地龍(17)
「おわっとと・・のわぁ!?な、なに?なに?」
ズズズズ・・と持ち上がっていく。
「ひ、ひえっ。おや、親父!た、助け、助けて!!」
身体は前後左右に思いっきり揺れているのに、足のカッポンは有能で全く剥がれないから、逆にバランスが全く取れない。全くづくしで、こんなん絶対ケガするわ!
親父は素早く飛びすさったものの、
「大丈夫だ!落ち着いてしゃがめ!転ぶ前にペタッと尻をつけろ!それくらいできるだろ!」
そう言って助けてくれる様子はない。
「な、何だよ!ケガしないように、ま、守ってくれるんじゃ・・ないのかよ!?」
両手をぐるぐる回してバランスを取る。
「うわっととと」
「しゃがむこともできないんじゃ、この先困るからな」親父の横でバウンドしているナノまで「そうだよ!頑張れ〜」なんて言ってくる。
アイツらなんなの!?バカにしてんの!?
「うわ、うわわわわ」
グワングワン揺れながらも、手をニョロンと伸ばして何とか地面につけると、それを支えに体勢を整えた。
「ふい〜。こ、これでなんとか・・よっと」
どさりと尻餅をついた。
「できたじゃないか」
親父が笑いながら手を叩いている。
「笑い事じゃねぇよ!さっさと助けろよ!」
「大丈夫だよ〜」
ナノが呑気なことを言った。
「ちっとも大丈夫じゃねぇよ!何ぐずぐずしてんだよ!これって父親が来てるんじゃねえの!?ピンチじゃん!俺もピンチなんだからさっさと助けろよ!早くー!」
周りの土がバラバラ落ちていき、一際大きくグワングワン揺れたかとおもうと地面が一気に・・
「おわぁ!!」
ズズンッ
「ごめんなさいなのー」
せり上がったそれは、モグだった。
「ええ!?なんで???」
「だと思ったよ。攻撃してくる気配はなかったからね。この場でこれだけの力を持っていて、殺気がないのはキミしかいないからな」
親父がモグにむかって笑顔で言った。
「え!?わかってたの??」
「そうさ。ゆっくり上がってきたのも、ママにバレないようにするのと、俺たちにケガをさせないためなんだろう?」
モグは片手を挙げた。イエスだ。
「いやいやいやいや!バレたらどうすんだよ!そもそも、いつ父親が来るかわかんないんだから、仲良くご歓談、なんてやってる場合じゃねぇだろ!?」
「いや、もしこのままモグがここにいるんなら、父親を呼ばないよ。いや、正確には呼べないんだ。モグはまだマグマに耐えられないからな。父親が暴れてマグマが降りかかるリスクは絶対に避けたいはずだ。それに、モグがこっちへ来れたってことは、母親はかなり堅牢な穴を掘っていて、それに集中してるってことだ。地龍が堅牢な穴を掘る時はかなり手間がかかるからな。母親だって、いつまでもここにいると自分の命に関わるから、集中してるんだろう。てことは、まだ時間がある。さっ、モグに協力してもらって、急いで解決策を練るぞ!」
親父が言うのを聞いて少し安心した。
「モグ!!」
俺にはやらなきゃならないことがある。
急いで足下から石やら土やらをどかすと、ズリズリとモグの上にへばりついた。そう、謝らねば。
「ごめんな、信じなくてごめん。決めつけないで、ちゃんと話しを聞かなきゃダメだった。泣かせちゃって悪かったよ」
両手を文字通り長く〜伸ばすと、モグを撫でた。こうすれば、撫でてるのも見えるだろうし。
・・・ワイパーみたいだな。
そんなこと思ったら笑いが込み上げてきたけど、モグがウルウルしてたから、口にチャックしとくことにした。
「ううん。ボクがすぐ泣いちゃったから、ママ来ちゃったのー。ボクはママ嬉しいけど、ママ大好きなのだけど、みんなはママに困ってるんだよねー?ごめんなさいなのー。ご、ごめ・・うえぇ・・」
モグがまた泣き出しそうになった。
「どうした!?なんで泣きそうになってる!?また何か言ったのか?穴掘りを止めて母親が飛んで来るぞ!!」
親父に言われて、猛烈な勢いで頭を振った。
「ち、ちゃうちゃうちゃう!!ボクが泣いたせいでママが来た、みんながママに困ってる、って言ってんだよ」
目が涙でウルウル光っている。そうだよなぁ。大好きなママが来ると、みんなが困るなんて、子どもからしたら泣きたくなるよな。
「ナノ、ママ好き、大好きだよ!」
「大丈夫!!俺たちもママ好きだから!」
「困ってるけど、ママのこと大好きだよ!!」
3人で慌てて否定した。
「ほ、ほんと?みんなもママ好きのー?」
まだ目はウルウルしたままだけど、泣く心配はなくなったようだ。
「そうだよ。俺たちもキミのママは大好きなんだ。だけどもママに誤解されててね。だから、ママの誤解を解いて、仲直りするお手伝いをして欲しいんだよ」
親父がモグに言った。
「わかったー!頑張るー!!」
そう言って、モグは元気よく片手を挙げた。
「なぁ、やっぱモグにモグママを説得してもらうのが一番いいんじゃないの?」
「それはムリのー。何言っても「良い子で待ってて」しか言わないのー。AJ美味しいのくれたのーって言ってもお返事くれないなのー」
そう言ってショボンとしたから、またワイパー方式で撫でてやった。
「なんだって?」
「うん、何言っても返事してくれないんだってさ」
「そうか」
親父は少し考えてから、最低の案を出してきた。




