キャロラインの遺物(14)
「4個目いっくよぉ〜。きゅるん」
「ぬん?」
何やら直方体の・・レンガ?みたいなものを持っている。お宝じゃないのは確実だろう。見た瞬間からがっかりした。
「何そのレンガみたいなの?」
「レンガだよぉ。よくわかったね〜。きゅるん」
「・・・・・・」
テンションだだ下がりだ。どう見てもただのレンガなのに、訊いた俺がばかだった。
「これね、なんと普通のレンガじゃないんだよぉ!きゅるん」
「え?もしかしたら、何かできちゃう特別なレンガとか?」
無限に増えるとか、勝手に建物建てられるとか?
いやいや、期待しちゃいけない。がっかり度が増すだけだ。でも、少しは期待させてくれぇ。
「で?何が特別なんだよ」
「日干しレンガなんだけど、すっごく丈夫なのぉ。一番綺麗な形を選んだんだよぉ」
「・・・・・・」
チーーーン。
ダメだ。一瞬でも期待した俺がバカだった。
下を向いて溜息をつく。
「メソポタミアでジッグラトを造る職人さんの、お友達の職人さんの、そのまたお友達の職人さんの親方さんに貰ったの〜。きゅるん」
ん?授業で聞いたことのある名前が出てきたぞ。
「メソポタミアって、メソポタミア文明の?ジッグラトって、なんか有名じゃなかった?」
「へぇ。ジッグラトって有名なんだぁ。あの辺は暑いから、下の階は休憩できるようになってるのぉ。旅行者もいっぱい来るから、お店もいっぱいあるんだよぉ。その上の階は、偉い人とか神官とかが住んでるんだけど、一番上は神様がいる特別な所だからって、見せてもらえなかったのぉ。でもね、本当はそこには神様はいなくて、捧げ物がいっぱいあるだけなんだよぉ。きゅるん」
「見せてもらえなかったのに、何で知ってんだよ」
「マクアがいなくなって探してた時に、上にいるかもって思って『3の眼』で見ちゃったのぉ。本当はそんなことしちゃダメなんだけど、マクアが殺されるかもしれないって、リーアが言ってたから」
「マクア?サンノメ?リーア?」
「マクアとリーアは、向こうでできたお友達なのぉ。『3の眼』は、3番目の目のこと。これだよぉ。きゅるん」
そう言うと、ブー子の額に巨大な眼が現れた。
「ひっ!」
大きな眼には、金色の瞳が爛々と輝いている。
コワコワコワコワ!金星人て、みんなこんななんか?
全身の毛が総毛立って、全身がガタガタ震え出した。
「眼、閉じろ、そのっ、金の眼、早くっ」
やっとの思いでそう言うと、『3の眼』という金色の瞳は、光ながらすうっと消えていった。
「はっ、はっ、はあぁぁぁ・・マジで怖かった」
両手で顔を覆った俺を見て、ブー子はどうしたのぉ?と呑気な声で訊いてきた。
いや、オマエのせいだし!!
ギンッ!と思いっきり睨みつけてやったのに、まったく気にする様子はない。
「とにかくね、あそこにいる時は大変だったのぉ。すっごく高い塔を作っててぇ、その建て方だとレンガじゃ無理だよって教えてあげたのに、全然言うことを聞いてくれなくてぇ。結局、雨が降った日に自重で崩れちゃったのぉ。日干しレンガは、泥とか小麦の茎を切ったのとかを混ぜてできてるから、今はもう跡形もないけどねぇ。きゅるん」
「あっそぉ」
なんかペラペラ喋ってるけど、もうどうでもいいわ。
「それより!」
ブー子を制止すると、俺にとって超大事な質問をした。
「・・・肝心の中身は、あといくつあんの?」
「え〜?あとは2個かなぁ?きゅるん」
箱の中をゴソゴソ触って確かめながら言っている。
あと2個?ガチであと2個?
くらりと眩暈がした。
ハートブレイク間近だという合図に違いない。
「これ見たっけ?きゅるん」
と言いながらブー子がマンモスの毛を出すと、その瞬間からツーンとする耐え難い激臭が、あたり一面に広がった。
「うわっ!出すな!出すな!さっさとしまえ!」
鼻をつまみながら、慌ててしまわせた。
なんだか目の奥までシバシバ痛くなったところをみると、催涙ガスでも発生させてるんじゃなかろうか。
「あ!これ綺麗なんだよぉ〜」
マンモスの毛以外のブツを3本の足で持ったまま、今や残骸と成り果てた宝箱から、黒い何かをニュルリと取り出した。
シバシバする目を細くして見ると、なんだか細長くて平べったい。
50cmくらいあるフランスパンを、ギュウッと潰したみたいな形で、葉脈のように太さの違う筋の通った網状になっている。
なんだろう。お宝には・・見えない・・かも。
がっかりもがっかり。頭が痛くなってきた。
その時、ブー子が動くと、平たい物体が一瞬だけ光を反射して、キラリと煌めいた。
「お?」
またしてもキラリ。
「おぉっ?」
もしかして、これは期待できる?
「なあ、いま光ったよな?」
「ほらね〜、綺麗でしょお?きゅるん」
ブー子が足を動かすたびに、ちらりちらり光が揺れる。
黒の縁取りに、青・緑・青紫・赤紫・赤・黄、いや、それだけじゃない様々な色が光を透かして踊っている。
「うわぁ・・」
ステンドグラスみたいな美しさに、溜息しかでない。
「これ何だと思う?きゅるきゅる」
「いや・・・わかんねぇ。宝石をくっつけてスライスしたとか?」
「うふふん。これね〜、メガネウラの羽〜。きゅるん」
メガネウラ!!
思わず目が点になる。
「まって、まって、あの古代のトンボの!?」
ようやく出てきたお宝と言えそうなお宝に、当然ながら食い気味になった。
「そおだよぉ。メガネウラの中でも、これは特に大っきいんだ〜。シダの木に引っかかってたのぉ。きゅるん」
「シダの木?」
「うん。石炭の元になったりする木なんだよぉ。」
「あ!そういえば、石炭は植物の化石で、石油は生き物の化石だって授業で習ったわ!」
ブー子の目がニンマリした。
「腐り切らないで湿地とかに溜まって層になるとねぇ、何千万年とか何億年の間に、地熱とか上に積もった土の圧力で、石炭になるんだよぉ。きゅるん」
「すっげぇ!メガネウラの、しかも化石でもない生の・・生の?生のって言うのかな?まあいいや。羽なんてすげえ発見だよ!」
これが果たして発見というのかは不明だが。
「そういうのだよ!そういうをお宝っていうんだよ。あんな刺激臭がするマンモスの毛なんか、お宝じゃねぇんだよ」
「えぇ〜?これダメなのぉ?きゅるん」
と言いながら、ブー子は再びマンモスの毛を出したので、咄嗟に息を止めると慌てて臭みの元をしまわせた。
こいつ、絶ってぇワザとだろ!
ジト目で睨んでいる俺を無視しているのが、これまたムカつく。
「じゃあ、これで最後ね〜。きゅるきゅる」
メガネウラの羽は確かにお宝だったから、ちょっとだけ期待してみるか。
ブー子曰く、金銀じゃないものの、とっておきらしい。
「きゅるるるる〜〜ん」




