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キャロラインの遺物(17)

「お〜、痛ぇ」

「自分のせいだろ。他人の不幸を笑いやがって」

「カカカ!他人の不幸は蜜の味というからの。さて、そろそろ行くとするか」

ブー子は「えぇぇ。行っちゃうのぉ?きゅるる」なんてしばらくグズグズ言ってたけど、長老に諭されてやっと大人しくなった。

「では、我らは御暇させていただきます」

「うむ」

「あっくん、宝物持って帰るの忘れないでねぇ。きゅるん」

「もちろん持って帰るけど、メガネウラの羽だけでいいぞ」

「えぇっ!?アンモナイトも胃石も?」

「いらん」

「日干しレンガも?あれなんて芸術的なのよぉ?きゅるん」

「まったくいらん」

「えぇぇ、なんでぇ?あ、じゃあとっておきの下絵は?きゅる?」

「絶対いらんし」

「マンモ・・・」

「いらんいらん!絶ってぇいらん!!口にも出すな!」

「きゅるぅぅ」

「とりあえず、メガネウラの羽だけ持ってくぞ」

餃子箱に近づくと、さっきまでキラキラしていたところは既に干からび、垂れ下がった部分は真っ黒になってベットリと嫌な臭いを放ち始めている。

元は宝箱だったオオシャコガイ。

餃子みたいだったから思わず餃子箱なんて呼んじゃってるけど、これだってブー子に破壊される前は凄く綺麗だったんだよなぁ。

ちょっとだけメランコリックな気持ちになりながら、メガネウラの羽を掴んだ。

うーん、壊れたら全部台無しだよな。

餃子箱から飛び出ているそれは、いかにも脆そうで、優しく掴みなおした。

ヨイ・・っと

そっと取り出すと、羽を透過した光が色をまとって地面にキラキラと踊る。

うわぁ・・・

美しい煌めきが嬉しくて、何度も角度を変えて色の映り変わりを楽しんだ。

これって、どんくらいの価値があるんだろう。

売っちゃうのも勿体無いよなぁ。

ぐふぐふぐふ。

しばらく楽しんでから考えよう。

「じゃあな」

そう言って羽を担ぐと、親父と伯父さんと一緒に歩き出した。

「あっくん!待ってぇ!!」

「あん?」


シュルルルルルル


ブー子の足が伸びてくると、羽を取り上げられた。

「あ?」


バキィッ グシャッ ガシャグシャ


「え?」

何が起こったのかわからないまま呆然としていると、

「はい!これで運びやすくなったでしょお。きゅるん」

ブー子はそう言ってウインクしながら、ぐしゃぐしゃに丸まったかつてお宝だった物体を手渡してきた。

「・・ノ、ノオォォォォー!!」


「げ、元気出せよ。クックック」

「グァッハッハ。あれだけお宝に執着しておったのに、残念だったの」

言い返す気力も萎えた。

ブー子ときたら、「なんで?持ちやすくなって良かったでしょ?」などとのたまっている。

「さ、行こう」

親父に背中を叩かれながら、しょぼしょぼと歩いていく俺に

「あっくん!宝箱はどうするぅ?きゅるん」

「・・・いらん」

「はぁい」

壊しているんだろう、後ろからバキバキという音がする。

腐ったシャコガイなんかいらんわ。

「あれって可燃ごみなのかな。不燃ごみなのかな」

ぼんやりそう呟くと

「粗大ごみだろ」

親父が言った。

部屋を出ると、親父の案内でリドレイさん達がいるという方に歩き出した。

「しかし、アタルはシャコ真珠には興味がなかったのだな」

伯父さんがぷかぷか浮きながら、そんなことを言った。

「シャコ真珠?」

「シャコガイが作る真珠のことだよ。トリダクナパールともいうんだけど、光を当てると焔のような模様が浮かんでね。いわゆる虹色じゃあないけど、人工的に作れないから、貴重なんだ。大きくなるほど、高価なんだよ」

「あの中には、まだ真珠が入っておったぞ」

「えぇ!?」

伯父さんの衝撃的な発言に、直立したまま固まった。

「なな、なんでわかんの?」

「藍善さんは、生き物の動きや呼吸で、中の異物の形なんかがわかるんだよ」

「数もな」

「じゃあ、ろくな物が入ってないってことも、最初っからわかってたってことかよ!そんなら教えてくれればよかったじゃん」

「馬鹿者。透視なぞできんわ。あのシャコガイには、何かが8つあったのだ。残りが2つあるはずなのに、キャロラインは件の卵が最後だと言いおった。ならば、キャロラインの知らない球に近い楕円の物体はなんだ?となれば、真珠であろうて」

「じゃあ、じゃあ、その真珠が唯一正真正銘のお宝じゃん!!」

「かなりの大きさだったわい。どの時代かわからんが、どちらにせよオオシャコガイの仲間であることには変わらん。あれだけ巨大な母貝であれば、おのずと真珠も大きくなるは、理であろう」

俺は踵を返すと、一目散にさっきの部屋へ戻った。


ホクホクと上機嫌でリドレイさんのところに向かう。

既の所で、シャコ真珠を救い出すことに成功した俺は、ついに夢のお宝をゲットしたのだ。

今は持ってないけど。

「壊すの待ったー!そん中に真珠があるんだよー!」

叫びながらダダダダダダダーッと走り寄った。

「んー?」

振り向いたブー子は1本の足で卵を持ち、もう1本の足でシャコガイをちぎり取って、足の真ん中に突っ込んでいる。おそらく・・・食べているんだろう。

「オ、オエェェ」

貝にとっては地獄絵図のような光景に、免疫のない俺はえずいてしまった。

「あっくぅん!いま別れたばっかりなのに、もうワタシに会いたくなっちゃったのぉ?きゅるん」

何を勘違いしてるのか、2本の足でハートを描いてウインクしてくる。

「オエェェ」

違う意味で再びえずいてしまう。

「ち、違う、そこに真珠が残ってるだろ」

「ん〜?これぇ?」

ズリュンとブー子が取り出したのは、ラグビーボールを2回りくらい大きくした、青白い陶器のような物のだった。

スベスベで、焔の模様が青い炎に焼かれているように見えて美しい。

ただ・・残念なことに、粘りがある黄色い液体にまみれている。オエッ

「これね〜、たまに入ってるのぉ。コリコリして美味しいんだよぉ。珍味って感じぃ。きゅるん」

「げっ!?食うの?」

ギョッとしている俺のほうに向かって、液体を滴らせている真珠を差し出してきた。

「剥く?割る?」

こ、怖っっ

何も言えず、無言のままブルルルルルと頭を振った。

ダメだ。いくらお宝と言っても、あんな状態なんて生理的に絶対触れない。

「と、とと、とりあえず、どっか置いといてくれ」

「わかったぁ!このまま置いとく?きゅるん」

「いやいやいやいや、ちゃんと綺麗にして置いといてよ」

そこでハッとした。

コイツの場合、しっかり伝えとかないと、良かれと思ってまた余計なことやりかねない。

「まず、それを綺麗に拭いて、そのまま大切に保管して置いてくれ。綺麗になった頃に、取りに来るから」

「はぁい」

「いいか、余計なことするなよ。大きさもそのままがいいんだからな。ただ、その黄色い液体を何とかしてくれるだけでいいからな!」

「はぁい。きゅるん」


アタルの機嫌がすっかり戻ったの」

「いやいや、戻ったどころか上機嫌ですよ」

「キャロラインに、真珠を綺麗にすることなぞ、果たしてできるのか?」

「やめてくださいよ!考えないようにしてんだから」

そう。俺も心配だった。だから、ちゃんとこの大きさのままで周りだけ拭いとけって言ってきたんだ。

「さあ、この部屋の奥に、リドレイ達がいるぞ」

親父は嬉しそうに、部屋のドアを開けた。

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