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【シリーズ完結】転生公爵令嬢は推しに幸せになってもらいたい!〜推しの恋愛フラグ折ってしまったので代わりに私が幸せにします〜  作者: 雨の日


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2/2

おまけの話、従兄弟の色恋なんて鳥肌ものですわ

この話は、推し様を救いたい!〜推しの親友闇落ち回避のはずが何故か執着されてます〜のカップルが出てくるので、そちらを読んでもらうと、より楽しめると思います。


読まなくても大丈夫…だといいな。



「あら、ジン。久しぶりね。カイト様から聞いていてよ?意中の女性がいるのでしょう?」


トントン拍子にカイトとの婚約が決まり、帰国する前に1度従兄弟宅を訪れたアイリスは出かけようとしていたジンに声をかけた。


「はぁ?なんでお前にそんな話しなきゃなんねーの?」

アイリスと同じ薄紫の瞳が、面倒くさそうに細められる。

相変わらずのクソガキムーヴを華麗にスルーし、アイリスは続けた。

「可愛らしい方だとカイト様が言っていたわよ?」

無視して出ていこうとするジンは、アイリスの言葉に足を止めた。


「……カイトが?ラミを可愛いって…?」 

「ミラ様とおっしゃるの?わたくしも1度会ってみたいわ。そうだ!今度カイト様も含めて4人で…」 

「ハッ!ぜってー嫌だね」


アイリスの言葉を遮って吐き捨てるように言うと、ジンは部屋を出てバタンとドアを閉めた。




「ラミ・レミルバ。レミルバ子爵家の三女。容姿も成績も特出することのない平凡な令嬢…ね」


コーネリス公爵家自慢の諜報員を使いジンの想い人を調べさせた報告書を読み、アイリスは呟いた。

調べるまでもない、普通の少女だった。

完全に諜報員の無駄遣いである。


隠されると知りたくなる。

アイリスはそういう人種だった。


「それにしても意外だわ。ジンが思いを寄せる女性ですもの。何か面白い情報が出るかと思ったのに」

「ジンの想い人…あぁ、そうだ。ラミさん、って名前だったね」


報告書をサラリと見てカイトが言った。


「ジンに聞けば良かったのに」

「聞いても教えてくれないんですわ!今度1度お会いしたいわって言っても、嫌だね!ですって!」

「そういえば、僕がラミさんと話すのも嫌がるなぁ…ジンって結構ヤキモチ妬きなのかなぁ?」

「ヤキモチ妬くくらい夢中な女性なのね!ますます気になりますわ!」


すくっと立ち上がり、アイリスは宣言する。

「こうなれば実力行使のみ!わたくし、学園へ侵入してラミさんって方を盗み見ますわ!」

「普通に入っていいんじゃないかな?君は僕の婚約者なんだし」

「それじゃ面白くありませんもの!カイト様も一緒に盗み見ましょう!」

「えっ、僕もかい?仕方ないなぁ」

 

なんだか横領事件を追いかけていた時みたいだね、と困った様に笑うカイトに、アイリスは胸キュンしながら「ありがとうございます!」と抱きついた。





「どの方がラミ様ですの…?」

「うーん、あの茶色い髪の人かな?いや、違うかなぁ?あんな感じの髪色の女性なんだけど」 

「ありふれた色合いなのね。もっとピンクとかなら分かりやすいのに、不親切ですわね」

「ピンク髪の人は流石にいないんじゃないかな」

「アンジェラ様は赤毛ですわよ?」

「そうだねぇ。あっ、バードは白銀の髪だよね?2人の子供は間をとってピンクになるかも!」

「そんな絵の具みたいな法則なんですの…?」

 



「おい、何してんだお前ら。イチャイチャしてんじゃねーよ」


ヒソヒソと物陰で話していたのに、いつの間にか後ろにジンが呆れた様に立っていた。



「あら、ごきげんようジン」

佇まいを正し、向き直るアイリスにジンは訝しげな目線を向ける。

「アイリス…学園になんの用だ?」

「なんの用って…帰国する前に隣国の学園の雰囲気を味わいに…?」

「嘘つけ、コソコソ影に隠れてんだから、何か後ろめたい事しようとしてんだろ?」

「くっ!」


流石従兄弟である。思考回路はお見通しなのだ。


「なぁ、ジン。ラミさんはどこだ?」

誤魔化すのが無理だと悟ったカイトが、早々にジンに話を切り出す。

途端にジンの眉間のシワが深くなる。


「……ラミになんの用だよ」


低い声でジンがカイトを睨みつける。

ピリピリと張り詰めた空気は、1人の少女の声で霧散した。


「あっ!いたー!先輩探しましたよ〜」


アイリスの後ろから聞こえた声に、ジンの眉間のシワが浅くなる。


「ラミ」


低く、甘い声。アイリスは聞いたことのない従兄弟の声に、背中がゾワッと総毛立った。


「ラミ嬢、こんにちわ」

カイトが挨拶すると、そこにカイトが居たことに気づいたラミが

「あっ、カイト先輩!こんにちわ!お久しぶりです!」

と顔を赤らめて返事した。

その様子を見て、ジンは面白くなさそうにラミの肩を抱き寄せる。


(なるほど。そういう事ね) 


どうやらジンの想い人は、カイトに夢中な様子だ。 

だから、カイトに関係する人間とラミを関わらせたくなかったのだろう。


なんて小さい男なのだ。アイリスはそう思った。


クイクイ、とカイトの袖を引くとカイトが頷いて言った。

「ラミ嬢、紹介するよ。こちら、僕の婚約者のアイリス嬢だ」

「アイリス・コーネリスと申します。」


スッと美しいカーテシーを披露する。カイトのパートナーになるには、わたくしくらい高貴で完璧でなければならないとアピールする為だ。


小さい女、とボソッとジンが言った気がしたが、小さい男の言うことはアイリスの心には響かないのだ。


「あっ、ラミ・レミルバです」

ラミもアイリスに習いカーテシーで応じようとしていたが、ジンにガッチリ肩をホールドされペコリト頭を下げるだけに留めていた。


そうして顔を上げたラミが、カイトとアイリスを交互に見つめ、瞳を潤ませホゥと息を吐く。



その時、アイリスは直感した。

ラミは“こちら側”だと。



つまり、カイトを“推し”とし、推しの幸せが自分の幸せと定義する人種である。

遠くから推しの幸せを見つめるラミと、推しを全力で幸せにするアイリス。

形は違えど、志は同じ。


ジンは見当違いな嫉妬をしているのだな、とアイリスは思った。

ラミがカイトに向ける感情は、恋愛ではなく、敬愛や崇拝に近い。

何も、牽制する必要はないだろうに…。

先程の完璧なカーテシーという牽制を棚に上げ、アイリスはそう結論づけた。


「ラミさん。1度お会いしたいと思っておりましたのよ」

アイリスが言うと、ラミは首を傾げた。

「おい、行くぞラミ」

アイリスの言葉を無視して、ジンはラミを連れて行こうとする。

「えっ、でもアイリス様が…」

「そうだよジン。僕達も久しぶりに話そうじゃないか」

「今から昼めし食うんだよ」

「あら、じゃあ4人で食べましょう?ね?」


アイリスがラミに尋ねると「もちろん!」と元気な返事と「チッ」という小さい男の舌打ちが聞こえた。





アイリスは後悔していた。

4人でランチを…と庭の1角にあるテーブルに座ったが、ランチボックスを持参していたラミ達と違い、手ぶらだったアイリスとカイト。

カイトが購買で2人分のランチボックスを買いに行っている間、この空間は砂糖と蜂蜜をメイプルシロップで煮詰めた様な甘い空気に満たされていた。



「これ、俺嫌いだからラミ食べろよ」

「もう、何子供みたいな事言ってるんですか!好き嫌いしないで黙って食べなさい」

「じゃあ、ラミが食べさせて。それなら食べる」

あ〜ん、と口を開けるジンに、仕方ないなぁ〜とラミが野菜を食べさせる。

「おっ、これラミ好きだろ?1つやろうか?」

「えっ、いいんですか!やった〜」

あ〜ん、と当たり前の様に口を開くラミにジンがヒョイとミートボールを食べさせる。



(わたくしは…一体なにを見せられていますの?)



確かに、お先にどうぞ。と言ったし、食べてくれても全然構わない。

それは本当に、全然、問題なかったのだ。


まさか、こんな光景を見せつけられるなんて思ってもいなかっただけで。


あのジンが。何歳になってもクソガキムーヴのあのジンが。

甲斐甲斐しく女の子に世話を焼いたり、甘えて食べさせろなんて言ったりしているのだ。



「お待たせー」と2人分のランチボックスを買ってきたカイトには大変申し訳なかったが、従兄弟カップルのゲロ甘い空気に胃もたれを起こしたアイリスの食は、全く進まなかったのであった。





「わたくし、反省いたしましたわ」

2人と別れ、家路に着くアイリスはポツリと呟いた。

「何がだい?」

カイトの問いに、ふぅ…と息を吐く。

「従兄弟の色恋なんて、首を突っ込むものじゃないって教訓を得ましたの。見てこの腕、鳥肌が止まりませんの」

そう言って白く美しい肌を見せる。傷一つなく滑らかな肌が、総毛立っていた。

「そうか、2人はいつもあんな感じだけれど、血縁から見れば、そうなのかもしれないね」


いつも…あんな感じですって…?

あのゲロ甘空気に、カイトは胃もたれを起こさないのかしら…?


そう問うと

「はじめて2人を見かけた時から、ジンがラミ嬢に後から抱きつく状態しか見たことなかったから…」

と答えた。


「うっ、後ろから抱きつく!?なんてハレンチな!!」

思わずアイリスは叫び、収まっていた胃のムカつきがぶり返す勢いだった。


「たぶんさ、ジンは自分の気持ちの伝え方がストレートすぎるんだよ。ラミさんくらいじゃないか、あの感じ受け入れられるの」

「そう…そうね。お似合いの2人ですわね…」


アイリスはそう答えるしかなかった。


どっと、謎の疲労感が体を襲う。

今夜はすぐ眠りに落ちそうだが、多分悪夢を見るんじゃないかとアイリスは思った。




最後までお読みいただきありがとうございます。


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