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ギュムノーず(4)

「ほえ?」

「アタシの能力は『動』と『静』があってね、こっちは『動』のほう、相手を操ることができる操術さ。『静』のほうは透視さね。擬態して隠れてるものなんかも、簡単に見つけることができるのさ。あとはそうね、悪意のある物も察知できるわよ。だから、アタシが危険だと判断した物は、空虚のケースに入れて保存してる」

「空虚のケース?」

「今にアタルも見ることもあるだろうさ」

そう言いながら俺に差し出してくれた手を掴んで、ヨイショと立ち上がった。

「で?藍善は何でそんな姿になってんのよ」

「え?」

ビカクさんはそう言って、親父の横に浮かんでいる宝珠をジッと見ている。

「藍善よ、藍善。なんで宝珠になんて入り込んでんのさ。その姿見で酒呑めんのかい?」

「バレたか。ビカクには勝てんな」

「当たり前さね」

「え?どこにいるんだ?」

キョロキョロと見回すスパーバムさんに向かって、リドレイさんが

「この浮かんでるのが藍善さんなんだよ!こ〜んな姿になっちゃってぇ!プククッ」

嬉しそうに指差すと、宝珠が飛んできてリドレイさんの頭をスコンと小突いた。


空間にある丸いテーブルが少し広がって、真ん中に宝珠が鎮座する。

他の面子がテーブルに沿って等間隔に立つと、自然とそれぞれが座るための椅子のような空気の塊ができた。

「スゲェ!ふかふかだ!」

「個人に合う物が、自然に用意されるんだよ。座るっていうことは、集中するうえでもリラックスするうえでも非常に重要だし、個人の好みが分かれるものだからな。現に、父さんは適度に堅いほうが座りやすいから、堅めになってるんだ」

隣で親父が教えてくれた。

「へぇ〜。だから椅子が無かったのか」

ふむふむ。よく考えられてるんだな。

みんなが落ち着いたところで、伯父さんが今までのことを説明した。

「ふうん。なるほどね〜」

「そんなこともあるんだな〜」

皆一様に驚いたようだった。

そりゃそうだよな。ずっと行方不明だった人が突然出てきたと思ったら、小さな宝珠の中にいるんだから。

「さて、私はもう行かないと。次はLAでライブがあるんでね。いやはや藍善、会えて良かったよ。本当に無事・・無事と言っていいのかわからないがね、とにかく無事で良かったよ」

スパーバムさんは右手を挙げると、外に向かって出て行き、座ったまま見送った俺たちは、そのままリドレイさんから宝箱と一緒に持ち帰った八面体と球について聞くことになった。

「あの球は、低周波を引き起こす代物だったよ」

「低周波?」

「そう。それも超々〜低周波!」

「それって、どんなふうに聞こえるんですか?」

「人の耳には聞こえないんだよ」

「聞こえない?」

俺は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

リドレイさんが頷くと、ウサギの耳が一緒に大きく揺れた。

「音っていうのは、空気に起こる圧力の変化で鼓膜が振動して聞こえるんだよ。その振動が1秒間に起こる回数を周波数っていうんだけど、その回数が少ないほど周波数が低い、つまり低周波ってことになるんだ。球の発する超々低周波は、人の可聴域を大きく外れた音だから、人には聞こえない。不快感や圧迫感は感じるけどね」

「もしかしたら、ジャイアントペンギンもそんなふうだったのかも」

「たぶんね。まあ、音は聞こえなくても振動を感じたかもしれないし」

振動?振動・・・

「そうか!あの同心円の波紋みたいなのは、振動だったんだ」

「え!?」「!!」「あん?」

みんな口をあんぐりと開けた。

「え・・?俺、変なこと言っ・・た?」

「ちょちょちょ!ちょっと、ちょっと!アタルちゃん!詳しく教えてくんない?」

リドレイさんが、テーブルに手をついて身を乗り出してきた。

おかしなこと言ったかなぁ。

ドギマギしながら、球を見つけた経緯を説明した。

俺の話しが終わると、リドレイさんが

「同心円が、波紋のように見えた・・。しかも周期的に・・」

ブツブツつぶやいていたけど、おもむろに口を開いた。

「今回、実物を持って帰ってきてくれたから、中身をこの目でじっくり見ることができたよ。驚くことに、回路らしい回路は無かった。中には金属球と液体が入っててね、それが共鳴する仕組みになってたんだ。液体は未知のだった。金属はコロクノカルム。どっちもまだ解析中だけど、周期的ってことは金属球にも仕組みがあるのかもな」

リドレイさんも真剣になると、おちゃらけないで真面目な会話ができるんだな。

「あの八面体・・あれが宝箱を運んでたんだろう?」

「ああ、あれな。太古代の八面体はもっとデカくて真っ赤だったが、今回のはあのサイズだ。色も違うしな。アタル、実際は宝箱の下にアレがいくつもいたんだろう?」

「うん、わんさかいたよ。アイツらが集団で宝箱を持ち上げて、ワッシャワッシャ運んでたんだ」

あの時は気持ち悪さの方が勝ってたけど、今になってオレンジに光る八面体と、無数の脚が蠢くあの時の景色を思い出すと首の後ろがぞわぞわした。

「アイツら単体では、物事を判断する能力は無いだろう。てことは、球が八面体を操作していた可能性が高い。あの球は、超々低周波を発する一方で、八面体も操っていた。さらに・・」

リドレイさんは、みんなの顔をぐるりと見回してから続けた。

「もしかしたら、敵、つまりボク達に確保された場合には、座標か何かを狂わせて、こちらの作戦を撹乱するようプログラムされていたのかもしれない」

「邪魔?誰が?」

「とどのつまりは、球を作った火星のヤツらに決まってるじゃないかぁ」

リドレイさんが、何を今更といった感じで言った。

そう。

俺たちが宝箱を持って帰るとき、何かがおかしかったのは事実なんだ。

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