本部(3)
コレがユニフォーム?
コレが俺に最適なユニフォーム?
コレが???
手に持って愕然とした。
へ?何これ?
まったく理解が追いつかない。
ブフォッ!!
突然親父が吹き出した。
ブアッハッハッハハハハハハハ!!
俺が・・笑われてんだよな?
頭にカァァァッと血が昇る。
「ふっざけんなよ!!何だよこれ!全身タイツじゃねえか!」
怒鳴りながらユニフォームをぶん投げた。
そう。俺のユニフォームは、まんま全身タイツだった。
「こ、これがお前のユニフォームとは・・ヒィッ、ヒッ」
親父は目から涙を流しながらヒイヒイ言っている。
俺の頭は怒りMAXだ。
「もう帰る!こんなにバカにされて、やってられっかよ!」
「まあまあ、プッ・・失礼、落ち着けよ」
「そうだよ。AJは何でこのユニフォームやなの?これ、物凄く特殊で、ボクも見たことないくらいだよ?」
「こんなの役に立たねえから、見たことないんだろ!」
ナノは悪気なく言ったんであろうことは、顔を見ればわかる。それでも、腹の虫が治らない。
「すまんすまん、笑って悪かったよ。とにかく落ち着いて、一回着てみろよ」
ほらっ、と言って、親父が右手の人差し指で涙を拭いながら、クソ忌々しいタイツを投げてよこした。
「なんだよ、こんなもん着ねえよ」
「いいから、着てみろって。お前のためのユニフォームなんだから」
「そうだよ!AJ着てみなよ」
ナノには全身タイツが何なのかわかってないのか?
百歩譲って、イケメンモデルが着てますっていうんなら、笑い話にはなんないかもしんないけど、俺が着るんだよ?親父も爆笑してるけど、まんま笑いモンじゃねぇか。こんなとこでバカにされるためにギュムノーになったんじゃねえわ!
ダメだ。頭が沸騰しそうだ。
「こんなの・・・」
もう一度ぶん投げようと振り上げたとき、
・・・あれ?こんな色だっけ?
投げる手を止めた。
タイツは赤褐色だけど、触った部分の色が変わる。
んん?
よく見ると、粒のような模様がたくさんある。
・・・!!!
「俺の武器と同じだ!!」
そうだよ!あのタピオカストローみたいなヤツと、色も模様も、色が変わるところまで同じだ!!
パアァァァァ
「!?」
突然の眩しい光に目が眩んだ。
光が消えて目を開けると、いつのまにかユニフォームを着ている自分がいる。タイツだけど。
「え?何で?」
あんなに嫌だったのに、着てしまうとあまり抵抗感を感じないのが不思議だ。
なんだこれ?着てても全然違和感ねえな。
驚くほど着心地がいい・・というわけではない。
着心地もなにも、何も着ていないみたいだ。
体中にペイントするパフォーマンスがあるけど、こんな感じなんだろうか。
それにしても、足はともかく指先までタイツなのが、やり過ぎ感があって、ちょっと気に食わない。
頭は・・ふうん。フードになってるのか。いまフードを被ってないってことは、必要に応じて被るのかもしれないな。とりあえず、今後被ることになるんだとしても、頭までタイツじゃないのは有り難い。
いろんな角度からユニフォームを見ていると、親父がニヤニヤしながらこっちを見ているのに気がついた。
「おう、いいじゃ・・プッ・・ないか」
チッ!親父の野郎、また笑いやがって。
それにしても・・?
「何で着てんの?」
「だから、それはお前のためのユニフォームだって言っただろう」
「違うって!俺は着た覚えがないのに、なんで着てんのかってこと!」
「お前が受け入れたからだよ」
「え?」
「最初は頑なに受け入れない様子だったけど、考えが変化しただろう?ユニフォームもそれを感じ取ったんだよ」
「何それ。受け入れてないんですけど」
「いいや、間違いなく気持ちに変化があった。だから・・プッ・・失礼、ユニフォームを着てるんだ。ユニフォームにも意思があってね、心が通わないうちは着ることができない」
「いや、心通ってないんだけど」
まあまあ、と言って親父に肩をポンポン叩かれた。
「とりあえず、勝手に装着されるんだよ。さてと、武器も手に入れてユニフォームも着たことだし、実践訓練してみるか。特に武器は、使ってみないとわからないからな。よし、父さんと腕を組め」
「え?腕?」
「早くしろ。訓練場へは父さんが連れていく」
よくわからないまま、親父と腕を組んだ。
冷静になると、カップルみたいだな。
「離すなよ。行くぞ」
ヒュンッ
「うわぁ!何ここ?」
着いたのはトンネルのような場所だった。
「ここは溶岩洞だ。溶岩チューブともいうな。溶岩が流れ出た後にできる空洞だよ」
「溶岩チューブ?」
親父は大きく頷いた。
「地球にも同じような物がある。富士山麓の風穴なんかがそうだ。ここは月の溶岩チューブを加工して様々な環境に変質させた訓練所なんだ」
俺は両手を口に当てると
「ワーッ!!」
と大きな声を出してみた。
「なぁんだ。ぶっ壊れた訓練所と違って、ここは響かねえんだな」
「場所にもよるんだよ。ここは、壁一面が玄武岩質になってるから、音が吸収されて響かないんだ。重力は地球と同じ設定になっている。まずは武器を使えるようにならないと、箸にも棒にもかからないから、地球に近い環境を選んだんだ。じゃあダミーの敵を出すぞ」
「え?敵が出てくんの?」
敵と聞いて、急にビビってしまった。
いや聞いてないし。
「闘うような事は無いっていったじゃん」
「ダミーだよ、ダミー。襲われた時の事を考えて、護身用に覚えておかなきゃだろ?」
「うむむむむ」
そういえばそうか。
確かに、身を守るために訓練しておく必要はあるかもな。
「ナノ、ブレイクバグを配置してくれ」
「ラジャー!」
親父が命じると、ナノビームから30cmくらいの不格好な白い塊を出して、あちこちに設置した。
「ブレイクバグって?」
「これは張りぼてだ。まずはコイツを敵に見立てて攻撃してみろ」




