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マグマ(5)

「お前は黙っとれ!!」

あまりの勢いに、思わず肩をすくめた。

年寄りが癇癪起こしやがって。若者は大事にしろっつーの!

まったく、団子に例えてなにが悪いんだよ。

もしかして、伯父さんは食ったことがないとか?

旨いのに可哀想だな〜。


「もう行くのだな。淋しいことよのぅ」

「なになに、もうこの世界に戻ってきたのだ。会いたければいつでも会えるわい。宝珠を鳴らして呼んでくれぃ」

「さすれば来るか?」

「さすれば来よう」

「ならば、その時は此奴も連れてくるが良い。面白いでな」

大きな鉤爪で指を差されて、一瞬ビビった。

「いや!もう会わないと思います!」


「カカカカカカカカカ!」

ビーーーーーーーーーーン


「だから!うっさいってば!!」

もう遠慮なんかするもんか。

「鼓膜が破れたらどうすんだよ!さっきから何回も、やめろって言ってんだろ!!」

アタル!龍善に失礼なことを申すでないわ!」

「だって耳がイカれちゃうじゃんか!伯父さんだって、音響武器って言ってただろ!」

「ふむ。確かにそうだな」

「だろ〜?手加減しろってことだよ」

「こら!!調子に乗るな!!」

「おうおう、威勢がいいのぅ。此奴はやはり面白い」

やいやい騒いでいると、

「あのー、そろそろ行きたいんですけど」

親父が声をかけてきた。

「おお。行くのだな」

地龍はそう言うと


レローン


「ギャアァァァァァ!」

モグパパの口から、それはそれは巨大なイソメ玉が出てきて、その上には光る宝珠が鎮座していた。


イソメ玉からふうわりと飛んできた宝珠は、サークレアを通過して俺と親父の周りをふわふわと飛んでいる。

モグパパによると、伯父さんは宝珠に変化したんじゃなくて、宝珠に取り込まれたんだそうだ。

「宝珠は、願いを叶えると言われておる。藍善は、強い意志を持って、強く強く願ったのだろう」

なるほどね。そうして宝珠は、伯父さんを守るために、自分の中に取り込んだんだろう。

「お主らに藍善を戻そう。大事な友だ、けして手離すでないぞ」

「龍善が与えてくれた宝珠があったればこそ、再び戻ることができたのだ。感謝の言葉もない」

「なんの。どんな姿形になっていようと、友は友。藍善が願ってくれたおかげで、宝珠が守ってくれたおかげで、我は友と再びこうして逢うことができた。すべては誰かの、何かのお陰様なのだ」

そう言って、近いうちにまた逢おうと言い残すと、地龍はその巨体を翻し、黒鋼を輝かせながらマグマの中に消えていった。


「なんか、立て続けに信じらんない事ばっか起きて、ガチで心臓ヤバいわ」

「さすがに、俺でもこの展開はキツイな」

「ほれお前達、さっさと任務に向かうぞ。

そうだフェス!!

「俺は!」

親父と宝珠の方を向き直った。

「俺はフェス行かないぞ!」

「フェス?」

親父と宝珠は顔を見合わせている。

「フェスって、フェスティバルのことか?」

「そうだよ。なんかまだよくわかんないし、一緒にフェス行って、役に立てる自信もない。ほら、やっぱ親父と伯父さんに迷惑かけらんねえじゃん。足手まといになるだけだし」

角を立てないように気を遣いながら言ってみた。

絶対行きたくねえし。

「仕方ない。そこまで言うんだったら、お前はフェスティバルに行かなくていいよ」

「そうだな。やむを得まい」

案外あっさり認めてくれたから、拍子抜けした。

いやいや騙されちゃいけない。「フェスだけだと思った〜」などと言われかねない。

フェスの前にバクテリアをばら撒いたって言ってよな。念の為、そこにも釘刺しとかねえと。

「フェスだけじゃないぞ。フェスの元になったバクテリアのばら撒きにも行かないって事だかんな」

「そうか。それは仕方ないな」

「シャアァ」

「なんだか嬉しそうだな。とりあえず、一旦、マグマから出るぞ。左上方に空間があるから、そこに行こう」

「オッケー!」

軽やかに返事をすると、親父はまた腕を組んだ。

マグマを通過すると、岩肌が見えた。

「ヒ、ヒェェ!」

ぶつかるっ!


ゴゴゴゴゴッ ガリッッ ガガガガガ ズボッ


当然ぶつかって(なんなら岩盤を突き破って)ホールのような空間に出ると、サークレアはシャボン玉が割れるように消えた。

「イテッ!」

作った本人である親父は普通に立っているけど、俺の方は、上手く対応できなくて尻餅をついた。

「消すなら消すって言ってくれよ〜」

思わずそうぼやきながら周りを眺めると、サークレアで空いた穴からはマグマが見えた。燃えるマグマで照らされる範囲は明るくなっているけど、それ以外は漆黒だ。

早速覚えたばかりのライトサークレアを使うことにする。

「おおお!」

一気に昼間のようになった。

なんだか楽しくなって、辺りをぐるりと眺めてみると、ここはモグと会った訓練所に感じは似ているものの、ずっと小さいことがわかった。

「ふぅ、疲れた」

親父は首を鳴らしながら、手をブラブラ振っている。

「え〜?身体は疲れないだろ?」

「神経を使うんだよ。そっちの回復はしないからな」

確かに頭は疲れたままだ。睡眠って、身体だけじゃなくて頭の回復にも必要なんだな。

無くなってみると「当たり前」の大切さがよくわかる。

寝るって大事だ。

「さ、行くぞ」

「うん。いってらっしゃ〜い」

「ほら、手を繋げ」

「?」

互いに互いの両手を持った。

「え?これでなに・・」


グニャッ


視界がぐんにゃりと崩れて、グルグルと回り出す。

「あ〜?あれ〜?」


スッ


着いたところは、茶色い世界だった。

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