4.転移魔道具
指定の時刻がやってきて、先ほどの案内役の3年生が訪ねてきた。
「はーいお待たせー。みんなお昼ご飯はちゃんと食べたかな?それじゃ、説明会場までは徒歩で行くからちゃんとついてきてね。」
歩き始めるとやはりというかなんというか、私とユウリが先頭になった。
ただ、きちんと並んでいる、というよりは同室ごとに固まって歩いている。
「そうだ、先輩。一つ質問良いですか?」
「お?なになに、何でも聞いてくれていいよ。」
「僕らの部屋が3人部屋だったんですが、全部屋3人部屋なんですか?」
移動中、ユウリが先ほどの疑問点を聞いた。
「あー、そうそう。そうなんだよ。ここでは結構起きがちなんだけど、移籍権の説明って受けたかな?それの関係で全部屋3人部屋なんだよねぇ。大は小を兼ねるってやつだね。あと、部屋数が足りなくならないのかとかもよく疑問に思われるんだけど、それに関しても問題なくて、部屋数を増やすだけなら魔法でパパっとできちゃうし、3年生にもなると人数が減りすぎて部屋余らせたりしてもはや1人部屋満喫してる子も多いんだよねぇ。」
結論、全部屋3人部屋だった。さっきの時間は完全に無駄な時間だったようだ。
「なるほど、人数に関係なく3人部屋なんですね。ありがとうございます。」
「いえいえ、みんな1回は疑問に思うことだよね。お、ついたよ。ここが今回の説明会場、もとい談話室だよ。」
そういって扉が開かれる。談話室の中はかなり広く、腕章の色を見るに2年生も数人いるように見える。他の1年生は既に到着していたようで私たちが案内された場所に座ると先ほどの寮長が話し出す。
「やあ諸君。先刻ぶりだね。部屋や食堂に行ってみてどうだっただろうか。まだまだ慣れないことも多いと思うが、少しずつ慣れていってくれ。さて、ではこの寮のルールについて簡単に説明しておこうと思う。
まず、大前提として、ルールを破ったものは反省文などのそれ相応の処罰が下される。それを念頭に置いて話を聞いてくれ。1つ、この寮には門限が存在する。基本的には門限は18時だ。外泊届や、その他正当な理由が認められた場合はこの限りではないがきちんと守るように。」
その他にも寮長は数点寮のルールや注意点を上げていく。
「それから最後に移籍権を行使した場合、クラス移動はないが寮の部屋は移動となる。人数によっては元からいるチームメンバーの一部の者にも部屋移動をしてもらう可能性があることだけ念頭に置いておいてくれ。
…ルール、注意点はこんなものだ。質問がなければ次は転移用魔道具の説明に移るぞ。」
寮長がさっと部屋を見まわし、続きを話し始める。
「よろしい。では今から転移用の魔道具を配布する。一人につき一つ、卒業するその時まで使うため、大事にするように。もし紛失でもしようものならチーム全体にペナルティが科される。気をつけたまえ。」
一人一人の手元にあの黄緑色の宝石が配られていく。
それを大事そうに受け取ったり、光にかざしてみたりと反応はさまざまで、私も宝石をじっと見つめていた。
「使い方は簡単だ。まず『転移起動』と言って魔道具を起動する。その後、向かいたい場所の名前を指定すれば学校内であればどこへでも瞬間移動できる優れものだ。ただし、それは学院外には転移することができない。麓の街に行くときは徒歩か、遠出するときは馬や列車を使っての移動となる。忘れないように。…魔道具の説明はこれで終わりだ。
最後に、物品調達に関してだが、先ほども触れた麓の街で買い揃えてくれ。街では制服で行くか、生徒証を持っていくと学生割引が使えたり、今後学内でもらえる金券を使うことができたりする。その他の金の稼ぎ方は私の管轄ではないので明日以降、各々の担任に聞いてくれ。説明はこれで全てだ。何か質問、疑問点等あるか?」
一瞬の沈黙の後、恐る恐ると言った様子で手が挙がる。
「そこの者、発言を許可する。」
「ありがとうございます。先ほど魔道具を紛失したらペナルティと仰っていましたが、もし試験などで意図せず故障、破壊などしたらどうなるでしょうか。」
確かに、そこに関しては触れられていなかったと思い直す。
「あぁ、その場合はペナルティこそ無いが、新しいものを作り直すまでの約1週間は魔道具なしで過ごしてもらう。もはやこの学院の広さから考えればそれがペナルティとも言えるな。無論、紛失した場合も同様に1週間魔道具なしだ。ただし、もしも紛失物が見つかった場合はどちらか1つは学院へ返してもらう。これで疑問は解消されたか?」
「ええ。丁寧にありがとうございました。」
「よし、ならば他に質問はないな?…ないならばこれで説明は終わりだ。何か連絡事項のあるものはいるか?」
寮長が2、3年生を見渡して尋ねると1人がスッと手を挙げた。
「ミル、いいぞ。」
「ありがとう。1年生全体に連絡です。明日、朝の8時に実習棟1の1階の準備室前に集合だそうです。先生曰く“1年生最初の試験”だそうで、特に必要なものはないけれど心の準備は万全にとのことです。魔道具で実習棟1に移動してください。魔道具で行けるのは転移室までです。そこからは準備室前まで徒歩で向かってください。以上です。」
最初の試験、と言われて少し室内がざわつく。耳を澄ませば早すぎ、などの意見が多いようだ。試験といってもこの段階で行う試験ならばそう難しくはないだろうという予想ではあるけど、ここは普通の学校とは違うため、油断することはできない。
「他にあるか?…ないな?ならばこれで解散とする。この後は各自部屋に戻るなり交流を深めるなり好きにしろ。ただし、夕食の時間と風呂の時間は決まっているから忘れないように。では私はこれで失礼する。」
そういうと寮長はまたしても目の前からフッといなくなってしまった。
4話を読んでいただきありがとうございます
作者の心の声
3年生というものはかっこいいものである。異論は認めん!スタイルで書いております。3年生かっこ可愛いな。な?(圧)




