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太古代(12)

「さあ、元の世界へ戻ろう」

「シャア!やっと帰れる!!」

親父と手を握ろうしたその時だった。

「ジョーカーよりエースへ。緊急事態発生、応答せよ。ジョーカーよりエースへ。応答せよ」

突然、ビカクさんの声がした。

不吉な予感。

「こちらエース。どうした?何があった?」

「南極でキャロラインの遺物が発見されちゃったの。クイーンから連絡を受けたキングが、すぐ回収してきたんだけど、キャロライン曰く、中身が足りないんだって」

「ええ〜。本当に足りないのか?」

「それがわかんないのよ」

「わかんない?」

「リドレイが調べてくれたんだけど、開封された形跡はないのよね」

「だったら・・」

「でも、絶対足りないって言ってるの。だから、過去に行って回収してくるしかないってわけ」

「どれくらい前に行けばいい?」

そう言いながら、親父が深い溜息をついた。

「5,500万年前。オーストラリア大陸と分かれる前ね」

「まったく。余計な手間をかけさせおって」

え?南極なんじゃないの?

言ってることがさっぱりわからない。なんだか伯父さんも呆れているみたいだ。

「シェルマの地上絵を描いた後、そのまま忘れたって言ってる」

「具体的な場所は?」

「地上絵の近く。残念ながら、あとはわかんないってサ」

「あちゃ〜・・」

親父が手で両目を覆っている。

「向こうに着いたら、想定される範囲をリドレイに訊いてちょうだい」

親父の様子を見るに、アイタタタな任務なんだろう。

断れ〜 断れ〜

親父をガン見しながら、両手でバツを作り、全身で不賛成の意を表明した。だがしかし。

「・・了解。すぐ向かうよ」

!!!

なんですと!?

びっくりして空いた口が塞がらない。

親父はそんな俺の方に向き直ると、申し訳なさそうに

「そういうわけだから。すまんな」

と言った。

「はぁ〜!?なんで?帰んじゃなかったのかよ。なに勝手に返事しちゃってんだよ!マジ信じらんねぇ」

「いやいや、本当にすまん!」

カッとなったものの、自分だけ帰れば良いことに気がついた。

「そうだよ、俺帰るわ。家帰って寝てるわ。それがダメなら、母さんや朝芽と一緒に固まってるわ」

「そんなこと言う・・・」

「こんっの大馬鹿者がぁぁぁーっ!!!」

げげっ!?嘘だろ!?

宝珠から火柱が上がってる!?

「何ふざけたこと言っとるんだ!この馬鹿者がっ!!」

「う、うわあぁぁぁ!」

「文句を言わずに行くと言えぇぇっ!!」

「嫌だ、行くもんかーー!!」

炎を噴き上げながら追いかけてくる宝珠から、ただひたすら全速力で逃げた。


時計がないから定かではないが、相当な時間、火柱から逃げ回った気がする。身体が疲れないから、意思を持って終わらせないと終わらないのだ。

「一体全体、何が気に食わんのだ!?危険もなく、父親も共にいるというのに。甘ったれるでないわ!」

「そんなこと言ったって、わけわかんねぇとこなんか、誰だって行きたくねぇに決まってんだろ!だいたい何なんだよ!キャロラインとか、クイーンとか!俺のモットーは、安心・安全・安定なんだっつーの!!」

突然、俺を追いかけていた火柱が消えて元の宝珠に戻ると、ツイっとどこかへ行ってしまった。親父のところへ行ったんだろう。それ以外の行き先はない。

「や、やっと鎮火したぁ〜」

ようやく追われなくなってホッとしたのも束の間、俺もまた、親父のところに行かなければ帰れないことに気がついた。

やべぇ。

親父と伯父さんの2人で任務行っちゃったら、帰るどころか俺だけ取り残されちゃうじゃん。

いや、可愛い息子を、こんな何にもないところ(ガチで何もない)に置いていくとは思えない。

でももしかして、後で迎えにくるつもりだったりする?

それって南極物語のタロとジロじゃん!

「待って・・待ってくれよ」

あんなに逃げたのに、結局追いかける羽目になるとは思いもしなかった。

「待てよ?どっちから来たんだっけ」

逃げ回るうちに、予想以上に遠くにきてしまっていて、親父がどこにいるのか、すっかりわからない。

宝珠は、既に見えなくなっている。

・・どうしよう。

早くしないと、置いていかれるかもしんない。

置いていかれることはない、とは思うけど、100%じゃないことが不安でしょうがない。

伯父さんは、俺のこと気が小さいって言ったけど、得体の知れない場所で、得体の知れない事象に巻き込まれているんだ。平気でいる方がおかしいだろう。

「親・・」

呼びかけてみようと思って、すんででやめた。

絶対、伯父さんに聞かれちゃうし。

う〜ん・・

ふむむむ・・

そうだ!いいこと思いついたぞ。

『リドレイ謹製八面体発生ブロック発見スコープ』(名前長えな)を使おう!たぶん、いけんじゃね?

シャキーンッ

さっそく装着してみると、青い点が1つ点灯している。

「よしよし!予想通りだ。俺がココだから、親父達は・・・」

ぶつぶつ言いながら見える範囲を広げていく。

「あ!いたいた!もう2人一緒にいるみたいだな。方向は・・あっちに行けばいいんだな。距離は・・直線で42.16km・・!?42.16km!?」

いつの間にか、そんなに遠くに来てたのか!

考えたら、ツーッと進めちゃうからあっという間なんだよな。ここまできたなら、いっそのこと42.195kmだったら面白かったのになぁ〜。

そんなしょーもないことを考えながら、親父たちの元へ走り出した。

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