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フリーセックス

「亮介ぜったいあんたのこと好きだって」


 部活終わりの帰り道、もう何度目かも分からないほど楽しそうに言う実生(みお)に「そんなわけないでしょ」と同じように返す。ここ一か月近い日数の定型文になりつつある会話に少しぞっとした。


「だってネットの片づけとか支柱とか楓のばっかり持とうとするし、ビブスの回収も一番早いじゃん」


「そう言われるとそうかもだけど、それで好きだっていうアピールは幼稚過ぎない?」


「男子なんてそんなもんでしょ」


 そんなもんと言う実生にどれほどの経験があるのか、彼氏がいるなんて聞いたことないし、まして中学生で彼氏なんていてもいなくても同じようなものだろうと私は思う。所詮大人っぽく見られたいだけのポーズで、おままごとを人生に組み込んでしまうという黒歴史だろうとも。


「で、もし告白されたらどうする?」


「断るよ別に好きじゃないし。まあそんなことにはならないと思うけど」


「えーもったいない」


「中学生で彼氏作っても仕方ないじゃん。それに受験もあるし」


「でも亮介だよ?」


「誰でも同じだよ」


 実生は男子に対してある種の諦観を見せているくせに、「お似合いだと思うんだけどなぁ」と他人には恋愛を押し付けてくる癖があった。 


 たしかにあまり多くはない付き合いのある男子の中でもそうだし、学校全体で見ても亮介はいいと思う。真面目だけど面白くて、カーストとか気にせず色んな人と仲が良くて、馬鹿ともよく絡むくせに学年二十番以内に入るくらいには頭がいい。さらには、中学生にしては理性的で、感情ではなく理屈で動こうとするタイプの人。少し冷たかったり怖いと感じることもあるけれど、基本的には優しいし、実はちょっと抜けているところもあったりして……。


「どうしたの?」


「ううんなんでもない」


「なになに、亮介のこと考えてちょっといいかもとか思っちゃった?」


 なぜこういうところは鋭いのか。私は誤魔化すように笑って、


「実生の方がお似合いだと思うよ」


「まさかぁ。うちにはもったいないし多分見向きもされてないよ」


 学校指定のカバンを背負い直した実生は、どこか少し寂しそうに見えた。


「そう? 私からすれば実生とばっかり話してるイメージあるんだけど」


「話しやすいってだけでしょ。同じクラスだし席近いし」


「好意のない相手にわざわざ話しかけなくない?」


「んーそうかなぁ。うちは話しかけにいくタイプだけど、逆に話しかけられないタイプもいるでしょ。あんたとか特に。亮介も多分、奥手な方だと思うんだよねぇ」


「よく見てるんだねー」


「人間観察が趣味だから」


「でたそれ謎すぎ」


 笑い合う私たちの横をバスが通りすぎていく。客を乗せて坂道を上っていくそれは、とても退屈そうに見えた。


「じゃ、また明日」


「うんまたね」


 手を振り別れて家路につく。


 十九時にしては明るい空の下で、街灯に照らされていないコンクリートは、混ぜ始めた原色の絵の具みたいに黒かった。

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