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なんで俺?(4)

「同じ血筋の中でも、金星人が出現したりしなかったりするから、世襲制で働いている金星人は、今のところ父さんを入れて7人だ。現時点で後継候補者はお前を入れて12人見つかっているが、みんなまだ子どもなんだ。働けるのは18歳以上だからな」

「そんなこと知ったこっちゃない。だったらそいつらが18歳になるまで待てばいいだろ。俺が後を継ぐ必要なんかないじゃん!」

勢いよく怒鳴ったのにクラゲマンもポンコツ親父もウンウン頷いているだけだ。

「何とか言ってみろよ!」

「いやはや、若き日のお主みたいじゃのぅ」

「まったくもって仰る通りです」

なに?なんか通じ合ってんだけど?

「俺抜きで俺のわかんないことしゃべってんじゃねぇよ!!」

腹が立ちすぎて、地団駄を踏んだ。呼吸も荒くなってくる。

「いやな、30年前、俺も長老様に向かって同じ事を言ったんだ。あの時は確か、2番・・」

クラゲマンが睨んで、手が僅かにシュルッと動いた。

ポンコツ親父はハッ!とした顔で

「・・いや、ここにいらっしゃる3番長老様だった」

ポンコツ親父は、急に遠い目をして語り始めた。

めちゃくちゃイラつくんだけど。

「そんな事、どうでもいいんだよ!そんな事より・・・」

「いや!絶対に聞いた方がお前のためだ!」

「ふざけんなよ!こっちは人生がかかってんだよ!」

「お前のためを思って言ってるのに、この親心がわからないのか!」

「んなもん関係ねぇよ!ポンコツ親父!!」

どんどんヒートアップして親子で罵り合っていると、クラゲマンの頭が少しずつ膨張し始めた。

目の隅では、膨らんでいくクラゲマンの様子は見えていたものの、そんな事はどうでもよかったんだけど・・

「いい加減にせんか!このバカ親子が!!」」

クラゲマンの怒鳴り声は、頭の中に直接響いたもんだから、目の前がチカチカして親子でふらりと尻餅をついてしまった。

クラゲマンのほうはというと、怒りを放出したからか

プシュー・・

といって頭も元通り小さくなった。

こっちは耳の奥がグワングワン言っている。なんだこれ?

「やれやれ。わしが話した方が良さそうじゃのぅ。アタル、とりあえず落ち着いてわしの話を聞け」

そう言ってクラゲマンは話し出した。

「30年前、お主の父親であるアタエは、大伯父に連れられてここにやって来てな、お主と同じように怒り狂っておったわ」

親父は、大きく頷きながら

「懐かしいですね。私も、藍善さんに説明もなく突然連れてこられたんですよ」

「藍善は、お主と違って任務に無常の喜びを持っておったからのぅ。まさか自分の可愛い甥っ子が嫌がるとは思ってもみなかったのであろぅさ」

そう言うと、クラゲマンはフォッフォッフォと笑った。

忌々しい。口もないのにどこで笑ってんだよ。

「お主の父親が言うたように、同じ血筋の中にも金星人が出現したりしなかったりするのだが、これは金星人としての力が時を経て弱くなってきておるからじゃ。それでも、常に同じ血筋から、常に同じ時代に、常に2人の金星人が出現するようにはなっている。つまり、お主の父親が死ぬと、その後数年の間に、お主の血筋のどこかで後継候補または後継者である金星人が出現することになる。もちろん、お主が死んだ時も同様だ」

「父さんの時は、藍善さんっていう、お前の曾祖父ちゃんの兄、つまり父さんにとっての大伯父さんが金星人だったんだ。藍善さんは20年前に亡くなったんだけど、金星人の間で有名になるくらい優秀だったんだぞ。どんなふうに有名かというと・・」

親父は自分の事のように自慢げだ。

「俺の知らない大大伯父さんになんか興味ねぇんだよ。」

わざと「大大」の部分を強調した。不愉快全開の俺の顔を見て、クラゲマンが

「アタエ、藍善の話は不要じゃ」

と言ってくれたおかげで、親父は口をつぐんだ。

「まあとにかくだ、我々金星人が地球にやってきてから、地球は様々な進化を続けてきた。その進化のきっかけを作ったのが金星人なのだよ。もちろん全ての進化に関与してるわけではないがな。ということはだ、逆に言えば我らの関与がなかったら、今と同じ世の中にはなっていないということでもある」

そんなの初耳だ。だから、金星人に誇りを持てってか?金星人の功績なんかどうでもいい。俺のモットーは「安心・安全第一で、安定した人生を送る」だから、こんな話聞いても意味がない。

「アタル・・」

親父が静かに話し出した。

「今から10年以内にすべき事があるんだ。それには7人じゃ足りない。だから、お前しかいないんだよ」

「でも、世襲制で働いてる金星人が7人って言ってたよな。てことは、世襲制じゃないやつもいるんだろ?そいつらに頼めよ」

「重要な任務は、世襲制の金星人にしかできない。そもそも世襲制にしてるのは、秘密を守るだけじゃなくて、自分達自身を守るためでもあるんだ」

「だ、か、ら、そんなの知るかって言ってんだろ!10年以内にすることがあるっていうんだったら、9年待てばいいんじゃないの?9年経てば後継候補の子どもだってでかくなってんじゃん。やりたいって言う奴も絶対いるよ」

「無理だ。半年の訓練期間も必要だし、実践を積む必要もある。そもそも、やる事は山のようにあるから、すぐにでも始めなきゃいけない」

「じゃあさ、今のうちから英才教育しとけばいいじゃん」

そう言うと、親父の目はまん丸になった。

「お前、自分が何言ってるのかわかってるのか?子ども達に、自分が金星人だと理解させて、訓練もさせろって言ってるんだぞ」

「だってしょうがねぇじゃん。俺はできないんだから」

「・・・父親の俺が言うのもなんだけど、お前クソだな」

親父は呆れている。

「だ〜か〜ら〜、俺は嫌だって言ってんの。俺は、安心と安全が第一なの!危険とか嫌なんだよ!痛いのは論外だ!!」

「自分以外なら、例えそれが子どもでもいいって言うのか?」

「しょうがねぇよな。金星人の誰かがやんなきゃいけないんだったら、そいつらにやらせるしかねぇよ」

「はぁ〜、我が息子ながら情けない」

親父はブンブンと頭を振ってから、クラゲマンに向き直って勢いよく、これ以上ないくらい深く頭を下げた。

「申し訳ございませんっっ。私の育て方が悪かったせいです!自分の身可愛さに、言うに事欠いて子ども達まで引き合いに出すとは」

「ふむ。聞く耳ももたぬか。思えばお主もそうであったが、しかし、この様子はお主をも凌駕しておる。こうなったからには、あの話をして納得させるほかないかのぅ」

クラゲマンは、ゆっくり頷いた。

「本来ならば、おいおい知るべきところだが、やむを得まい。いま話そう」

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