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太古代(9)

えーっと、まず最初にフィルターの側を咥えて、息を吸うって言ってたよな。で、吐く時は口からストローを外す。

スゥ〜〜・・・


よし、ここで口を離す。

プハァ〜〜


もいっちょ。

スゥ〜〜・・・


ここで口を離す、っと。

プハァ〜〜


・・・・・9、10

「これで10回終わったぞ。でも・・」

いろんな角度から、ためつすがめつ眺めたけど、どこをどう見ても、ただのタピオカストローだ。

「なんにも変わってないけどなぁ?」

もう一回だけ吸ってみよう。

そしたら何か変化するかもしれない。


スゥ〜〜・・・


息を吐きながらストローを凝視した。

「やっぱ変わんねぇか」

リドレイさんを信用してないわけじゃない。

わけじゃないけど、なんだか「ホントかよ?」が拭えない。

だって、吸うだけだよ?

吸うだけで、なんでこのストローを使って水が溜まるわけ?見た目も全然変わんねぇし。

「あ〜もう!本当にちゃんとできんのかなぁ。あの人、バカ軽かったし」

頭をガシガシ掻いた。

まあとにかく、最後まで試さなくちゃな。

やってからじゃないと、文句も言えねぇし。

「次は、サークレアを作るんだよな」

丹田に意識を集中。

模擬火星でやったみたいに、玉を感じるんだ。

うん。これは簡単にできるようになったんだよな。

きっと、慣れれば親父みたいに、瞬時にできるようになるんだろう。

存在を意識できたら、練習でやったとおり玉を大きくするイメージ。大きく、丸く、俺を囲むように・・・。


パアァァ


「よしできた!次は、えーっと、ストローをフィルター側から吹くんだっけ」

フィルターは白く結合しているから、すぐにわかる。

ストローを咥えると、ドキドキしながらそっと吹いてみた。


フゥ〜〜


ん〜?

何にも起こんないぞ?

ちょっと息を強くしてみるかぁ。


フゥゥ〜〜


え〜?なんだよ。やっぱダメじゃん。

もう一回吹いてダメなら、リドレイさんに訊いてみよう。

最後だから、思いっきり吹いてみるか。


フゥゥゥーーーーッッ


・・・・・ドシャアァァァァァァァァァァ


な、何じゃこりゃぁぁっ!?

あまりの驚きに目をかっ開いた。

タピオカストローから、猛烈な勢いで水が噴き出ている。水道の蛇口を捻ったどころではない。


ダムの放水やんー・・ー・・ー


ストローから噴き出た爆水は、瞬時に暴水に形を変えて、あっという間にサークレアを水で満たしていく。

明らかにストローから出てくる水量の常識を超えている。

俺はというと、驚きのあまり硬直してしまい、おかげで咥えたストローを口から離さずにいた。


ピーーーーーーーーーーーーーーーッ


どこかで警報音が鳴った気がして、我に返った。


満水になる!


慌てて口からストローを離すと、ピタリと放水が止んだ。

あまりの出来事にしばらく呆然としていた。

真っ白だった意識がだんだんハッキリとしてくると、自分のほっぺたをつねってみた。

痛い。

頭をブルブルルと思い切り振った。

いやいやいやいやいや。これは俺が望んだことだ。

そりゃあ、ストローからこんなに水が溢れるなんて思わなかったけど、思った通りサークレアを水で一杯にする事ができたんだから、オールオッケーだ。

ってことにしよう。

そう自分を納得させて、八面体を発見するため、サークレアの中でウツボから逃げることにした。

よーし!

ストローを咥えたところで、はたと手を止める。

待てよ・・・?

また水がジャンスカ出てきちゃったら・・・?

えー!どうしよう。フィルター外してみるか?

必死になってフィルターを引っ張ってみたけど、まったく取れる気配がない。

どうしよう。

どうしよう。どうしよう。

焦りだけが募っていく。

さっき、さっきは、フィルターがある方から吹いたら、水が、水が出たから、水が・・

不意に、本当にストンという感じで

何でこんなに焦ってんだ、俺?

と思い至った。

ストローは筒なんだから、心配なら反対側から吹けばいいんじゃね?

仮に水が出て満水になったって、サークレアを割りゃいいし、俺の方に水が放水されたって、ユニフォームで守られるはずだ。そもそも、ウツボから逃げる時は、ストローをそっと吹くんだから、あんな勢いで水が出るはずはない・・・と思う。

何だか対処法を考えたら、すっかり落ち着いた。

あとは、慌てなければ大丈夫だ。

さっそく、フィルターと反対側のストローを咥えると、余計なことは考えるな、無になれ無になれと唱えながら、ゆっくり息を吸い込んだ。

俺ははタコ。ウツボから煙幕で逃げるぞ〜

フゥ〜〜〜 ふわわわんわんわんわん


「やっっったー!!」

ストップINGの世界で思わずしゃがみ込んだ。

嬉しすぎるとしゃがむもんなのかな?所詮トロミの中だから、ゆっくりとしかしゃがめないわけだけど。

ひとしきり成功に喜んで立ち上がると、目の前には赤く輝く八面体がひしめいている。

「おぉ!さっきと同じ・・ぃ!?」

横から覗くと、遥か彼方までおびただしい数の赤いテラテラが広がっているのが見えた。

はあぁ〜・・この数を相手にするのか。

思わず脱力して溜息をついた。

しゃーない。ゲームだと思ってやるとしよう。

そう思わなきゃやってらんねぇよ。

よし、これはゲーム。これはゲーム。

そうだ!

達成記念アイテムを決めよう。

250万点でカラクリバーガー、500万点でトリプルチーズテリヤキのセット。もちろん出資者は親父だ!

ストローを握った手にグッと力を込めた。

「この八面体を退治して、500万点突破するぞー!」

それにしても、一体これはなんなんだろう。

もしかしたら、ストップINGの世界だと元の姿?なのかわかんないけど、そういうのが曝け出されちゃうとか。

いや違うな。煙幕が白いもやだった時、八面体は赤くなってなかった。つまり、元の姿になってなかったってことだ。あれを元の姿というのなら、だけど。

違いは煙幕の色、つまり空中で墨を吐いたか、水中で吐いたか、ってとこだな。

だとしたら、黒い墨を介してこっちの世界に来た場合、こっちにいる間は、隠れてる八面体が全部見えちゃうってこと?

何なの?ストップINGの世界って何なの?

「うっわ!コワ!!」

ダメだ。考えたら負ける気がする。

何に?と訊かれてもわかんないけど。

いろいろ考えるのはやめにして、とりあえず目の前の八面体を片付けることにした。

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