表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/124

通学(3)

はぁ〜〜。めっちゃ疲れた。

ふたりとも変な顔してたよなぁ。

独りになると、どんどん気が滅入ってきた。


「で?どんな子?」

テーブルの向かい側にふたりが前傾姿勢で座って、言わせる気マンマンだ。

俺は溜息を一つつくと、覚悟を決めて話し出した。

「まん丸で」(俺)

「ぽっちゃりか!太ってる子って、フワフワして柔らかそうだよな」

いや、ぽっちゃりじゃなくて丸なんだよ。球体。


「よく跳ねてる」(俺)

「もしかして、お前に遭うと飛び跳ねるほど嬉しいってことなんじゃね?ヒュ〜」

いや、飛び跳ねるっていうよりバウンドするんだよ。

なんなら浮かんじゃうし、飛んじゃうし。


「気分で色が変わるんだ」(俺)

「すぐ赤くなっちゃう子っているよね!可愛いよな〜」

いえいえ、赤面するんじゃなくて、発光するんだよ。興奮すると、なおさらビカッと光んの。


「イボイボしてて」(俺)

「ニキビがいっぱあるの?僕たちもすぐニキビできるもんな。痘痕あばたえくぼって諺もあんじゃん。チャームポイントにだよね」

いや、ニキビどころか全身が激しくイボイボなんだよ。

しかも、怒ると尖って危険極まりない。ハリネズミどころじゃないんだぜ。


「デカい目が光るんだ」(俺)

「コンタクトだな!キラキラうるうるってことか〜。目が悪い人は、目が綺麗なんだってさ」

いやいや、赤く光ってビームまで出るんだよ。

おまけに内臓までスキャンできちゃうワケよ。

なんなら、レジでバーコード読み取る機械に似てるかもな。


「お前って呼ぶと電撃を喰らう」(俺)

「え!?」「ええ?」

「いやだからさ、お前なんて呼ぶなって怒られて、電撃ショックを喰らうんだよ」

「・・・・・」「・・・・・」

あれ?ふたりとも急に黙っちゃった。

ここは伏せといた方が良かったかな?

でも全身ビリビリやられるってのは本当だし、おまけは雷撃まで喰らわすんだから、俺としてはたまったもんじゃない。

「・・あのさ」

佐竹が言いにくそうに口を開いた。

「護身用に持ち歩いてるんだろうけど、スタンガンを持ってて、それをアタルに使うってこと・・?」

おっ!スタンガンを思いついたか!さすがは佐竹!

だけど、持ち歩いてるわけじゃなくて、「生きる全身スタンガン」ってトコなんだよな〜。

思わず腕組みをして、うんうんと頷いた。

「・・痺れるほど好き、みたいな比喩じゃなくて、怒ってスタンガンを使ってる・・ってこと?」

なに言っちゃってんだよ清澤!

普通は、好きな相手にスタンガンなんか使わねえだろ。

痺れるほどっていうより痺れちゃうの! 

「比喩な訳ないじゃん」

「・・・・・」「・・・・・」

あれ?また無言になっちゃった。

さっきまで根掘り葉掘り訊いてきたくせに、スタンガンのくだりから、急に様子がおかしくなったな。

「あの・・なんていうか・・どんなにムカついても、スタンガンは使っちゃダメだって言った方がいいぞ」

「・・うん。あれは護身用だから・・」

ナノのことなんて知らないふたりは、真剣に心配してくれている。

「そうだよな。どんなにムカついても電撃はダメだよな」

ナノにしっかりと注意しておかなければ。

「アタル」

「うん?」

「スタンガン以外で暴力受けてないか?」

「言葉の暴力もだぞ。大丈夫か?」

あれ?もしかして、俺が暴力女子を好きになったと思ってる・・とか?

よく見ると、ふたりとも憐れみを湛えた目で俺を見ている。

「いや、ちが、違う違う」

両手のひらを2人に向けてブンブン振った。

「ヤメロ!違ーう!そんな目で見るなぁー!!」

あちゃ〜、余計なこと言っちゃったな〜。

でも、コイツらに変な嘘はつきたくなかったんだ。

一つの嘘は、次々に嘘を産むからな。

それに実際、気になってる存在はいるし。

ただ残念なことに、それが「ナノ」っていうだけだ。

だからと思って、ナノを思い浮かべながら話してただけなんだけど、変なことになっちゃったな。

「なあ、蕨屋行かね?」

突然、清澤が立ち上がった。

「あ!僕も行きたいと思ってたんだ」

ここから5分くらい歩いた駅ビルの5階に「BOOKの蕨屋」がある。ここら辺で1番デカい本屋だ。

いまから蕨屋?もうこの空気感には耐えられないんだけど。

「俺は帰・・・」

「ほら!アタルも行こうぜ」

「え!俺は帰るってぇ・・」

「いいから行くぞ」

「えぇぇぇ〜〜〜〜」

またしても、ふたりに引きずられるようにして蕨屋に行くことになった。

蕨屋に着くと、

「佐竹、一緒に探してくれよ」

「おう。アタルは立ち読みでもしてろよ」

そう言ってふたりは奥のコーナーに消えていった。

あ〜あ、何だよこの空気感。

なんでこうなっちゃったんだろ。

はあぁ〜。金星人になんかなりたくなかった。

いや違う。金星人として生まれてきたくなかった、が正解だな。

危ない目にも遭うし、アイツらに隠さなくちゃいけないことばっかやん。

信じてもらえるんだったら、隠さなくていいのかもしんないけど・・・俺だったら信じらんねぇもんな。

はあぁ〜

読むでもなく、週間漫画をパラパラ立ち見していると、

買い物が終わったらしく、ふたりが戻ってきた。行こうぜと言われて店外へ出ると、

「ほら。これ、俺たちから」

そう言って清澤から本を渡された。

タイトル「異性を見る目を養うには」

「・・・これって・・・」

「悪いことは言わない。暴力を振るわないように説得できなかったら、彼女のことは諦めろ」

「スタンガンはヤバいって!暴力はエスカレートしがちだから、危ないって!」

なんて良い友達を持ったのだ。

らくしなくジーンとしてしまった。

「・・・お前ら、本当にいいヤツだな。これ、有り難く貰っとくよ。心配かけて悪いな」

「大丈夫だよ!俺たちがついてるって」

「なんかあったら、すぐ僕らに言うんだぞ」

マジで泣きたくなってきた。

チクショー!

いつか誤解を解いてやる!ぜってー解いてやる!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ