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地龍(11)

・・・・・?

・・・・・!!!

「えーーーーーっ!?あのギンギラタケノコがモグのママってこと!?」

「おそらく」

「だってモグはフワッフワの毛がみっちり生えてる、デカいだけの赤いモグラだよ?あんな手の生えた鉄のタケノコみたいなヤツとは似ても似つかないじゃん」

「鉄じゃあないけどな。言っただろう?地龍は大人になると、金属の鱗で覆われるって。マグマの中に生きるためには、熱を通さない金属で身を守る必要があるんだよ」

そう言うと、親父は続けた。

「鱗で温度変化から守られるっていっても、地龍にとってマグマの外は凍える寒さだから、長時間はいられない。金属が冷えたら、逆に自分の体温が奪われるからな。なのに、子どもを助けるためにここに来たんだ。たいしたもんだよ」

「えー・・マジでモグのママなのかよ・・」

驚いて脱力した。

そうか。地龍はモグラからタケノコになるのか。

出世魚ならぬ出世龍だな。

そんなこと考えてる間も、モグママの攻撃で大小の石がぶっ飛んでいる。こんだけ石が飛び交っている中にいるんだから、モグも流れ弾ならぬ流れ石に当たらないとも限らない。そもそもバリアの中に入ってきた石が、俺にも当たるくらいだ。

「なあ、モグは本当に平気?あんだけ暴れてるってことは、自分の子どもが近くにいることに気づいてないんじゃないの?」

「よく見ろ。あそこだけ全く石が飛んでいない」

親父が指をさした方向を見ると、確かに石はおろか、砂塵さえ舞っていない。

「モグはあそこにいるはずだ。ちゃんと子どもを守ってるってことだ」

なるほどね。とりあえず、親父の言うとおりモグの心配しなくてもよさそうだ。

「それにしても、モグママはなんで急に現れて暴れてんだ?」

「え?お前、わかんないの?」

と親父に半ば呆れた様子で言われた。なんかムカつく。

「わかんないから訊いてんだよ」

「さっきモグが泣いただろう。あの泣き声は、子どもが親に助けを求める時の声だ。モグは意図してなくても、あの泣き声で母親が助けに来たんだよ」

「じゃあ、モグが泣かされたから、怒って暴れてるってこと?」

驚いてそう言うと、ナノが

「AJが泣かせた!AJが泣かせた!」

と囃し立てたから、素早くゲンコツを喰らわせた。素早くしないと、こっちが反撃で電撃ショックを喰らうからな。

親父は暴力はダメだと言って俺を叱ると、ナノを抱き上げて撫でている。先に言ってきたのはナノの方なのに、そっちはお咎めなしっていうのが気に入らない。

「ふん!ナノが余計なこと言うからだろ」

「こら!大人げないぞ!ちょっとからかわれたぐらいで、そんなに怒るな」

「知るか!そんなことより、ダイヤが無いって泣いてた時は、助けに来なかったじゃん。なんで今回は違うんだよ」

「泣き方が違うんだよ。さっきは、最初に泣いた時と明らかに周波数が違った」

うむむ。確かに、さっきは超音波みたいな泣き声だったから、耳がいかれると思ったっけ。

「はあぁ〜・・どうすりゃ攻撃が止むのよ。親父、俺たちは敵じゃないって言ってきてよ」

「え!?」「はぁ〜?」

またしても、親父とナノが同時に反応した。

「だ〜か〜ら〜、お前はどうして他力本願なんだ?だいたい強いヤツが相手の時は、みんなで作戦を考えて役割分担するもんだろ。学校でもそんななのか?友達いなくなるぞ」

「うっるせぇな〜。他力本願になるに決まってんだろ。命懸かってんだから、「俺が行きます!」なんて言うわけねぇじゃん。親父はヒーローもの観過ぎなんだよ。だいたい父親なのに、息子を危ない目に遭わせるなんて、おかしいんじゃねぇの?」

「いやいやいやいや、」

親父は、首を痛めるんじゃないかと思うくらい、ブンブンと頭を振った。

「お前はモグ・・ゴホン、地龍の言葉がわかるんだろ?だったら、お前が行くべきだ。意思の疎通を図れるのは、この場ではお前しかいないんだからな。父さんがする事は、援護射撃・・いや、本当に撃つわけじゃないぞ、攻撃を喰らわないように援護するってことだ」

「何だよそれ!結局危ないところは俺じゃねぇか」

「そんなことはないぞ。お前に危険がないように、父さんが援護するって言ってるじゃないか」

そう言われても、ポンコツっぷりしか見てないんだから、まったくもって信用できない。

「でも、モグママと話すのは俺なんだろ」

「そうなるな」

「嫌だね」

「はい?」

「絶っっ対にごめんだ」

「アタル〜〜〜、何でわかってくれないんだよ〜〜」

「だって見ろよ!」

石の飛び交う光の外を指差した。こっちに入ってくる石も無くなったし、心なしか、さっきよりは静かになっている。それでも、石が飛んでいる事には変わらない。

「こんな状態で、どうやってモグママんとこ行くんだよ!辿り着く前に・・コレだ」

立てた親指を下げると同時に、視線だけ上に向けて口の脇から舌を出した。

チーン!お陀仏って事だ。

「待て待て!父さんが援護するって言ってるじゃないか。お前は真っ直ぐ母親のもとへ行くだけでいい。ケガをする危険は、父さんが全部排除するから」

「何を言っても無駄だよ」

「・・・・・ハァァァァァ〜〜」

親父は額に手を当てて、長〜いため息をついた。

フンッ!絶対に行くもんか。

そもそも、俺がここにいるのだって、金星人化したくないからってだけだ。タコにならないんだったら、とっくに家に帰って漫画読んでるわ。

「・・・アタル、これだけ言っても、本当に行かないんだな?」

「しつけえな!行かないっつったら行かないんだよ!ここに連れてくれば話しはしてやるよ。それで十分だろ」

プイッと親父とは反対方向を向いた。

だいたい親父はズルいんだよ。自分だけ防具ばっちりでさ。俺なんか丸腰なんだぞ!訓練だって全然してないのに、あんな化け物と話してこいなんて、無理ゲーに決まってんじゃん!援護するなんて言ってるけど、失敗した暁には石に当たってケガするか、下手すりゃ死んじゃうんだからさ。

「わかった。だったら父さんも好きにさせてもらう」

「んだよ、それ!」

「だってお前は、行きたくないから行かないんだろう?だったら、父さんもやりたいようにやる」

「国家公務員なんだろ!あのギンギラタケノコ放っといていいのかよ」

「お前も国家公務員じゃないか」

「でも俺には、武器も防具も用意されてないじゃん!親父は自動的にいろいろ装着してるんだから、危険レベルが俺と全然ちゃうやん!」

「だからいいって。好きにしろ。こっちも好きにさせてもらう」

親父の目が光った気がした。

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