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太古代(13)

ひたすら親父達の青い点(重なってるから1つに見えるけど)を目指した。

かなりのスピードで進めるから、絶えずスコープの縮尺を変える必要がある。

「消えんなよ〜。消えんじゃねぇぞ〜」

青い点があるということは、少なくとも1人はここに残っている証だ。

置いていかれるはずはないけど、わかんないもんな。

あと2kmくらいのところまで来て、不意に点が消えた。

「えっ!?嘘だろ!?」

光ってるのは、俺の点だけだ。

「え?嘘だろ?え?壊れた?」

縮尺を広げたり狭めたりしてみたけど、視界に映る青い点は俺の分だけだ。

「嘘嘘嘘嘘!マジで!?俺のこと置いてくのかよ!?」

こんなところに置き去りなんて、有り得ない!

「親父!親父!置いてくなよ!!親父ーーっ!!」

思いっきり叫ぶと、耳元で

「そんな大声で怒鳴らなくても聞こえてるよ。どうした?」

という親父の声が聞こえた。

「なんで!?なんで置いてくんだよ!?」

「お前、行きたくないって言ってたじゃないか」

「そりゃあ行きたくねぇよ!当たり前だろ!だからって、置いてくなんてひでぇじゃねぇか!!」

「あん?置いてく?」

「そうだよっ!こっちは青い点が消えたから、ちゃんとわかんだよっ!」

「青い点?」

「急に無くなったんだよ!どこ行ったんだよ!こんなとこで、どうやって生きてくんだよ!!」

「落ち着けよ。さっきから、言ってる意味がわかんないぞ」

「こっちはわかってんだよ!青い点が消えたんだぞ!!」

「・・・・・」

「おい!なんとか言えよ!!」

「はは〜ん。リドレイスコープだな?」

「そうだよっ!俺はタロでもジロでもねぇぞ!」

「・・・そこは何言ってるかわかんないけど、あれだな、スコープから青い点が消えたから、俺と藍善さんが行っちまったと思ったんだろう?」

「い、行ってないの?」

「ああ。シャットダウンしただけだよ」

「え?スイッチ切っただけ?」

置いてかれたと思ったから、すっかり拍子抜けした。

「そんなもんだ。同じ所で待ってるから、早く来い。遅くなるようなら、本当に置いていくぞ」

「すぐ行く!」

慌てて、さっき目指してた方向に向かった。


「やっと来たか」

「やっと来たかじゃねぇよ!マジで焦らせんなよ!」

「遅いぞ。待ちくたびれたわ」

「す、い、ま、せ、ん、ね!」

くっそ〜〜〜!!!自分が追っかけてきたくせに!!!

「藍善さんと話してね、今回の任務の説明をしとこうと思うんだ」

「まあ座れ」

「えぇ?いいよ、行かねえから」

「まあ、そう言うな。今回の任務が緊急っていうのには、理由があるんだよ」

「何の理由だよ。過去に行って取ってくりゃ存在しなくなるんだから、別に急がなくてもいいじゃん」

「普通ならな。今回のは、そうはいかんのだ」

伯父さんの言葉に同意するように、親父が頷いた。

「キャロラインの遺物は、ここまでの歴史に存在してはいけない物なんだよ。既に未来が変えられてしまっているんだ。だから急いで軌道修正する必要がある」

「なんなんだよ。キャロラインの異物って。何か混入でもしたのかよ」

「・・・イブツって、遺産の『遺』に品物の『物』で遺物な」

「胃酸の『胃』?胃袋じゃなくて胃物って言うん?」

「・・・えーっと、遺留品の『遺』だ。遺物っていう言葉は知らないか?」

「そっちの『遺』か。聞いたことないな」

「そうか。遺物っていうのは、人が作った過去の遺産のことだよ。キャロラインは、人じゃあないんだけどな。だから問題なんだ」

「どこが?」

「今ある大陸はユーラシア、南北アメリカ、アフリカ、オーストラリア、南極の6つなんだが、2億5,000万年前はこれら全てが、パンゲアっていう1つの巨大な大陸だったんだよ。逆にいえば、パンゲア大陸が地殻変動で6つに分かれたってことだ。南極大陸がオーストラリア大陸から分裂したのが5,000万年前、氷床っていって、厚い氷で覆われたのが3,000万年前だ」

「その氷床っていうのは、できるまでに時間がかかるのか?」

「雪が積もっていくうちに、下の方の雪に圧力がかかって氷になるんだが、南極大陸の氷床は2,500mくらいの厚さがあるから、相当な時間がかかっている。つまり、オーストラリア大陸と分かれた頃には、すでに寒冷化が始まってるってことなんだ。そんな南極に地上絵があるってことは、5,000万年前には描かれたことになる。人類の祖先が誕生したのが30万年前だから、当然、人類が描いたものじゃない。どう考えてもおかしいだろう?」

「だったら、地上絵だって、消さないとまずいんじゃねぇの?」

「いや、地上絵は酷い出来栄えだから気づかれないだろう。問題は遺物の方なんだ」

「その遺物って何なんだよ。クイーンとかキングとかキャロラインって、わけわかんねぇ」

「キャロラインの遺物っていうのは、宝箱なんだよ。その時々で中身は変わるんだが、非常に重要な宝が入れてあるらしい」

「宝箱!?」

キラーン

「クイーンっていうのは、」

「わかってるよ。スパイだろ?」

「いや、ちょっと違うぞ。取られる側から言うとスパイだが、うちは取ってくる側だから諜報員だ」

「どっちでもいいよ。前に伯父さんが、クイーンから情報が来たって言ってたじゃん。これでも、ちゃんと話し聞いてるんだぜ」

「まあ、とりあえずクイーンはそんな感じだ。キングは、金星人の痕跡を隠すための隠密活動を行っている。つまり、さっきの指令は『クイーンからの連絡を受けて、南極で発見されたキャロラインの宝箱をキングがすぐに回収してきたが、中身が足りない。至急忘れた当時へ行って回収してこい』というわけだ」

「お宝回収?」

キランキラーン

「で?で?回収したお宝はどうなんの?」

「お宝っていうか、宝箱な。もちろん返すけど・・・お前、欲しいのか?」

コクコクコクコクと激しく頷いた。

「いくつかは貰えるだろうさ。なんなら全て貰えるやもしれんな」

キランキランキラーン

「よし!早く行って、さっさと見つけちゃおうゼ」

俺のやる気に火がつくと、意思を持っているかのようにボーボーと燃え出した。

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