう関係ではない、ビジネス上のパートナーで、2人が見ている未来は等しい。
子供達を立派に育て上げること。その目標を見失わず、進んでいきたいものだ。
「リーリャ、ティターニャはどう? 優秀でしょ」
「そうニャね。感情があまり出ないのは難しいニャけど、話し方とか性格は割と適当……?」
「そうなのよ。リーリャにはそういう人の方が合ってるかなって思って」
「さすがはフィリーにゃ。よくわかってる」
本日の仕事を終え、寝室に集まったフィリーとリーリャは、ベッドの上に腰を掛けるとだらだらとくつろいでいた。
ティニーの机を設置し諸々の調整が終わった後、リーリャとティニーは仕事に取りかかった。まずどのような教材が必要なのかを話し合い、ひとまず仮で必要なものをあげた。そしてそれが屋敷にあるかどうかの確認をして、あるものは仮で確保。ないものは後日注文という形を取ることにした。
明日は本格的に今後の教育方針とスケジュールを決めていく。それが確定した後、屋敷になかった分の教材を注文していく。
「ティターニャは子供達のところに連れて行くのよね?」
「そうニャね。エルを秘書にさせる方針で計画を進めているんだニャ」
「へぇ、それは私の秘書?」
「そうニャね。フィリーが良ければだけれど……」
秘書というのは主人に最も身近な役職の一つで、仕事ができることに加えて、性格が合っているか、趣味があっているかと言った情報も大事な選択ポイントとなる。
であるからして、エルを秘書として育てたところで、実際にフィリーの秘書になるかはわからないのだ。もしフィリーに合わなければ、エルビアは秘書ではなく文官としてフィリーを支えていくことになる。
「私の秘書にするのなら、一度あってみたいわね」
「……それはそうニャね。もう少し教育が進んだら屋敷に連れてくることにするニャ。フィリーも今は忙しくて顔は出せないでしょ?」
「そうねぇ。かなり疲れたわぁ。片付けても新しい仕事がすぐに入ってくるから、結局減らないの」
「それはお疲れニャ。ゆっくり休んでニャ」
「うん、ありがとう」
甘えるようにリーリャに抱きついてくるフィリーの背中を優しくさすり、彼女の額に唇を当てる。痕ができないように優しくすうと、フィリーはくすぐったそうに身をよじらせた。
「仕事なんかすべて放り捨てて、今すぐリーリャと2人で隠居したい……」
「ニャはは、そんなことしたら国は大混乱ニャね」
「できないのはわかってるんだけど、私には荷が重いよ」
「そうニャね。1人で背負うには重すぎるニャ。でも、フィリーにはウチが付いてるニャ。1人では重い物でも、2人で持てば大丈夫ニャ」
「うん……」
普段は堂々としているフィリーも、2人きりの時にはこうして弱いところを見せる。彼女はこの国の王女様だ。人に弱みを見せることはできない。
堂々として、そこにいること。それが彼女の仕事である。彼女がおびえてしまえば、国民まで不安になる。彼女がこうして不安を打ち明けられるのは、リーリャと2人でいるときだけだ。
だからこそ、フィリーはリーリャに依存してしまう。フィリーが重い荷物を下ろせるのは、フィリーが心から安心できるのは、フィリーが日常から離れて快楽に身を委ねられるのは、リーリャといるときだけ。
「ウチは絶対にフィリーを見捨てない。フィリーを苦しめる人がいるなら、片っ端から殺していくかもしれない。それをしなくても良くなるように、3人を完璧に育ててみせるニャ」
「ありがとう。でも無理をしないで。子供達の意見をよく聞くの。それでもし王宮では働きたくないというのであれば、子供達の意見を尊重するのよ。子供はこの国の未来なの」
「わかってるニャ。全員まとめて幸せにするニャ」




