6.最初の試験
ここからユウリsideで進みます。
「よし、全員いるわね?点呼は、まあいいでしょう。それじゃ、聞いての通り試験を始めるから、よーく聞いておいて。」
翌日。僕とシロナは前日伝えられた集合場所へ移動し、所定の時刻になると同時にうちの担任がそう切り出した。
「あらあら~。点呼しないのですか~?試験とはいえ初日なのですから点呼しておくべきでは~?」
するとB組の先生が口を挟む。言葉を遮られて担任のこめかみが僅かに引き攣っている。それを見てC組の先生が顔を顰める。
「…どちらでもいいがするならさっさとしろ。C組は全員いるぞ。」
「B組さんもいますね~。」
「あー、もう。面倒くさいわね。えーっと……Aもいるわ。」
「そうですか~。それならよかったです。はじめましょ~。」
……うちの担任が面倒くさがり説がかなり有力になってきたな。点呼と言ったのに、目で数を数えて終わらせてしまったようだ。B組とC組の担任もなかなか癖が強そうだが、3人とも教師らしくないように思う。
「…はあ、試験の説明をするわ。これからあなたたちはチームごとに順番にあの扉をくぐってもらって、その奥でとある情報を渡されます。」
「情報は〜一人一つずつ渡されます。でも~情報を教え合うことは~禁止なのです。読み上げたりとかは~めっ!なのですよ~。」
「試験の目的は情報のどれかに書いてある。…2人チームでも5人チームでも難易度は変わらんようにしてある。」
「まあつまり~、情報の密度、難易度が~人数によって違いますよーってことですね~。」
ところどころでB組の先生が話の続きを言ったり、補足説明をしたり自由にするせいでうちの担任が明らかに苛立っている。…分からなくもないがもう少し隠す努力をして欲しい。
「というわけだ。順番はどこからでもかまわん。準備ができたところから順番に行け。ただし、扉をくぐればその次の扉をくぐるまでお互いに会話ができなくなるような仕掛けを施してある。作戦を立てるなら今のうちだ。」
「今日は~初回なのでヒントもりもりですね~。」
「…私は悪くないわ。」
完全にいじけてしまった担任をよそにシロナが話しかけてくる。
「簡単な作戦をたてる。」
「作戦って言っても、現段階だと情報もなにもないよな?」
「だから今のうち。まず情報をもらったら、やるべきことを共有する。」
「あぁ、ダミーの可能性を考えて?」
「そう。私たちは2人。情報の難易度が高い可能性がある。やることを共有したあとはその時決める。」
「わかった。そのつもりでいる。」
それで話は終わったらしく、シロナがスタスタと扉に進んでいく。彼女はかなり感情が薄いタイプらしく、昨日の夜も特にこれといった会話がなかった。白い髪に白い瞳、白い肌に小柄で整った顔立ち。見た目は文句のつけどころが無いほどいいからか、無愛想さを強く感じる。
会話している短時間にすでに数チーム扉をくぐっていて、それに続くように僕らも扉を開けた。
「ここが会話できない部屋、かな?」
「……」
つい、声に出してしまったが、どうやら本当に会話できないらしい。…というよりも、会話ができないとかの話ではなかった。そもそも部屋の中に自分以外の人間がいない。先に入ったはずのシロナの姿は見当たらず、他生徒の気配も感じない。
ぐるっと一周部屋を回っても本当に何もなく、あるのは部屋の中央に机と紙がひとつだけ。紙には言われた通り、試験に関しての情報が書かれていた。
『氏名:ユウリ・コーガリー
あなたへ与えられる情報は以下の通りです。
①扉の向こうには今にも崩れそうな建物が複数立ち並んだ場所です。充分気をつけてください。
②建物のどこかに人が倒れており、見つけた場合は救出してください。
③相手の情報に一切の嘘は書かれていません。
④会場はかなり広く、試験開始と同時にタイムを測っています。忘れないでください。
入って来た扉とは反対の扉から出て、チームメンバーが揃うと試験が開始されます。ご検討をお祈りいたします。』
どうやら危険地帯からの対象の救出が目的らしい。しかも、シロナの情報に一切嘘は無いらしい。やはり2人だと簡単になってしまうのだろうか?と疑問を抱き、顔をあげる。すると先程までは壁だった場所に扉があった。ここで悩んでもシロナを待たせるだけなので僕は扉をくぐることにした。
6話を読んでいただきありがとうございます。
作者の心の声
シロナ視点で試験を書いたらあまりにも単調で分かりにくくなったので視点移動しました。
シロナより断然書きやすいですね、しばらくはユウリ目線でお楽しみください。




