9.結果発表
次の日、教室に着くとクラスメイト数人に話しかけられた。
「ね、ねえ。2人とももう大丈夫なの…?」
「大丈夫って、なにが?」
「いや、ほら。昨日の夜、ものすごい喧嘩してたでしょ?私、思わずマイさんを呼んで見に行ってもらったんだけど、あの人、「んー、多分もう大丈夫だよ~。…多分ね。」って物凄く不安になる言い方で帰っていったから心配で…。」
ああ、なるほど。たった数十分の仲だが、確かにマイなら言いそうなセリフだなと思ってしまう。あれ以降、僕らはもう喧嘩をしていない。真夜中に騒いでしまった謝罪もしつつ、もう大丈夫という旨を伝えた。その話を聞いて、周りに群がっていた女生徒たちは安心そうな表情を浮かべ、これでひと段落、と思いきやそのまま女生徒たちは僕ら二人に矢継ぎ早に質問を投げてくる。試験の出来について聞いてくるものやおよそ学院とは関係のないプライベートのことまで聞かれ始める。僕はそこそここういった類の相手は慣れているがシロナはどうだろうかと見てみると、あまりにも簡潔に、しかも答えられないことは「分からない」で一蹴しているため、案外うまく回避しているようだ。
「あなたたち、ホームルーム始めるわよ。席に座りなさい。」
そういって担任が教室に入ってきたのをきっかけに女生徒たちは足早に自分の席へと戻り、僕らはようやく解放された。
「さ、とりあえず1限目は授業じゃなくて昨日の順位発表と今日の通常授業について軽く触れるわよ。本格的な授業は2限目からだから肩の力抜いてなさい。まずはとりあえず全体発表するわよ。」
そう言い先生は黒板にばっ、と大きな紙を張り付ける。
紙には1位から14位までの順位、チームの全メンバー名、タイム、追加情報が書かれていた。追加情報、というのは僕とシロナが延々と言い合っていた救出をしたかどうかの備考欄だ。僕らの順位は
……6位だった。
全14チーム中6位。半分よりは上だが、良いとも言えない順位に表情が渋くなるのが分かる。
タイムは1位が1分58秒、救出あり。
2位が2分11秒、救出あり。
3位は2分46秒、救出なし。
とんで僕ら6位が4分48秒、救出あり。
最下位は10分24秒、救出あり。
全体で救出を行ったのは8チームのみ。順位はそれぞれ1位、2位、5位、6位、8位、10位、11位、14位。
正直言ってこれだけでは救出したことが良かったかどうかは分からない。だがやはり間違ってはいなかったと思う。1位と2位はタイムも異常に早いが、救出まで行っている。マイだって救出したと言っていた。…いや、というよりもよく見ると2位のチームに並んでいる名前に“マイ・メアリー”とあった。つまり、2位はマイのチームだったようだ。ほぼ同時にシロナもそれに気が付いたらしい。
「マイのチームとても早い。」
「喧嘩しかけたっていってたよな?」
「二手に分かれたとも言ってた。」
「ほぼ僕らと変わらないってことだよな?」
「そのはず……なぜ?」
試験での行動の順序は僕らとかなり近い動きをしていたらしい。しかし、タイムで見ると実に2分半ほど差がある。なぜだろうと2人で頭をひねってみるが全く分からなかった。
「…もういいかしら?後から廊下の掲示板に貼っておくから気になるなら後でじっくり見て頂戴。それよりも話の続きをするわよ。
まずはあなたたち、この表を見て、1位と2位のスピードが異常に早いことはわかると思うけれど、一応一般人と比べたら最下位でも充分早いとは言っておくわ。一般的な15歳の子供たちに今回と全く同じ条件でやらせた場合、軽く見積もっても30分以上かけても終わらないわ。それもそうよね。ステージはほとんど町一つ分。それのすべての建物が壊れかけているけれどゴールも倒れている人も屋内にある。まずそのリスクで一度もめるわ。さらに今回救出用の人形は成人男性とほぼ同じ体格でだいたい80㎏ぐらいの重さがあったの。…今回、8チーム全てのチームが意にも介さず運んだけれどね。そういうことも含めてあえて言うわ。最下位のチームも個々人の能力で考えたら決して無能ではない、ということよ。ま、あたりまえよね。ここは入ってからも地獄だけど入るまでも高難易度の入試テストを突破してきている人ばかりだからね。」
その先生の言葉に一部の生徒たちは納得のいかないような顔をしている。それもそうだろう。無能ではないとはいわれても、1位と最下位の差は8分以上もある。多少の運要素も絡むとはいえ、最下位が速かったとは言えないと思う人も多いだろう。そんなクラスの雰囲気を見て、先生は明らかに眉間に皺をつくっている。
「あのねぇ、分かったわ。一旦最下位のことは忘れなさい。そしてもう一度表を見なさい。この1位は異常だということはわかるかしら?このチーム、メンバーはたったふたり。しかも救出までこなしているのにも関わらず2分を切っている。正直言ってバケモノよ。教師陣でさえ騒然としてたぐらい。良い?今回の試験は1位が異常だったの。順位をつけておいてなんだけれど、あまり1位と比べないようにしなさい。ただ、これだけは忘れないで。あなたたちは今後、このチームに勝たないといけない。そう思って学院生活にはげみなさい。いいわね?」
そう言って試験についての話は締めくくられた。
そしてそのまま授業について説明され、1限目は終わった。この日にシロナとあることを約束した。
「次こそはうまくやろう」と。
9話を読んでくださりありがとうございます。
先生がものすごく喋る回でした。
そして腐っても鯛、ならぬ腐っても学院の生徒。最下位の子達だって優秀なんですよ。信じてください。




