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なんで俺?(6)

・・・い

・・お・・・い

うぅっ

なんか遠くで誰かに呼ばれてる気がする。

・・お・・ー・・い・・・

なんだろう。頭の隅で、俺が俺に「起きちゃダメだ」と言っている。

「おーい!起きろ!」

ガバッ!

「あ、お、親父?」

「やっと目が覚めたな。大丈夫か?」

「いや・・いま、すっげー嫌な夢見ちゃってさ」

なんだここ?眩しいな。

「この程度で目を回しおって。先行きが不安じゃな」

え!?

バッと振り返ると、そこにはクラゲの化け物がいた。

「あ、あ、あ・・・」

思わず頭を抱えた。

夢じゃなかった。ヤバすぎる現実だ。

「なっ!長老様の嘴見るとビビるだろ」

親父はゲラゲラと笑っている。

クラゲマンはムスッとして

「失礼じゃな!そんなに驚くようなものでもなかろう」

と言った。

「俺も30年前は同じだったから、お前の気持ちはよくわかるよ。こうなったらアタルも観念して働こう」

「・・・それしか選択肢ないじゃん・・・」

俺は頭を抱えたまま、消え入りそうな声で言った。

「よし!決まりだな!長老!アタルも働く事になりましたよー!」

心なしか親父は嬉しそうだ。いや、間違いなく嬉しそうだ。

俺と働けるのが嬉しいのか、嫌がる俺を巻き込んだのか嬉しい、というより楽しいのか、その両方か。

「よしよし。ではアタル、こっちへ来い」

手?を1本あげてチョイチョイと俺を呼んだ。

手招きなのか足招きなのか。どっちだよ。

すっかりやさぐれたトゲトゲしい気持ちのまま立ち上がると、ノロノロとクラゲマンに近づいた。

「ほれ」

クラゲマンがくれたのは、手のひらより小さいサイズのキラキラ光る金色の球体だった。

「ほえ〜〜」

金色なのに、虹色にキラキラ輝いている。輝いているといっても、細波のような光がフワァと広がる上品な輝き方だ。少し重みがあるけど、それがまた高級感を醸し出している。

「うわ〜、すげぇ綺麗。何これ」

「わしの心臓じゃ」

「ヒ、ヒェェ!?」

驚いて思わず放り投げた球体を、親父が

「うわっ・・と。あ、危なっっ」

と見事にキャッチした。

「こらこらこら!乱暴に扱うでない!!」

クラゲマンは、赤くなると飛び上がって怒っている。

「こ、これをどうしろっていうんだよ。記念品か?」

親父からおっかなびっくり受け取ると、クラゲマンに訊いた。

「ヘソに当ててみろ」

「ほへ?」

「服を捲ってヘソに当てるのだ」

「こ、こう?」

ヘソに当てた球体は、バアァァーッと強い光を放つと、ゆっくり体の中へ入っていく。

「ヒッ!?」

球体はスゥーッと自ら吸い込まれるように入っていった。

「ヒィィィ!」

すっかり中に入り切ると、怯えている俺をよそにクラゲマンは満足げに頷いた。

「これで訓練に入れますね」

親父はそう言うと、俺に向かって

「さあ!とりあえず訓練所に行ってみよう!」

なんて言いやがった。

なんだよ訓練所って!こっちはそれどころじゃないっつーの!!なんでお前らは何一つ説明しないんだよ!

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!いまの何!?いまの玉って何なの!?ねえ!!」

思わず親父につかみかかった。

「だから、わしの心臓だと言ったであろう」

「だから、なんでそれが俺の腹の中に入っちゃったわけ?どうなっちゃうんだよ!」

あんなに綺麗だった球体が、不安の玉になった。

「面倒臭いのぅ。仕方ない、説明するとするか」

ブチンッ

ブチ切れそうになった、というかブチ切れた。

しかし今は我慢だ。そう思い直して、怒鳴りそうになる気持ちをグッと抑えた。

あんな物を体の中に入れたんだ。病気にでもなったら困る。とにかくしっかり聞き出さないと。

怒るのは聞き出してからだ。

「わしはいくつもの心臓と脳を持っていてな。その一部をお主に分け与えたのじゃ。心臓をお前の中に入れたのは、金星人と同じように、自在に体を変える事ができるようにするためじゃ。わしと一体化しておるので、病にも罹らん。脳を入れたのは、わしと同じように道具を使いこなせるようにするためじゃ」

「のう?のうって?」

「脳みそじゃよ」

「・・・!!」

思わず言葉を失った。

あ!もしかしてあの時か!?

さっき、左上腕と右こめかみに軽くタッチされて、触れられたところは、電気を浴びたようにチリチリした。

あんぐりと口を開けた俺に、驚いたか、と言ってクラゲマンはフォッフォッフォと笑った。

「こめかみに脳を入れたのだよ。慣れればお主の父親のように道具を使いこなす事ができるであろう。」

「ひ、左腕には・・何を入れたんだよ」

「ん?」

「左上腕にも触っただろ!」

「ん?ああ。ただ触っただけじゃ。筋肉無いなーと思ってのぅ」

思わず殴りかかったところで親父にに止められた。

畜生!殴ったら気持ち良かったのに!!

「おこりんぼじゃなぁ。ちょっとしたお遊びではないか」

クラゲマンはテヘヘと笑っている。

「長老!お遊びが過ぎますよ。この後、ちょっと訓練所行って体力測定してきたいんですけど、いいですか?」

「うん。いいよ」

? 距離感が近い。なんか親父とクラゲマンが急にフレンドリーになってない?

「親父、さっきみたいに畏まらなくていいのか?」

「ああ、わざと礼儀正しくしてたんだよ。最初から俺と長老がフランクにしてたら、説得力がないだろう?お前が信用してくれなかったら、ギュムノーを引き受けさせるのも難しいからな」

なぬ!?

「じゃあなに?クラゲマンと2人して俺を騙したってこと!?本当はギュムニーにならなくても良かったってことかよ!?」

食ってかかった俺に、親父は「ギュムノーだ」と訂正すると、

「話した事は全て真実だ。だけど、「テッテレー」とか言ってるヤツから聞いた事を信用できるか?お前が最大の抵抗をするのは予想してたから、真面目に話さないと信じてもらえないと思ったんだよ。なんとかお前をギュムノーにしないと、ジワジワ金星人に変わっちゃうからな。まあ、例え金星人になっても、俺の息子であることに変わりはないんだけど」

と俺の肩に手を添えて穏やかに言った。

「とりあえず、わしをクラゲマンと呼ぶでない。クラゲなどと一緒にされたくないわ。長老と呼べ」

「そうだぞアタル。適当なじいさんだが、俺たちのチームリーダーだからな」

「チームリーダー?」

「そうだ。俺たちはチームなんだ」

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