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猫獣人の元聖女、辺境で孤児を鍛えます。  作者: べちてん


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第25話 リーリャと紋章

「そうそう、リビングからじゃ見えないんだけど、湖畔に教会を建てたのよ」

「それは、ウチのかニャ?」

「もちろん。大丈夫よ、しっかり教会に話も通しているし、リーリャがそこで聖女として仕事をするのは問題ないと返答があったわ」

「聖女として……?」

「ええ、リーリャは教会本部に所属しない野良の聖女ね。不思議な存在だわ」


 そのような存在が認められていいのかリーリャにはわからない。しかし、フィリーが笑顔でそう笑っているのだからしっかり手続きも経た上で大丈夫なのだろう、と理解はしている。

 例外的に認められているのか、黙認されているのか。それはわからないが、自分のための教会があるということは、聖職者としてうれしいものである。


「うれしいニャ。ウチは小さい頃から神に仕えるものとしての教育をされてきたニャから、聖女じゃなくニャっても、やっぱり……、神様は大事ニャから……」


 自身の気持ち、立場を示すのに適当な言葉が見当たらないリーリャは途切れ途切れでそう話す。そんなリーリャの肩にフィリーはそっと手を回して、ぎゅっと抱き寄せた。


「別にリーリャは神に見放された訳ではないわ。ただレミスト教から離れただけ。神様もきっとリーリャを見てくださっていて、きっとわかってくれているから。また今まで通り、今度はレミスト教ではなく、私の元で祈ればいいだけよ」

「ウチ、これから毎日祈るニャよ。フィリーの幸せと、フィリーの守りたいものを守ってください、って」

「ありがと。愛してるわ、リーリャ」


 そうリーリャの頬に唇をつけると、ほんのりとその場所が赤く染まった。






 夕食を取り、お風呂に入った2人は自室のソファーに腰を掛けると、月明かりに照らされた湖をぼーっと眺めている。つもりであったが、外が真っ暗なのに対して室内が明るいため窓は2人の姿を鮮明に反射して、2人は窓越しに目を合わせると、それがおかしくなって笑ってしまう。


「そうだ、これを渡そうと思っていたの」


 しばらく笑い合った後、フィリーは何かを思い出してソファーから立ち上がると、フィリーに寄りかかっていたためにそのまま倒れ込んでしまったリーリャを横目で見ながら、部屋の隅に置かれていた黒い箱に手を伸ばした。

 大事そうにそれを抱きかかえてまたリーリャの元へ戻ってくると、そのままリーリャに差し出した。


「何ニャこれ?」

「開けてみて」


 持ってみると適度な重量感はあるものの、フィリーでも簡単に持ち上げられるようなものであるため、そこまで重さがあるわけではない。それをローテーブルにのせてパッチン錠を2つ開ける。

 2つの間にあった鍵はすでに解錠されていて、2つのパッチン錠を開けるだけで容易に開くことのできるその中には、1つの短剣が入っていた。

 その短剣の柄には青い小さな魔石が埋め込まれ、一般的な強化用のものに加え、木で作られたその柄の劣化を防ぐ魔法が込められているのではと思われた。

 鞘から剣身を引き抜くと、白く輝く短い剣身が二人を反射している。それに少し触れてみると、細いながらもしっかりとした堅さがあり、それでいて重量感もしっかりとある上質な素材を使っていることがわかった。魔石から供給されていると思しき微弱な魔力は、剣身全体に強化魔法を掛けている。


「あれ、この紋章は……?」


 魔石が付いている鞘の裏面に、小さなブルーデージーに交わるように百合の花が添えられている紋章が描かれていた。ブルーデージーが何を指すかはすぐにわかる。第一王女であるフェリシアの紋章は、このブルーデージーの花をかたどったものだ。

 そして、それに交わる百合の花。これはリーリャを示している。


「これはあなたの紋章よ、リーリャ・フェリーベン騎士爵」

「リーリャ・フェリーベン……」

「リーリャ、これからあなたは私の騎士になるの。正式に私を守る騎士になる。あなたにフェリーベンの姓を送ります。私の愛するあなたが、すべての人々に愛されますように」


 リーリャをぎゅっと抱きしめるフィリーの背中に、リーリャはそっと手を当てる。フェリーベンなんていう家名がなくても、リーリャはフィリーを守り続けるだろう。しかし、こうして自らの名前に彼女の名前が刻まれることは、まるで彼女に包み込まれているような、彼女に愛されている証しのような気持ちになる。

 リーリャはもう、フェリシアの物だ。


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