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本部(4)

「どうやって攻撃すりゃいいんだ?」

「さあな」

「なにそれ。無責任じゃね?」

「いや、こればっかりは本当にわかんないんだよ」

「そっか。じゃあ、とりあえず投げてみるか。しっかし、こんなん飛ぶかなぁ〜?」

横向きだと絶対飛ばないよな。縦に投げてみよう。

「たあっ!」

・・・・・

「あれ?」

手から離れない。

「投げるんじゃなかったのか?」

「投げたつもりだったんだけどな〜?もう一回やってみるよ。たあっ!」

・・・・・

やっぱり手から離れない。

「ダメだ。投げらんねぇよ」

「そうか。じゃあ、投げるわけじゃないってことだな」

ふむ。投げる以外の方法か。

「アタル、吹き矢みたいに吹いてみたらどうだ?」

「吹き矢ぁ?でもこれ空洞だよ?」

てか、ストローだし。穴を通して親父を見ながら

「何か中に入れて吹くってこと?」

と訊いた。

「いや、中に入れるってことはない。入れる物がない環境下もあるからな。空っぽでも、吹けば何か出てくるんじゃないかと思ったんだよ」

「う〜ん、どうかな?針とかテグスが隙間に仕込まれてるっていう方が、可能性としてあるんじゃないかな。とりあえず、釣りみたいに端っこを持って、中身を外に飛ばす感じでやってみるわ。それでダメだったら、次は吹き矢だな」

「可能性はゼロじゃないからな。いいんじゃないか」

頷く親父の前で、的に向かって手首のスナップ効かせて振り下げてみた。

「いよっ」

うんともすんともいわない。

そりゃそうか。ストローだもんな。

「じゃあ、吹き矢を試してみるか」

「吹き矢だったら腹式呼吸だぞ。溜めた息を一気に吐き出すんだ。簡単に思うかもしれないけど、フォームも大事なんだぞ。それから、筒がターゲットに向いている必要もある。ある程度なら自動で追尾してくれるだろうが、基本的には合わせなくちゃダメだ」

なんかウンチクが始まったぞ。

親父は変なところでクソ真面目だから面倒臭い。

「あのさ、このストローは俺の武器なんだから、俺がやりやすい方法じゃないと効果ないんじゃないの?」

「むぐぐ・・」

よし、黙らせたぞ。

だいたい、俺の特性に合わせた武器なんだろ?

俺の運動能力と性格上、いちいちフォームを意識して、ターゲットに筒が向くように合わせるなんて几帳面なこと、やるわけがない。

おまけに敵の前でだぜ?絶対しねえって。

「よおし、いくぞ!」

思いっきり息を吸い込む。

スゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ

勢いよく息を吐き出す。


プッ

カツンッ


「おっ?」「ん?」

音がした。それだけ。

「なんか聞こえたよな?」

「もう一度やってみよう」

思いっきり息を吸い込む。

スゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ

勢いよく息を吐き出す。


プッ

カツンッ


「やっぱ音がしたな。音だけ、だけどな」

「ああ、とりあえず反応はあったってことだ」

「口を使うってことかな。それとも、穴を空気が通ったことで、音がする何かが出てきたのかな」

ストローの中を覗いたけど、変化はわからない。

ストローの真ん中を持って、外に向けて中身を飛び出させるようにして空気を通してみた。

・・・・・

「う〜ん、やっぱダメだ」

「音もしないな」

「さっきは音がしたよな。ってことは、吹き矢じゃないけど、たぶんそれに近いやり方ってことなんだろうな。よし!いろんな角度とか吹き方で試してみよう」

それから、持ち方、角度を様々に変えて、左右それぞれの手でも試してみた。

カツンッ ポッ コツンッ パコン ボコッ トンッ

どの方法でも、音はするものの目立った反応はない。

「なあ〜、疲れちゃったよ〜」

「ん?疲れはしないだろう?飽きたってことだな」

ん〜。そうなんだ。体は疲れないんだよな。

でも頭はクタクタだ。これ、飽きたっていうのかなぁ?

ちょっと考えた後、面倒臭くなってコックリと頷いた。

「でもさあ、音はするけど、何やってもダメじゃん。コレってほんとに武器なのかよ?」

「間違いなく武器だ。だけど、ここまで使い方がわからないとはなぁ。」

「親父の時はどうだったの?なんかあの十文字のカッコいいヤツ」

「ん?ああ、これか?」

そう言うと、こめかみをクリックした。


スッ


親父の手元に武器が現れた。

「うおぉ〜!かっけぇ!」

「そうか?」

十文字のそれはガンメタリックに輝き、親父の手にしっくりと馴染んでみえた。

「これどうやって使うん?やっぱレーザーとか出んの?」

「レーザーも出るけど・・」

「おほっ!すげぇ!」

「投げる」

「投げる!?」

思ってたより原始的なのに驚いた。

「レーザー出るんじゃねぇの?」

「投げると出るんだよ。敵に合わせて銃みたいに弾がでることもある」

「えーっ!そっちの方がカッコいいかも!!なあ、やってみせてよ!」

「いいぞ」

親父はニヤリとすると、

「的はどれにする?あれか?向こうのあれか?」

と言った。

平静を装っているけど、心なしか嬉しそうだ。

「あれがいいな」

真ん中辺の目立つところにある的を選んだ。

「奥の的に当てることもできるぞ?」

一番奥の岩陰になった的を指差した。

「いいんだよ、あれで。どんなふうに当たるのか、しっかり観察したいんだ。あそこならよく見えるだろ?」

「・・・そうだな」

親父はニンマリ笑うと、切り替えて真剣な目をした。


シュッ


ブーメランを投げるように縦に投げた。

「おおっ!」

十文字は回転しながら、ギュンッと超スピードで的に向かっていく。

「あ・・・」「あれ・・?」


パカン・・サアッ


的は砕けた後、砂のようになって消えた。

的には当たった。

当たったけど、ビームも弾も出なかった。

「ビームとか出なかったな」

「そうだな・・まあ動かない的だしな。試しにもう一回やってみるか」

「いや、いいよ。的は同じだから、結果も同じだろ?」

「あの的、見とけよ」

「え!いいよ」

「いいから、いいから」

なんだよ。親父がやりたいだけじゃん。

あ!もしかして面子が立たないってことか?

「いくぞ!」


シュッ


今度はフリスビーみたいに投げた。


パカン・・サアッ


的に当たった。

けどさっきと同じでビームも弾もでなかった。

俺にとっては想定内だったけど、親父は渋い顔をしている。

あ〜あ。カッコつけたかったんだろうな〜。

面倒臭いから、とりあえずアゲておくか。

「やっぱ親父はすげぇな。百発百中じゃん!俺も見習わなくっちゃな〜」

「ん?そうか?まあ、それほどでもないけどな」

お、眉間の皺がなくなった。

良かった〜。親父、チョロくって。

「じゃあ、また練習再開するか」

「そうはいってもなぁ〜」

そう言いながら、一番近くの的に近づいた。

「武器っていっても、俺のってタピオカストローみたいなもんじゃん。こんなんで、どうやってこの的に当てるわけ」

そう言いながら武器(いやまだ武器とも呼べない、ただのタピオカストローだけど)を振り上げて的をパコンと叩いた。


パカン・・サアッ


「!?」「!?」

思わず2人して目を見開いた。

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

「ええぇぇぇーーーー!?」

声が揃った。

「ど、どど、ど、どういうこと!?なあ、どういうことだよ!?」

「いやあ、なんでだろうな?そいつの攻撃方法は、直接叩くってことなのかなぁ?」

「え?え?武器なんじゃねぇの?」

「ちょっと父さんの武器でも試してみよう」

そう言って近くの的まで近づくと、十文字を振り下ろした。

カンッ

高い金属音がして、親父が「イテッ!」と声をあげる。

的の方はというと、そのままの状態で鎮座していた。

チーーーーン

俺、フリーズ。

「いや、勘違いかもしんないから、もう一回叩いてみるよ」

鎮座したままの的をコツンと叩いた。

軽〜く、ソフトに。

だって、そうしないと親父みたいに「イテッ!」となっちゃうじゃん。


パカン・・サアッ


俺、混乱の極み。

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