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キャロラインの遺物(3)

「ふぅ〜。やっと着いた〜」

到着した俺は、そのまま自然と幹に手を回していた。

顔をつけると、なぜか現代と同じ匂いがする。

「ああ、木だ〜」

サヤサヤと葉が擦れる心地いい音がする。時々風が強くなると、枝が大きく揺れてザザーッという音に変わる。

太古代には何にもなかったのに。

バクテリアを撒いて(俺は撒いてないけど)、八面体を壊して、そのあと何億年か、何十億年かはわかんないけど、こうやって木が生えるまでになったんだな。

「よし、リドレイに連絡しよう」

「お!賛成〜!」

これで宝箱がどこにあるかわかるぞ。

リドレイさんが教えてくれるからバッチリだ。

宝箱が近づいてきたと思うと、気分が盛り上がってウキウキしてきた。

「エースよりジャックへ。エースよりジャックへ。リドレイ俺だ」

「ハイハ〜イ!やっと着いたんだね。思ったより遅かったんじゃな〜い?」

「いやあ、ちょっといろいろあって・・」

アタルの顔に動物のフンが付いたのだ。ベッタリとな。カカカカカ」

せっかく親父が話しを濁してくれてるのに、宝珠の野郎が余計なひと言を放ちやがった。

「ちょっとぉ!?何言ってくれちゃってんだよ!?」

くそっ、くそっ、リドレイさんに何てことを!

やっべぇ超恥ずかしぃ〜・・

これ以上余計なこと言われてたまるか!!

「チクショッ!こんのぉ〜、ちょこまかと!」

捕まえようとしても、宝珠のヤツめ、高笑いしながらチョロチョロすばしっこく逃げやがる。

「ギャハハハハ!さっすがアタルちゃ〜ん。ナ〜イスハプニング!」

くっそぉ〜!!リドレイさんに笑われてんじゃねえか。だけどリドレイさんは、しばらく笑ったあと

「で、でもさ、ベタだけど運をゲットしたってトコじゃん!ユーはラッキーボーイだね。ククク」

とフォローしてくれた。

「え?えへへ。ありがとうございます」

「単純な奴め」

「うるさいっ」

「ハイハイ、そろそろ宝箱のありかを教えちゃうよぉ〜。調べたところ、地上絵の近くじゃなくて地上絵の上だったよ。う、え」

「そうか、良かった!地上絵の上だったら、辿ればいいから探しやすいな。安心したよ。で?肝心の地上絵は、どの方向にある?」

「そこだよ」

「そこって?」

「いま立ってるとこ」

「ここ???」

思わず周りを見回したけど、地上絵の欠片すら感じられない。

「そーそー。そのへん一帯が地上絵なんだよ」

「えぇぇ・・まいったな。酷い出来とはいっても、今回は酷過ぎないか?どれが地上絵か判別できないよ」

「な。だから俺はいつも、地上絵を消す必要はないっていってるんだよ。見つかってもわからない、というより見つからないからな」

ハァ〜と親父は目を覆って盛大に溜息をついた。

そんな親父とは対照的に、俺は、リドレイさんなら見つける道具を用意してくれてるはずだと楽観視していた。

「宝箱の具体的な場所は、どのあたりなんだ?」

「それが・・動いてるんだよ」

「動いてる!?」「え?」「なんと!」

3人揃って声を上げた。

「待て待て待て、なんで動いてるんだ?」

「わかんな〜い」

「はあ?」

「一応、スコープにプログラムしといたぴょんぴょん」

軽っ!相変わらず軽い人だな。

「今回の地上絵もなかなかに大っきいから、頑張ってちょーよ。じゃあ、ち・・」

「リ、リドレイさん!」

「あん?」

「この前はありがとうございました!フィルター使えました!」

「あ〜、あれね〜。お役に立ててマジ嬉Pよ。たださ、あのフィルターは水分を吸い込まないと使えないわけ」

「水?水が要るんですか?でもあの時は近くに水なんかなくても使えたけど・・」

「あの時は、水蒸気を利用したんだよ。何もないところから、水なんて出せっこないだろぉ?魔法じゃあるまいし」

ん?俺にとっては、どれも十分魔法なんだけど。

「でもでも、こめかみクリックで色んなものが・・」

「あ〜。ギュムノーには長老の脳みそリンが入ってるからね」

脳みそリン?

「それが転送装置みたいな役目をしてるってワケ。あくまで転送装置だから、例えばペットボトルの水なら送れるけど、水のみを送ることはできないってワケ。Got it?」

「そうだったんだ」

「イ・エース。まあ、あのフィルターには、他にも面白い細工しといたけどね。お楽しみに!でもさぁ、水の中以外でも使えるようにした方が良くない?」

「えっ?」

「だ〜か〜ら〜、極端な話、泥の中とか火の中とか真空とかさ〜、あ、泥は水分があるか。それは置いといて、そんなところでも使えた方がいいんじゃない?ってことだよ」

「でも、タコは水の中から出たら、墨なんて吐けないですよね?吐けるんですか?」

「じゃあキミはタコなの?」

「えっ・・・違います・・けど・・」

「だろぉ〜。タコはさ、陸上で墨を吐くことはないけど、キミは人間なわけ。煙に巻くって言葉があるじゃん。今の場所なら煙を出せばい〜んじゃない?」

「でも、もやだと、見えるようにするっていうか、あぶり出すような機能が使えないんです」

「ふうん。いずれにしても、現状で満足しないで、色々と試してみなよ。チャレンジしないと、進歩はないよ」

「・・わかりました」

「おそらく、おそらくその・・ププッ・・ストロー・・ククク・・は、特別な力があるよ。うん、間違いないと思う。本来、使用主ごと別の世界に行くことなんて有り得ないからね。キミにしか使えない武器なんだから、チャレンジもキミにしかできない。そゆこと。頑張ってね〜!チャオ」

リドレイさんの言葉が、何だかすごく刺さった。

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