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太古代(7)

「えい!」

パカン・・サアッ


「とりゃ!」

パカン・・サアッ


「どっせい!!」

パカン・・サアッ


パカパカと、面白いくらい簡単にブロックを破壊できる。

ストローもバカにできないってことだな。

「アタル選手、10万点目に突入しました!しゃあ!」

パカン・・サアッ


すっかり慣れて、気づくといつの間にか水中に潜ってまで破壊している。

次のブロックを早く見つけたくてしょうがない。

こんなにウズウズするなんて、ほんのちょっと前には、考えられなかったことだ。

「よし!次はアレだ」

スコープで探すより先に、遠くにブロックを見つけた。

視力まで上がっているのかもしれない。

近づいて狙いを定めた時

スッ

前を何かが横切った気がした。

ん?なんだ?

キョロキョロしたけど何もない。

ふん。気のせいか。

「それ!!」

もう一回ストローを振り上げたところで、思わず手を止めた。

んん?なんだ?

視界な縁で、何かが動いた気がする。

何だろう、この違和感。

周囲を見回しても、もちろん何もない。

息を潜めて辺りを窺うと、周り中が違和感だらけだった。

もしかしたら・・・!

そうだ。もしかしたら、脚を畳んだ八面体が隠れてるのかもしれない。

「どうしよう・・・」

違和感はあるけど、違和感しか感じ取れない。

八面体がいるとしても、攻撃なんかできない。

だって違和感しかわかんないから、攻撃のしょうがない。

そもそもちょっと怖いし。

「う〜〜ん、どうすべ」

リドレイさんは、八面体は放っといていいって言ってたけど、わかるんだったら破壊しといた方がいいよなぁ。

でも俺に破壊なんてできるのかなぁ。

突然動き出したり、突進してきたらどうしよう。

せっかく気配を消してくれてるんだから、こっちも気づかないふりするか・・・。

いやいや。下手に逃げて、俺が弱いってことで追いかけ回される方がよっぽど怖いわ。

ブロックも破壊できるんだから、八面体だって絶対に破壊できるはずだ。

そうだよ。

案ずるより産むが安しってことだ。

あれ?安いだったっけ?

ま、そんなんどっちでもいいや。

それに何より、破壊するキャラが増えるから、ゲームのアップデートもできる。

『ブロック破壊ゲーム太古代バージョン』から『八面体を探せ!ブロック破壊ゲーム太古代バージョン』に変更だな。

待てよ。タイトル長すぎかなぁ。『太古代破壊ゲーム』とかどうだろ?

何なら本格的に開発しちゃったりして。

んで、スーパーヒットして儲かっちゃったりして。

思わずニンマリした。

なんだかモチベが上がってきたぞ!

そうと決まれば、さっさと八面体を破壊しなくっちゃ!

そうと決まれば、破壊方法だな。

う〜〜ん。奴らは鏡みたいになって座り込んでる、と。

とりあえずストローを左右に大きく振ってみることにした。


ブンブン グイングイン


ダメだ。視界の一部で間違いなく何かが動いたものの、当たった感触はない。

その時、ピカーンと閃くものがあった。

墨!そうだ、墨だよ!

俺の武器はストローと墨なのを忘れてた!

墨を吐いてみたら、いけんじゃないかな。

例えば、流れる墨が鏡に当たったら、その部分が直線になるんじゃないか?何なら形が浮き出るとか。

ストップINGの世界でそれが判別できれば、簡単に破壊できるかも!

ただな〜・・水の中で試してないんだよな。

だけど、考えてみればタコもイカも水の中で墨吐いてるんだから、存外うまくいくかもしんない。

ここまで波に乗ってるんだ!きっとうまくいく!

「よーし、よしよし!ものは試しだ!やったるぜぃ」

ストロー咥えて、瞑想を始める。

俺はタコ。襲ってくるウツボから逃げなくちゃ〜

うわぁ〜、煙幕で目眩しだ〜〜

フゥ〜〜〜 ふわわわん


あれ!?煙幕が黒い!?

「だーっ!やめやめ!なんで黒いんだよ!?」

慌てて一旦ストップした。

今まで何度も何度も練習してきたけど、黒い煙幕なんて初めてだ。

何がいけないんだ?

ふむむ。斜め上を見ながらちょっと考えてみる。

まてよ?

練習した時は白いもやだったけど、そもそも墨って黒いモノなんだから、もしかして水の中だと本来の色になるんじゃね?

有り得なくもない気がする。

「とりあえず試してみっか」

そうだよ。

やってみなくちゃわからない。

ダメ元で、もう一度始めから。

ただし、慣れてきたから集中して端折ってみることにする。

俺はタコ。ウツボから煙幕で逃げるぞ〜

フゥ〜〜〜 ふわわわん


黒い煙幕がかかってきた。

フゥ〜〜〜 ふわわわんわんわんわん


無事にストップINGの世界に来ることができた。

「よかった、成功だ!やっぱ水の中だと、本来の黒い煙幕になるんだ!」

予想的中、超気持ちイイ!

試す前は、成功するのか、なんならストップING以外の知らない世界に行っちゃうかも、なんて一抹の不安があったけど、無事トロミの中に到着することができた。

「俺って、やればできる男なんだよね〜・・わぁ!?」

すぐ目の前に、隠れているはずの八面体が、赤くテラテラと輝いている。

八面体見つかるかな〜?なんて軽い気持ちだった俺は、腰が抜けんばかりに驚いた。

「え?なに?夢?」

右手で目を擦ってみたものの、再び目を開くと、やっぱり赤い八面体がいる。

しかも、わんさか。

「ええぇ!?な、なんで?」

リドレイさんが、定期的に解放されるって言ってたけど、俺が「ウツボ〜」なんて一人芝居してる隙に解放されちゃったわけ!?

「俺のせいじゃないよね?こんなん、めちゃヤベェじゃん」

迷ったけど、とりあえず退治しとくことにしよう。

コイツも、叩けば破壊できるはずだ。

マン万が一、この事態が俺のせいだったとしても、退治しておけばあの2人に文句言われることはあるまい。

泳ぐようにして進むと、一つ目を叩いた。

パカン・・サアッ


「おおーっ!」

叩き心地と崩れ方が、ブロックとは全然違う。

これはこれで面白いじゃないか!

誰にも迷惑をかけることなく、これまでの溜まりに溜まった鬱憤を、思う存分晴らすことができる。

そう。周りには鬼のようにターゲットがいるんだ。

ただ一つの難点は、身体が思うように動かないこと。

だけど、トロミの中で動くのにもだいぶ慣れてきた・・気がする。

「よっしゃあ!アタル選手、行きます!!」

俺は腕で思いきりトロミを掻き分けると、八面体を破壊しに向かった。

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