第11話 リムルside 大切な者のために
リムル「ルクスさん………それ」
歳的には僕の方が一つ上だが、しかし僕は親しい人間には敬語を使ってしまう癖がある。それはこんな僕でも大切にしてくれる、その感謝の意味も込めている。
だからこそ僕は彼のその姿を見て一種の殺意を覚えた。
ルクス「ああ、これか?これは転んだんだ。」
明らかな嘘だ。服を着ればわからないところだけじゃないか。
アマギ「ルクス………私は貴方の師匠よ。気づけなかった悔しさはあるけど、今は正直に答えて。」
アカギ「ルクス………さん………お願......い」
義姉であり、ルクスの師匠であるアマギ。
妹で、ルクスに恋心を抱いている可愛い妹。
その2人もとても心配し、潤んだ目で見ていた。
ルクスは 「ああ」 とため息を吐き、この痣の理由を話し始めた。
ルクス「俺の村は実力主義の村、そして剣聖の子孫が住む村。それは知っているだろう?」
リムル「はい、知っていますよ。」
ルクス「そして俺はそんな村で唯一剣の才能がなかった。そのせいで村の皆からは俺の存在はよしとされていなかったんだ。」
それも知っている。その理由でルクスは村から飛び出し、魔物に襲われているところを義姉に助けてもらったんだ。
ルクス「そんな中でも、村長と家族、そしてアイリの両親は俺を守ってくれていたんだ。」
剣聖の子孫としての誇りを持つ村長。
家族を大切に思う父と母。
娘の婚約者を一人前にするために自分のペースで修行させてくれたアイリの両親。
彼らのおかげでルクスは今まで生きていけたのだ。
ルクス「でも、彼奴は………」
しかし、生きていけたけど。
ルクス「アイリは………」
幸せな人生とは。
ルクス「そんな俺を………」
言っていない。
ルクス「サンドバッグにしていたんだ。」
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~ルクスの過去~
アイリ「ほらルークースー、なんで他の女見てんの……よ!」ドゴッ
ルクス「ゴボッ!?」メキ……
アイリ「うわ!きったねー……何すんのよ!」ガンッ
ルクス「ウグッ」
小さい頃から、こうやってルクスはアイリのストレス発散道具として生きていた。
周りの大人達はアイリの表面上の姿しか見たことがなく、いくら言っても意味がなかった。それどころか。
アイリ「何、私の事チクってんの?調子に乗るんじゃないわよ!」ドガッバギッ
ルクス「っっっっっ!!」
アイリ「あんたは!私の!婚約者!なのよ!だから!私の!言う事を!聞けば!いいの!」ドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッドガッ
婚約者という言葉を理解していないのかわからないが、それを理由に色々やってきた。
子供とは残酷で後先考えずにやるため、彼の心は完全に閉ざしてしまい、何も考えなくなった。
そんな自分に気づき嫌になり、始めて自分の意思で逃げた、それが運命の出会いになるとも知らずに。
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~そして現在~
ルクス「それからも、続いているけど、みんなのおかげで俺は、心を取り戻したよ、ありがとう」
そう言ってアカギの頭を撫でる。
そんな姿を見てアカギは泣きながらルクスに抱きついた。
アカギ「ひどい........こんなの........ひどい!」
自分達も苦しんだのに、アカギは泣きながらルクスの事を心から心配していた。
妹がここまで懐くなんて、と少し嫉妬してしまうが、それでも。
リムル(彼はまだ救われていないんだ)。
自分達は家族のおかげで乗り越えられた、でもルクスにはそれがいない、いや守ってもらっているけど、それは守るだけ、救っていない。
まだ彼は剣聖の子孫という呪縛から、婚約者という呪いから救われていない。
リムルはアマギの方を見る。
アマギ「...........」コク
リムル「...........」コク
救おう、彼をそう心に誓った。
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リムル「とは言っても、具体的にどうすればいいんだ?」
ルクスが村に帰った後、リムルはアマギとアカギと共に作戦を考えていた。
アマギ「彼は剣の才能はないけど、そのかわり魔法の才能はあるわ、それも賢者に引けを取らないほどに」
そう言って少し微笑む、それ程までに彼の成長を楽しみにしているのだろう。
アカギ「でも.......村から......出ても......意味が.......ない」
アマギの話を要約すると、彼の魔法の才能を使って勇者パーティに入る、という事だ、確かにそうすればルクスは村からの呪縛から開放されるが、村に帰ってしまったら婚約者という呪いが残っている。
リムル「はあ、どうしたらいいんだよ」
そう言って頭を抱える..........そして
リムル「いや、1つの方法がある」
アマギ「何!?」ガタッ
アカギ「はよ!」ガタッ
ボソッと言ったのだが、すぐに返答を求められる。
リムル「近い近い近い近い、わかった、言う言うから!」
そう言って2人を椅子に座らせる。
リムル「これは、あまり使いたくなかった。」
この力は昔自分を苦しめた呪い。
リムル「他に策があればそれを使うけど、」
それを使えば、また苦しむかもしれない。
リムル「それがないならやるしかない。」
でも、
リムル「可愛い妹が苦しんでいる、大切な友達が苦しんでいる。」
もう2度と自分のせいで誰かを悲しませたくない、もう2度と大切な人を失いたくない!
リムル「僕は………”勇者”だ!」
そして覚悟を決める。
リムル「………僕の作戦は」
そう言って、常につけているコンタクトを外す。
リムル「この魅了の眼を使うこと。」
アマギ「………!?」
アカギ「にぃ……さん?」
やはり2人は効いていない、それに一安心し、説明する。
リムル「僕は勇者だ、じきに他の仲間も集まって魔王退治に行く、なら剣聖の村に行き、1人パーティに入れたいとでも言えばいい、理由としても、剣聖の子孫達の力も借りたいと言えばなんとでもなる。」
賢者、聖女の子孫も、と言われたらそれも加えればいい、ようは。
リムル「僕の魅了の眼でルクスの婚約者を魅了してルクスとの婚約を解消させる、僕の魅了の力ならそれが出来る。」
アマギ「でもそれじゃあ!貴方がルクスのように!」
そうルクスはアイリに暴力を振るわれている、ならアイリがリムルに乗り換えても同じ事が起こるのではないか?
そう不安になっているアマギにリムルは
リムル「それは心配ないよ、義姉さん。」
と、冷静に答える。
アマギ「なんでそんなに冷静に言えるの!?確証は!?」
リムル「確証は僕の過去が実現させている。」
そう言って、説明する。
リムル「僕の魅了にかかった人達はみんな、僕に対して過保護になる、………義母さんもそうだったし。」
つまり
リムル「僕の力でルクスの婚約者の暴力をなくす事ができる、それに一度かかった人間はコンタクトをつけてもその効力は続く。」
だんだんなくなったとしても、定期的にコンタクトを取って魅了させれば問題ない。
アカギ「にぃ......さん.......は、......それ...で.....いいの?」
たしかに作戦は使える、しかしそれだとリムルはどうなる?
アマギ「それじゃあ、貴方はどうなるのよ!貴方はそれでいいの!?」
リムル「ああ、別にいい」
アマギ「え?」
リムル「僕はこの力のせいで友達も出来なかった、でも初めて出来た友達なんだ、そんな彼を僕は見過ごせない」
例えそれで彼が怒っても反対してもやり遂げる、..........それに
リムル「僕の愛しく可愛いく美しい天使のような妹を幸せにしたい、それが、お兄ちゃんの役目ですから!」ドンッ
アマギ「やっぱ、それが本音か」
アカギ「いい......雰囲気.......台無し」
言葉だけならカッコいいが、顔や仕草等が、シスコン兄の域を超えている為、2人はドン引きしていた。
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続く




