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ちりゅうさん改め地龍(3)

「え?近くに置いとくだけじゃダメなの?」

「あの手でどうやって掴むんだ」

確かに。そう言われれば、確かに。

う〜ん、でもなぁ。

確かにあの手でどうやって掴むのか?っていう疑問はある。だけど、あのダイヤモンドがモグラの物で、目を守るのに使うってことは、掴むための何らかの手段があるはずなんだ。

「近づくと、怖がって暴れたり逃げたりするんだよ。離れた所に置いてみたけど、目が弱くて気がつかないんだ。ソーヤブルを失くしたら元も子もないから、迂闊なことはできないしなぁ」

まいったな、と頭を掻きながら親父が言った。

なるほど、いろいろやってみたのね。

モグラと話ができれば万事解決なんだけど、ナノがいて解決できてないってことは、金星人でも無理ってことか。

「麻酔銃とかは?よく動物を運んだりする時に使ってるじゃん」

そうそう。野生動物を移動させる時も使ってたはずだ。

我ながら、なかなかナイスなアイデアじゃないか。

「う〜〜ん、相手は子どもだから、あんまり乱暴な事はしたくないんだよ。そもそも麻酔銃って簡単に言うけど、薬剤の分量やら狙う位置やら、すごく難しいんだぞ。ストレスで弱ったり、最悪死ぬ事もあるからな。おまけに今回は、移動させるとか治療するっていう目的じゃないから、ぐっすり寝ちゃったら、返された事にも気づかないだろうし」

そうか。単純に、動物相手なら麻酔銃使えば何とでもなるもんだろうって思ってたけど、そういうわけじゃないってことか。

「う〜〜ん」

「う〜〜ん」

俺と親父が悩んでいる横で、ナノは心配そうにモグラを見ている。

「ナノに持たせるってのはどう?」

「さっきから、ナノが何度も持っていってくれるんだけど、近くまで行くと、暴れ出しちゃってダメなんだよ」

そっか。それもダメだったか。

上手い方法ねぇ・・思いつかねぇな。

・・・ん?

てか、俺ったら真剣に考えちゃってるけど、親父とナノが考えてわかんないんなら、俺がわかるわけないじゃん。

そう思うと、考えるのがバカバカしくなってきた。

や〜めっぴ。

考えるのやめたら、めちゃくちゃ気楽になった。

モグラはといえば、さっきから大人しくしている。子どもだから、疲れたのか寝てるのか。

ぐるりと周囲を見渡すと、ほんの数時間前の景色とは全然違う。こんなの修復できるんか?

まあいいや。俺が直すわけじゃないし。

あ〜あ。いつになったら解決するんだろう。

それにしても腹減ったなぁ。このままじゃ、天津飯食えないじゃん。

ふわっ とろっ ああ〜天津飯食べたい!

天津飯・天津飯・天津・・・ジュルルル

「おい!ヨダレが出てるぞ。真剣に考えろ」

はっ!

いかんいかん。

はぁ〜〜〜

溜息しかでないじゃん。

・・・・・

・・・・・よし!もう無理!

モグラには可哀想だけど、ここは諦めよう!

そうだ!それがいい。バッチリ解決じゃん。

なんでこんなに悩んでたんだろう。最初っからこうしておけば良かった。

「もういいじゃん。訓練所はここ以外にもあるんだろ?ここのことは諦めようぜ」

俺の提案に、2人とも驚いたようだった。

「は?お前、何言ってんの?」

あれ?2人とも反応が悪い。

「いや、だからさ。もうナイスアイデアも出ないし、ここは諦めようってこと」

「まだあいつにソーヤブル返してないんだぞ!」

「大丈夫だって。また新しいダイヤモンド見つけるって。俺たちがここにいるから、暴れてんだろ。だったら、俺たちがここからいなくなればいいだけじゃん」

「AJひどーーい!!」

「何がひどいもんか。ひどいのはダイヤ一つで暴れてるあのモグラだろ」

「いやいや、あのモグラにはソーヤブルが必要だって事は伝えただろう?そもそも、お前がここから持って帰らなけりゃ、こんな問題起きなかったんだぞ!」

「知るか。落ちてたもん拾って帰って何が悪いんだよ」

「・・・AJは、あの子を見捨てるんだね」

「見捨てるとかじゃねぇし!いいか、よく聞け」

俺は、改めて2人(っていうのか?)に向き直ると、右手の親指を自分に向けながら言った。

「俺には、オ、レ、に、は!「安心・安全第一で、安定した人生を送る」っていうモットーがあ、る、の!!ここのどこが安全なんだよ!さっきから石が降ってきたり、なんならお前の電気ショック食らったり、安全のカケラもねえじゃねぇか!!」

力を入れ過ぎて肩で息をしている俺を、2人は白い目で見ている。

「なんだよ。腐った生ごみでも見るような目で見やがって。自分の体が一番大事に決まってんだろ!」

「あのモグラにとっては、大事なダイヤモンドを盗まれたのと同じことなんだぞ」

「人聞き悪いな。落とすから悪いんじゃん」

2人の心配なんかするんじゃなかったな。なんか、全部どうでも良くなってきた。

「わかった、わかった。じゃあ俺は家で待ってるわ。ダイヤは親父に渡してるから、平気だろ」

「・・・お前・・」

「一緒にここから退散しようと思ったのに、2人とも行かないっていうんだからしょうがないよな」

そう言って、リングを出そうとすると・・・

なぬっ!?

指に何かできている。

見覚えがあるこれは・・吸盤??

見ると、10本の指の腹全てに吸盤が付いている。

「えっ?えっ?何これ??」

にゅん

え?足が沈んだ?

嫌な予感しかしない。

今日はなんだかグリップも効いてたし。靴いらなかったし。恐る恐る自分の足元を見た。

「え、えええええーーっ!?足首から先が、ト、トイレのカッポンになってる!?」

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