外伝ストーリー2 ~私達の思い出~
剣姫
それは剣の腕が達人クラスの人たちの中で、女性しかなれない、とても珍しい職業。その姿はまるで剣を舞う美しき姫君のようであるため、そのような名前で呼ばれている。
アイリ「ねえ!聞いた、ルクス!私、剣姫だって!姫だって!!」
私はとにかく嬉しくて、彼に向かって叫ぶ。
ルクス「ああ、おめでとうアイリ……ってか、姫でそんなに喜ぶなよな」
アイリ「ちょ!それ、どういう意味よ!」
彼はそう言って私をからかってくるが、腕を広げて待ってくれている。
私は喜びながら、彼に抱きついた。
周りの人たちの視線がルクスに向けられるが、関係ない。
邪魔するなら私は容赦しない。
私はルクスから離れて、彼の後ろに回る。
アイリ「さあ!次はルクスよ!」
ルクス「うん、行ってくるよ!」
彼の背中を押して、神父のところに行かせる。
周りの声がうるさいが、終わったらすぐに帰ればいいだけだ。
神父は彼の神託を待ち、それを受け取ると、
神父「おお!これも珍しい!魔法戦士だ」
と言って喜んだ。
ルクス「え?」
アイリ「え?」
神父が神託した言葉を聞いて驚き、私たちも驚く。彼も、まさか自分が一番なりたかった職業になれて、戸惑っている。
魔法戦士。
それは名前の通り、魔法と戦士の両方を兼ね備えた珍しい職業。元々、魔法なら魔法を極め、戦士なら剣を極めるのが普通で、両方をやろうとする者は少ない。この村でも初めてのことだった。
ルクス「…………やった」
彼は小さな声でそう言い、神父の前から離れて私のところに来て抱きつく。
ルクス「やったよ!俺……なれたんだよ!」
アイリ「うん……うん……おめでとう!!」
私たちは泣きながら抱き合い、喜んだ。
魔法を学び、剣を覚え、その力で私の隣に立つ。
私たちが本気で喧嘩した後に、彼が決めたことだ。
私はそんなことしなくてもいいと言ったが、彼が頑なに変えなかったから仕方なく了承したが、これなら……。
アイリ「これでずっと一緒にいられるね!」
ルクス「ああ!ずっと一緒だ!」
私たちはこれで村を出られる。
私と彼が冒険者に相応しい職業になったら、村を出て二人で冒険者になろうと約束していた。
そして私は剣姫、彼は魔法戦士。冒険者として十分に活動できる職業だ。
もちろん親にも話しており、親たちも「こんな所よりもっといろんなところへ行き、いろいろなことを学んだほうがいい」と了承を得ている。
これでこの村ともおさらばできる。親と離れるのは悲しいが、里帰りもたまにはするだろうし、何よりこれで私たちの仲を引き裂こうとする人たちから離れることができる。
その嬉しさのあまり、私たちは人前だということを忘れ……
抱き合い、口づけを交わしていた。
そのせいで周りは阿鼻叫喚だ。中には剣を抜き、本気で殺そうとする馬鹿もいたが、ここは教会の前。そんな所で殺生なんて神父が許すはずもなく、その者たちはこっ酷く叱られていた。
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アイリとルクスの家の前
ルクス父「お!来た来た、どうだった?」
私たちの家の前では、私と彼の両親が私たちの帰りを待っていた。
彼の父は「お帰り」とも言わず、帰ってきて早々結果を聞いてきた。
ルクス母「ちょっと、あなたったらもう!」
アイリ父「まぁまぁ、いいじゃないですか。自分の子供がどんな職業になったか気になるじゃありませんか」
アイリ母「それはわかってるわよ? ただせめて“お帰り”くらいはってことよ」
親たちの気持ちもわかる。やはりわからないものは知りたくなるのが人間だ。だから私たちはすぐに話した。
アイリ「私は剣姫……で」
ルクス「俺は魔法戦士になったよ」
親たちはその言葉を聞いて驚いた。
それもそうだろう。剣姫も魔法戦士も、普通はそうそうなれるものではない。なのに自分の子供がそれに、しかも二人もなったのだ。驚かないほうがおかしい。
ルクス父「魔法戦士……そうか、なれたのか!」
ルクス「うん!」
ルクス父「よくやった! さすがは我が息子!」
ルクス母「必死に努力した結果ね。私も嬉しいわ」
彼はずっと魔法と剣、両方をサボらず続けていた。来る日も来る日も。きっと私とは違う苦しみがあったはず。それが報われたのだ。
アイリ父「お前もよく頑張ったな」
アイリ母「ええ、あなたは私たちの自慢の娘よ」
その言葉に私は涙が出た。決して今までの努力は無駄ではなかった。努力は必ず報われるわけではないが、今回は私も彼も報われたのだ。
ルクス父「さあ!中に入って!今日は祝わないとな!」
ルクス母「料理もしっかり作っておいたわ」
アイリ父「さあ、主役のお二人さん」
アイリ母「早く中に入りましょ♪」
そう言って家族は喜びながら、私の家に入って行った。どうやら今日は私の家で祝うらしい。
ルクス「さ、俺たちも行こう」
アイリ「ええ、そうね」
そう言って私は彼の手をさらに強く握って中に入る。
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祝いの品の中には酒も入っており、さすがに私たちもそれは飲めないので諦め、家族が酔い潰れた後、二人でこっそりと家を出て村の丘へ行く。
〜村の丘〜
家の中の光が灯のように綺麗に見えて、夜空を見上げると星空が綺麗に見える。
ザァァァァァァァァ……
風で草木が揺れて、とても心地よい音が聞こえる。
私たちはその景色を眺めながら、今日起きたことを改めて実感した。
アイリ「……本当になれたんだね、私たち」
ルクス「ああ、今でも驚いているよ」
アイリ「私もよ……」
そう言って私たちは、これからのことを話し始める。と言っても、もう答えは決まっているが。
ルクス「でも、これで本当に村を出られるんだな」
アイリ「……うん、長かったね」
そう言って私たちは感情に浸る。この村では良いことよりも悪いことの方が多かった。
彼はそれに耐えながら、私もできる限りのことはした。それでも彼よりはマシかもしれないが、私も本当に辛かった。
愛する人を馬鹿にして「そんな奴より俺の方がふさわしい」と近寄ってくる人たち。彼が可哀想だから別れろと言ってくる女ども。私自身も精神がおかしくなりそうだった。
いや、なりかけていた。もしあの時ルクスと話し合わなければ、私の心はとっくに壊れて、こんな未来にはならなかったと思う。
未来なんて分かりやしないけど、でもあの時の選択は何故か確信をもって言える。
理由は分からない、ただそう思っただけだ。
でももう、それも終わりだ。私たちは未来へと進む。隣にいる彼と一緒なら、どんなに辛くても笑っていられるだろう。
アイリ「ルクス」
ルクス「ん?」
アイリ「これからもずっとよろしくね」
ルクス「ああ、よろしくな」
そう言って私たちは向き合い、抱き合った。
昔は私と同じくらいの背だったのに、いつの間にか私を超えて、今では私の身長は彼の胸の辺りで止まっている。
昔はそれが嫌だったが、今はそうではない。彼の心臓の鼓動がとても心地よい。ずっと聞いていたいくらいだ。そして私はつま先を上げ、彼は顔を下げる。
風の音が私たちの世界を作ってくれているみたいで、とても嬉しい。
それから何度も何度も口づけを交わし、お互いの唾液を交換したりもした。交換するたびにもっともっと欲しくなり、気がついた時には私たちは呼吸すらも忘れていて、危うく窒息死するところだった。
ルクス「ぷ……あははは」
アイリ「ふ……ふふふ」
離れてお互いのことを見て笑う。
ルクス「……帰ろうか」
アイリ「……うん」
そうやって私たちは丘から離れて家へと向かう。
空を見上げると綺麗な流れ星が見え、私たちの関係がずっと続くことを切に願った。
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とりあえず、全部で5話くらいで終わりにする予定です。
補足は最終話に書きます。
(剣姫や魔法戦士など)




