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太古代(1)

「あ、あれ?ここ・・・」

茶色い空?が広がっている。澄み渡っておらず、まるで薄く靄がかかってるみたいだ。

デコボコとした茶色の地面には水がある。

溜まってたり、溜まってなかったり。

遠くに見えるシャワシャワとした白いモノが、泡立ちながら引いては寄せる。

見たことがある。あれは波だ。

もしかしたら・・・海?

だけど

「・・・青く・・ない・・・?」

緑色だ。

緑色の海が、波打ち際に近づくにつれ黄色くなる。

そして、目の覚めるようなイエローになると、突如としてオレンジに変化して、波打ち際は美しいネオンオレンジだ。そうして、そのまま茶色い地面に溶け込んでいく。

足元にあるおびただしい数の水たまりは、海と同じような緑はもちろん、一つずつが微妙に異なる色合いの緑が混在している。そこから黄、黄からオレンジへと変化して、場所によっては、イエロークリームの盛り上がりに縁取られているのは、どれも同じだ。

カラフルで異質な状景。

ハッ!

間違いない!

ん十億年前(何億年前か忘れた)に連れてこられたんだ!!

「ちくしょー!」

ギリギリと歯噛みをした。

「ちくしょー!ちくしょー!ちくしょー!!」

頭に血がのぼって顔が赤くなったのがわかる。

怒り過ぎて地団駄どころではない。

「貴っ様ー!!また騙しやがったな!!信じらんねぇ!!フェスには行かなくていいって言ったじゃねえか!親が子どもを騙していいのかよ!!!」

親父の胸ぐらを掴んで激しく揺さぶった。

父親だからって、何をしてもいいわけじゃない。

「待て待て」

親父は胸ぐらを掴まれたまま、落ち着いている。

どんな言い訳されたって許すもんか!!

「待たねえよ!なんだって、こんなとこ来なきゃなんねぇんだよ!」

「お前は」

「なんだよ!」

「フェスティバルには行かないと言った」

「そうだよ!!」

「フェスティバルの元になったバクテリアのばら撒きにも行かないと言った」

「そうだよ!!わかってんじゃん!なのになんで・・」

「ここはフェスティバル会場じゃないし、その元になった、バクテリアをばら撒きに来た場所でもない」

「はぁ!?じゃあどこだっていうんだよ!!」

「イベントの元になったバクテリアをばら撒きに来た場所だ」

「ほらやっぱり・・・」

「いいか?フェスティバルじゃない。イベントだ。よく聞け。大酸化イベントはフェスティバルじゃない」

俺の目をジッと見つめると 

「イベントだ」

一文字一文字ハッキリと言った。

「な、なんだよ!フェスティバルもイベントもたいして変わんねえだろ!」

イベント?フェスと一緒じゃねえの?

咄嗟にスマホで調べようかと思ったけど

チッ!スマホなんかねぇや。あっても使えっこないけど。

親父は、狼狽える俺に畳みかけてきた。

「父さんは、大酸化イベントとそれを誘発する任務の話をした。お前と一緒に行くとも言った。だが、お前はフェスティバルには行かないと言った。フェスティバルってなんだ?アーティストか?父さんにはわからないし、知らない。そのフェスティバルに関する出来事なんて、思いつきもしないさ」

「でも!でも話の流れでわかるだろ!」

「いいや。全然わからんね。イベントとフェスティバルは違うモノだ。そもそも、お前がちゃんと他人の話を聞いていて、イベントに行かないと話してくれてたら、あの場で話し合うこともできたんだ。いかに自分が他人の話を話を聞いていないのか、これでわかっただろう?」

くっそぉぉぉ!!

悔しいかな言い返せない。

「ワハハハハ!アタルの負けだな」

「うるせーっ!」

八つ当たりだ。だけど揶揄う伯父さんが悪い。

「うるせぇとはなんだ。相も変わらず失礼なやつだな」

与は、年長者への言葉遣いを教えておらんのか、などとブツブツ言っている。

「すみませんね。俺の息子なんで、期待しないでください」

親父はそう言ってニヤリと笑った。

「ちょっと見てくる」

親父はスーッと滑るように行ってしまった。

「えっ?なんで?足動かしてないじゃん!」

「そうだ。この時代の水は、硫酸なんかの有害物質になっていることもあるしな。地に足をつけるのは危険なのだ」

「硫酸?危ねぇやつじゃん」

「うむ。マグマから出てくるガ スには塩化水素や二酸化硫黄なんかもあってな。これが海水に溶けると塩酸や硫酸になるのだ」

「じゃあ、浮いてるってこと?」

「お前も浮いているぞ」

「え?」

自分の足元を見ると、確かにプカリと浮いている。

「すげぇじゃん!」

さっそく歩いてみたけど、その場で足踏みをしただけになって、うまく進まない。

「これどうやったら動くんだよ」

「敬語を使え!」

「動くんで、す、か!」

細えな。親戚なんだから、別にいいじゃん。

ちょっとムカッとしたから、わざと「ですか」を強調してやった。

伯父さんは変なオーラを出したけど、すぐに引っ込めた。

「まあ、いいだろう。身体を少し傾ければいい。それだけだ。あとは・・」

「わかった!バランススクーターみたいな感じね。ハイハイ、それなら楽勝パンチでございますよ。佐竹達とよくアミューズメントパークで乗るもんね〜」

鼻歌混じりで前に重心を傾けた途端、猛烈なスピードで滑り出した。

「うわぁ!?」

ヤバい!止まり方聞くの忘れた!

「うわあぁぁぁ!止まらない!止まらないぃぃ!!」

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