キャロラインの遺物(11)
「腹を潰されたり、何度となく頭を攻撃されたり、かなり辛い任務ではありましたが、キャロラインさんが困ってるんじゃないかと思いましたので、キャロラインさんのため、一心不乱で頑張りました。すべてはキャロラインさんのためですので、気にしないでください」
「おおそうか。キャロちゃんのために、そこまでしてくれたのか」
「はい!命懸けでした」
キャロラインさんのためっていうより、お宝のためなんだけどね。
ねずみにおむすびをあげたお爺さんが、お礼に財宝貰ったって昔話もあることだし、こんだけ恩に着せれば、お礼に財宝差し上げますって言ってくるだろう。
言わなかったら・・どうしよう。
金星人は感覚が違うかもしれないし、もしそうなら、くれる方にうまく誘導するしかないな。
それでもダメだった時は・・仕方がない、その時は伯父さんから言ってもらおう。
でもそれは、あくまで最終手段だ。分け前くれって言われたらやだからなぁ。
「礼をせねばな。何か望みはあるか?無論、できることしかできんがな」
キタキタキタキタキターーーー!待ってましたァァ!
いきなりくれって言ったら、ずうずうしいかなぁ?
とりあえずお宝を拝ませてもらうほうがいっか。
そっちは絶対オッケーのはずだ。
断られる可能性がある方より、まずは安牌から攻めた方がいい。
見せてもらって、欲しい物の順位を決めとこう。
全部貰えなかったら、選ばなくちゃならないからな。
そうだ、そうしよう!
「あ、あ、あのっ、宝箱の中身を見せてもらいたいです」
やべぇ、焦ったら噛んじった。
親父と伯父さんがクツクツと笑い出した。チッ!
「なんだ、そんなことでよいのか」
じいさんは拍子抜けした声を出した。
「はい!まずは」
「まずは、か。フォッフォッフォ。正直なヤツよ。ならば早速、キャロちゃんに訊いてやろう」
イェス!お宝オールゲットまで、あとちょっとだぜ。
・・・・・・じいさんテレパシー中・・・・・・
待ち時間がめっちゃ長く感じる。
というより、思いの外時間がかかってる。
絶対見せてくれる・・はずなのに、不安になってきた。
「アタル」
じいさんに名前を呼ばれて、ドキドキしてきた。
いよいよ発表だ・・ゴクリ。
「宝箱を貰って欲しいそうじゃ」
「え?え?」
一瞬、意味がわからなくて聞き返した。
「フォッフォッフォ。キャロちゃんは、彼女に対するアタルの熱い思いを聞いて、いたく感動したそうでな。あの宝箱は、晴れてアタルの物になったというわけじゃ」
「うえ!?マジか!ウッシャー!!」
嬉しさのあまり、思わずガッツポーズをすると、宝箱に駆け寄った。
「フォッフォッフォ。なんだ、そんなに嬉しいのか」
そりゃそうさ。
見せてもらうどころか、お宝オールゲットしたんだ。
嬉しいに決まってんじゃん!
宝箱に抱きつく俺を見て、親父と伯父さんは笑いながらも口々に「良かったなぁ」と言っている。
一体全体、いくつのお宝が入ってるんだろう。
中身だけじゃなく、餃子型の宝箱が愛おしくて、頬ですりすりした。
なんなら、この半開きの口さえも可愛く見える。
ダメだ。嬉しすぎてヨダレが出てきた。
食いもんじゃなくても、ヨダレって出るんだな。
「そうと決まれば、とっとと中身を・・じゃなくて、早く中身を見たいです」
やっと手に入れた!
このお宝全部、俺のもんだぁ〜。
「それでは貝の口を開けるとするか。少し待っておれ」
宝箱を撫でくり回している俺にそう言い残すと、じいさんは何かに入り込むように、ぬるりと消えた。
「やったじゃないか。宝箱ごと全部貰えるなんて。ククク」
じいさんが消えるのを待っていたかのように、親父が寄ってきて、肘で脇腹を小突いてくる。
「まあな。俺の交渉術良かったろ?」
「素晴らしいネゴシエーションだ。ネゴシアタルだな。プッ ククク」
なんで笑ってんのかちょっと気になったけど、どうせやっかんでるんだろうから、放っとくことにした。
それにしても、どんなお宝が入ってんのかなぁ。
これだけデカいんだから、真珠の外にも純金とかが、わんさか入ってたりして。
ツタンカーメンの黄金のマスクは、300兆円とか言われてるみたいだし、そこまでじゃないにしても、金プラス歴史的価値とかで、すごい金額になるんじゃなかろうか。ぐふぐふぐふ。
「待たせたのぅ」
じいさんの声が聞こえ、いよいよ中身を見ることができる時がきた。
一気に気持ちが高まって、心の中でファンファーレが鳴っている。
にょろん ぷりゅん
あり?
じいさんの横に、もう1人の真珠頭がいる。
薄ピンク色で、マッシュルームみたいなデカい頭は、てっぺんが少しねじれたようになっていて、見覚えのある形をしている。
ふうわり柔らかそうな質感ではあるものの、じいさんと違って表面に皺ひとつない。ぷりんっとしていて張りがある顔に、離れた大きな丸い目が、カラコンでも入れてるんですか?と言わんばかりにキランキラン輝いていて、モヤシのようなぶっとい睫毛が何本か刺さっている。
頭から直接足が10本。そこはじいさんと同じだ。だけど細さとしなやかさは全然違う。
何も言われなくてもわかる。
この薄ピンクも金星人だ。そしてすごく若い。
金星人は夢じゃなかった。
じいさん以外にもたくさん存在してるんだ。
今まで話でしか聞いてなかった金星を強く意識して、頭の後ろの毛がちりちりした。
「紹介しよう」
え?なに?
「キャロちゃんじゃ」
「はじめましてぇ。キャロラインでぇす。きゅるん」
「えぇーー!?」




