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ネタバレミステリー ~真犯人は娘の仇~

 やっと帰り着いた。エアコンの暖房のスイッチを入れ、次いでポットのコンセントを差し込む。コートをベッドの上に放り、縒れたネクタイを外しにかかった時、電話が鳴った。スマホの時計を見る。もう午前一時を回ろうかという時間、非常識だ。すぐに出るのも癪で、しばらく様子をみることにした。


 汗臭いワイシャツのボタンを外しながらバスルームへと行き、靴下も一緒に洗濯機へと放り込む。


 私の夜毎の勤めを終えて部屋に戻れば、まだ電話が鳴っていた。


 スマホを手に取り、応答ボタンを押す。


 眠そうな声を作って、


「はい、ロスです」


「やあやあ僕だよ僕僕」


「詐欺なら間に合ってますよカターキさん」


「相変わらずノリが悪い」


「要件はなんですか。こんな遅くに」


「君こそ。えらく遅い帰宅じゃないか。いったいどこで何をしていたんだか。これでも何回も連絡したんだよ」


 それは私の知ったことじゃない。なんて文句の一つでも言おうものなら、余計に長引くだけである。


「帰りにちょっと一杯飲んでたもんで」


「ちょっと一杯で一時になるもんかい。独身は羨ましい限りだ」


「カターキさん」


「おっと失敬。口が過ぎたね」


 この人のペースに乗せられてはいけない。頭の中では分かっているのに、ついつい苛立ちが表層化して声に乗ってしまう。


「それで、何があったんですか」


 自然と声色は一段低く、語気に力がこもる。冷静に、平静に、と念仏のように唱え、眉間のしわをほぐすように指で揉んだ。


「さっき……つい一時間ほど前かな。ユーカイ団地で殺人事件が起こったんだ」


「殺人て、それなら警察の仕事でしょう。関係もないのに探偵がでしゃばるもんじゃありませんよ」


「言うじゃないか助手風情が。それに、関係ないとも言えないんだなこれが」


「というと?」


「殺害されたのが僕たちの依頼人だからさ」


「は?」


「だから、今回ばかりは僕らがでしゃばってもとやかく言われる(いわ)れはないわけ。ま、詳しいことは現場で教えるからさ、とりあえず家を出てくれる」


「今すぐ、ですか」


「もちろん」


「けど、その……」


「なに」


 心地よい機嫌で帰宅して、ひと眠りしようという段になってまた、出勤させられることに躊躇いなく頷けるほど社畜を極めた覚えはない。


 せめて、酔いと眠気覚ましの熱いコーヒーをゆっくり味わってからにしてほしい。


 耳を澄ませば、ポットがクツクツと音を立てて待っている。


「いえ、分かりました。はあ、行きますよ」


「じゃ、急いでねー」


 カターキさんは言うだけいって通話を切った。まったく、忌々(いまいま)しいことこの上ない。


 ワイシャツと靴下を新しいのに替えて、私は家を飛び出した。

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